04.「キスして欲しそうな顔、してたから」
12月に入ると容赦無く北風が吹き、すき間風で校内は物凄く寒くなった。
しかし、トム・リドルのメロに対する愛情表現は冷めることを知らなかった。
メロがとっても寒がりなのでリドルが引っ付いてきても怒るどころか、(熱エネルギーを共有しようと)大人しくしている事も更にリドルの心を暖かくした。

クリスマス休暇前まであと1週間というある日、朝食の席でメロの両親からふくろう便が届けられた。
『二人で旅行に行くからクリスマス休暇はホグワーツに残るように』という内容で、メロはとても残念だった。一方、横から手紙を覗き込んだリドルは物凄く明るい笑顔になった。

「メロ、ホグワーツに残るんだね?」
「わたし…ホグワーツで一人っきりでクリスマスを過ごすなんて、考えてもみなかったわ!」メロはテーブルにうなだれた。
「僕もホグワーツで休暇だよ…ああ、どうしよう、新婚初めてのクリスマスみたいだね!」
「は?新婚?」

リドルは綺麗に微笑んでトーストにかじりつき、メロの質問をさらっと流した。
メロが不審そうな顔のままオートミールを食べ終わると、二人は大広間を出てそれぞれの授業の教室に向かった。


休暇前の最後の授業の日、メロが変身術の教室の前を通ると、ダンブルドアが教卓に座って鼻歌を歌っていたので挨拶をした。

「おはようございます、ダンブルドア先生」
「やあメロ、おはよう。今日も元気そうだね?」
「はい、まあまあですね…」メロは苦笑したが、ダンブルドアは真剣な目をしていた。
「トムは真剣に君に向き合っているように、私には見えるよ。…メロ、良いクリスマス休暇を」

メロはポカンとした表情のままダンブルドアが教室を出ていくのを見ていたが、慌てて魔法史のクラスに急いだ。

魔法史、呪文学、お昼、その後に二限続きの魔法薬学を終えて明日からは休暇だ。
ほとんどの生徒たちは家に帰って家族と過ごすクリスマスを楽しみに、荷造りに励んでいる。それはメロの友人達も同じだったが、メロがホグワーツに残ることが当たり前だと思っているのでメロは猛反発した。

「だってリドルは毎年ホグワーツに残ってるじゃない?今年はメロも残らなくっちゃ」
「いや、それ理由になってないし…わたしだって家に帰れるなら帰りたいわ!」
「立派な理由じゃない。恋人と過ごす初めてのクリスマス…二人っきりなんて素敵だわ」
「…先生方もいるじゃない」
友人達はメロの言葉を丸きり無視して荷造りを再開した。

翌日からメロはレイブンクロー寮で一人ぼっち、のはずだった。
メロが談話室に降りていくと、湯気の立つココアを用意したトム・リドルがソファーに腰掛けていた。


「ぐ、ぐっもーにん…?」
「あぁ、おはよう!メロ、ココア飲むだろう?」
「え?えぇ、頂くわ…」

リドルはメロが隣に腰掛けて、ココアをフーフーしながら飲むのを嬉しそうに見ている。

「ねぇ、トム?」
「なんだい、メロ。あっ、ココアのお代わりかな?」
「そうじゃないの。ねぇここ、レイブンクローの談話室よね?」
「そうだけど。それがどうかしたかい?」

メロはため息を抑え、ココアを飲み干した。
忘れがちになってしまうのだが、相手はホグワーツ始まって以来の秀才と謳われている男だ。レイブンクロー寮の”あの質問”も難無く答えることができたに決まっている。

「ううん…談話室に降りたらトムがいたから、ビックリして」
「合言葉は他の寮生が言っているの聞いちゃったし、質問も難しく無かったし簡単に入れたよ。今日から休暇なんだし、メロを一人ぼっちになんてできないだろう?」

そう言って、リドルは(メロが起きてくるまで我慢していたのか)ロウェナ・レイブンクローの像を観察するために席を立った。
メロは考える事を止めて熱いココアを飲み干すことに専念した。

それからリドルはメロをスリザリン寮に連れていったり、レイブンクロー寮に住み着いたり、数日間まさに自由きままに生活をした。クリスマスの前日はレイブンクローの談話室を一気にクリスマス模様に変身させた。

クリスマスの朝、メロが目を覚ますとベッドの下にプレゼントがあることを確認するよりも早く、自分にくっついている人間を感知した。

「ヒィッ!離れて!」
「あ、起きた?メリークリスマス、メロ」

リドルは自分の方にメロを向けさせて、髪を撫で始めた。
(部屋に来ないからって油断してたわ…)


「メロ、冬もこんな薄着で寝てるの?寒くない?今は僕がいるからいいけど…」
「この方が寝ていて気持ち良いの。わたしのママ、ベビードールが大好きだからこれしか無いわ…って、ちょっと!どこ触ってるのよ!」
「どこって…そりゃあ、」


メロが「言ったら嫌いになるわよ!」と顔を真っ赤にして言うと、リドルは「メロ可愛い!」と抱き着いた。

メロが大人しくなったのをクスクス笑いながら、リドルは柱に向かって杖を振った。

「…ヤドリギ?」
「ヤドリギの下なら、メロだって許してくれるだろう?」


リドルはメロの首筋に顔を寄せて、「僕のこと、欲しがってみてよ」と囁いた。
そしてリドルを見ると、食べられるようなキスをされた。




キスして欲しそうな顔、してたから。メロ、すっごく可愛いよ」



頭が沸騰しそうだ。






20110309


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