03.「拒否権はあげないよ」
成り行き任せでトム・リドルのガールフレンドにさせられてから二週間が経った。
男子生徒はメロと関わる事によるリドルの制裁を畏れ、女子生徒は妬みもそこそこに『あのトムの御眼鏡にかなった子』と慕う生徒が続出した。
変身術が得意なメロはもともとダンブルドア先生と仲が良かったが、以前にも増してメロに優しくなったのは不思議だった。

週末のホグズミード行きの告知が出て、メロは友人達とハニーデュークスでたんまりお菓子を買い込もうと計画していたのに、友人達はあっさりとそれを拒否してきた。

「何言ってんのメロ、リドルと付き合って初めてのホグズミードじゃない。あんたはデートに決まってるでしょ」
「そうよメロ、週末は恋人と過ごしなさいよ」
「だってそんな甘い関係じゃないもの…」
「毎朝わざわざ地下牢から西塔まで迎えに来てくれる人と甘い関係じゃなかったら、何なのよ。友達なんて言わせないわよ…今日もほら、」

友人が言い終わる前にレイブンクロー寮前で待ち構えていたリドルは
「おはよう、今日も可愛いねメロ!」と言ってメロの手を取り大広間へ向かった。

「あの子愛されてるわよね」
「羨ましいわ」


朝食の席は、何故か監督生のテーブルに座らされていた。(しかも本来スリザリンの女子監督生の席にだ)

「ねぇメロ、週末のホグズミード行きのお知らせが出たよね」
「えぇ、そうねトム。わたしは…」
「メロ、拒否権はあげないよ。君は僕と一緒にホグズミードね」

メロがやけくそに頷くと、リドルは嬉しそうに食事を再開した。

(こうなったらハニーデュークスにとことん付き合わせてやるんだから!)

朝から何故だか出ているエクレアを頬張るメロをリドルは微笑ましく見ていた。
彼は、メロの口角についたクリームを取ろうとして、メロが頬を赤くするのが見れると更に機嫌が良くなった。


金曜日の最終授業はレイブンクローとスリザリンの合同魔法薬学だったので、これ以上面倒臭い魔法薬の調合があるのか?という『安らぎの水薬』の調合にも関わらずリドルの機嫌は最高に良かった。
他の生徒達は一人で調合しているのにメロとリドルだけは何故だかペアな事も要因なのかもしれない、と思いながら材料の準備と計量をした。
リドルは絶対にメロを大鍋の前に立たせなかったが、その代わりにレポートの際にとっても解りやすく解説してくれていた。
絶対に魔法薬学を続けたい訳ではないが、恐らくOWL試験も大丈夫だろう。

リドルの調合している薬からクラスで一番最初に軽い銀色の湯気が立ち昇り、スラグホーンが大鍋の傍まで来て満足げに笑いかけたのでリドルは二人分の瓶に『安らぎの水薬』を詰めて提出した。
他の生徒達が薬(殆どが失敗作だが)を瓶に詰めるまでの時間二人は課題のレポートをこなし、授業終了のベルが鳴るとリドルはメロの手を取り一番に教室を出た。


そのあとはいつも通り、夕食までの時間は図書室で課題をこなして、それでも時間がある時は天文台に昇って他愛もない話しを沢山した。リドルは自分の事はあまり話したがらずメロに話しをさせたがったが、頼まれずともお喋りなメロが明らかに多く話していた。


翌日のホグズミード行きでは、朝食の後に大勢の生徒達と一緒に村までぞろぞろと歩いた。(しかしメロとリドルの周りには誰も近寄らなかった)

「ハニーデュークスで今週新発売のお菓子があるって、前にお店の人が教えてくれたの…たっぷり買い込まなくちゃ。でも、三本の箒でバタービールも飲みたいわ…どっちが先がいいかしら?」
「僕はインクを買わないと…予備をダイアゴン横町で買い損ねたから」
「あっ、わたしもだわ…良かった、思い出せて。ありがとうトム」

リドルはメロからの「ありがとう」にパッと顔を綻ばせて、繋いでいる手を更にギュッと握り、スキップしそうな勢いでホグズミードへと足を早めた。


大量のお菓子を買い込んだ後に「三本の箒」でバタービールを飲みながら、(トムも案外普通の男の子よね)とメロは思った。
リドルは、メロが上唇に泡を付ける度に喜んで指で掬った。






20110227


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