Fw:本文「君の一票」飛鳥3
つまりバカ匠は祐介と私の通話内容を他の携帯で飛鳥へ横流ししてたのだ。一見考えたら無理かもしれない。でも携帯には付属スピーカーやイヤホンがあるし、そういう物の先にマイクを向ける。すると意外といい音がでる。これはiPodで確認済みだ。少しだけノイズが入るだろうが、予想以上にきれいな音が入る。
それを携帯に応用したのだろう。マイクなんて適当な理由を付けて学校から借りればいい。葉陰のサッカー部には拡声器があるから、鎌学のサッカー部部室にマイクがあってもおかしくないだろう。もしくは放送室を借りるか。以前、鷹匠は放送委員だと言っていたし、当番のコンビを組んでいるのは弟であるゆーたんだ。早く部活行けばいいのに。全くくだらない。
ん?私がゆーたんに電話かけなかったらよかったって?それはそれであり得ない。バカ匠のことだ。ゆーたんか自分か……どっちにしろ、電話をかける側があっちになるだけで、相手が飛鳥に暴露するように仕組んだに違いない。こんにゃろう、あの暇人め。
(バカ匠、殴っていいかなー)
推論に納得すれば、腹が立つ。なんでひっかかったの。……まぁ仕方のない部分があるけどさ。そして、その前に片づけなければならない問題がある。
(うん。飛鳥を何とかしたら殴りに行こう。ついでに土下座させて……)
飛鳥が雑誌を読んでいる間に物騒なことを考える。そもそも、バカ匠に飛鳥の個人的なことなんて一言も言ってない。それなのに何故。この気持ちが頭の中を巡り続ける。
「……で?またしょうもない企画に参加したんだな」
「またしょうもないって!##NAME2##さんの頼みなんだ!」
「頼まれたら断る訳には……」
「##NAME2##さんにはよく書いてもらってたからな!」
白鳥を中心に言い訳パレード。真屋も鬼丸も必死の形相だ。顔がひきつっている。
「すみません……」
「迷惑をかけました」
大月と蝦夷はしゅんとした表情で謝罪を述べる。彼らは言い訳をあきらめたようだ。
「わかればいい」
大月と蝦夷に優しい目をしながらも、相変わらず私たちには鋭い目を投げつける。いやいや。そんなに怒んなくても!!ね?……と苦笑い。
「おまえたちもな」
「「「「……」」」」
……そんな素直に頷けないよ。鬼丸は必死に顔を縦に振っている。むしろ顔は笑ったままで目だけ笑っていないのが怖すぎるんですけど?!!
そういう念を静かに送っていた。飛鳥の眉が少し上がるけど気にしなーい。完全に開き直ることにする。
「まぁ、この6票のうち、5票は白鳥・真屋・大月・鬼丸・蝦夷だと仮定して」
……仮定にする必要なんてないじゃない。だって答えはわかっててそういってる。だから、その後に続く言葉がとても怖い。どうしようもなく怖い。
「か、帰る!!」
飛鳥を先に片づけるのはやめた!身の危険を感じる。瑛にはめられたんだもん。言える訳ないじゃない!!
鞄をつかんで部室を出ようとしたとき。
「佐伯!」
名前を呼ばれて、心臓が跳ねる。どうしようどうしようどうしよう……!!
「最後の1……「知らないっ!」ちょっと待ってくれないか!」
言葉を遮る。
「し、知らないったら知らないんだから!!飛鳥のバカっ察してよ!」
お願いだから知らないふりをして。気づかないふりをして。分からないをふりして。お願い!
鞄をつかんで部室を飛び出す。大きな音を立てて閉まるドア。
あのとき、軽い気持ちで淡い気持ちを込めなきゃよかった。今になってそう思う。バカ匠に使われるなんて……!
でもそうは行かないみたいだ。鷹匠の遊びのネタにされたけともそう。そして今、飛鳥が気づいたこともそう。
「佐伯」
捕まれた手がこんなに熱いなんてね。コートなんていらないよ……。
「佐伯。機嫌直せ」
逃がせはしない。腕を捕まれ立ち止まる。顔と顔が向かい合う。目を合わせられなくてうつむいた。
「……やだ」
「まったく……困ったやつだ」
飛鳥が苦笑する。少し困った顔。
「残りの一票、佐伯でいいんだな?」
「……」
先ほどとは違う優しい声。慈しむ声。それでも顔は上げれなかった。恥ずかしくて。頭が爆発してしまいそうだ。心臓音が聞こえない。他の部活の喧噪がある。それなのに飛鳥の声がはっきり聞こえる。
彼は私の沈黙を肯定と受け取ったようだ……それが正解だからわざと答えなかったのに。どうしてこうも彼は気づくのだろう。
「よかった」
鼻腔を掠めるさわやかな匂い。飛鳥の匂い……やっと絞り出せた声はかすれた声となった。
「……なん、で」
震える声にあわせて顔を上げた。幸せそうな微笑み。
「一度しか言わないから聞いてくれ」
飛鳥の一つ一つの言葉が心に滲んでいく。
「佐伯の1票が欲しかった。とてもうれしかった」
どきん。飛鳥自身の震える言葉。けれどめ力強い言葉。
「なぜなら俺は
君のことが好きなんだ
時間が止まったかのように思った。
いや。違う。一瞬一瞬がはっきりとわかるんだ。飛鳥のことだけ見ていられるから。力強い、優しい想いの言葉がこんなに幸せにしてくれるなんてね。
顔をあげて紡ぎ出したのは満面の笑みだった。
「大好きよ。飛鳥に負けないくらい」
だから私はあなたに入れたのよ。
想いの丈を票に込めて。
こうなった今はバカ匠を殴りにいかないと気が済まないとしても。少しは感謝しなくちゃね。
fin.
―――――――――
初企画おめでとう!そしてお疲れさま!
その中で思いついたネタの作成許可をありがとう夏ちゃん!
いやはや……三ヶ月も待たせてしまってごめんなさい!
土下座で地面に穴をあけてくr(ry
はじめは葉陰三年生だけで終わってしまうはずが、グダグダすぎて練り直したのが三月末。
そのあと練り直したネタに鷹匠と祐介を出すことにしたのはいいけど
出張りすぎですよ鷹匠さん!!!!
飛鳥夢なんで!!!!!
鷹匠のばーかばーかばーか!ドS!!でもめっちゃ好きですよ!
だからといってなんで出張らせるんだ私!
Toccatuttoではお約束になってるよね……。
祐介登場はただ「ゆーたん」と連発させたかっただけ。
それ以上に2位のお二人に出てもらわないとね、というのもありますが。
過去に夢主と何があったんだろう?
夢主は気づいたらブラコン×ツンデレだし。
ちなみにiPodにマイクかどうのこうのっていうのは本当です。
友達のiPodのイヤホンにスタンドマイクで高さを調整したらきれいに入ったんです!
まぁ……視聴覚室で。
おいこらなにやってんだって言葉はなかったことに!
意外ときれいに入りました。
どうぞお試しあれ。
今はもう夏なのに冬設定という季節感無視でごめんなさい!!
そんなこんなで、最後まで読んでいただきありがとうございました
夏ちゃんに捧げます
お持ち帰りも書き直し請求も。
2011/6/24 蒼碧
⇒全力でスピンオフ
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