男って奴は | ナノ
第4話 






「……最低だ…」


飛び出した私は、ハヤテが居るかもしれない部屋には戻らず
船尾へと向かった。

気を使ってくれているのか……誰かが追いかけてくる気配はない。

とぼとぼ歩いて船尾に着くと、そこにあった木箱と木箱の間に膝を抱えて座り込んだ。



「はァ………」


せっかく開いてくれた誕生会だったのに……

あの時、無理にでも笑って、あの場を取り繕っていたのなら

みんなに嫌な思いをさせなくてすんだかもしれない…


ハヤテがどうとか、そんなんじゃなく。

こんな風に飛び出してしまった自分自身に呆れて……

また涙が溢れた。






どれくらいたっただろう…

体育座りをしてうつ伏せていた私の耳に、こちらにづいてくる足音が聞こえた

袖でごしごし涙を拭いて、もう1度、膝を抱えうつ伏せた。

その間も、だんだん近づいてくる足音。

それが私の前で止まったのが分かる。

だけど足音の持ち主は、声をかけてくるでもなく。
代わりにギーギーと木箱を引きずる音がした。

その音が止んだのと同時に、私の隣に腰を下ろすのが分かる。

だけどその人は、話しかけてくるわけでもなく。

お互い黙ったまま、時間だけが過ぎていった。





「……ルル、」


どれくらいたっただろう。

名前を呼ばれて、漸くそれが誰だか分かった。


ハヤテだ。

だけど泣き顔を見られたくない私は、黙ったまま足を抱え直して縮こまる。


「なあ……ルル…」
「………」


私の肩を掴んだ手が、カラダを起こそうと力を込める。

だから私は、両手で膝をぎゅーっと抱え、膝小僧に目を押し付けて抵抗する。


「なあ、顔見せろよ、」
「………」


ふるふると首を振る私の肩を、ハヤテは掴んではガクガク揺すぶる。


「嫌じゃねーよ、顔見せろって」
「……やだっ…!」
「嫌じゃねー…手ェ離せよ!」

「いや…っ!」


ガンとして顔を上げない私の態度にとうとう観念したのか、肩を掴む手が離れた。





「―――誕生会……ぶち壊して悪かった……」


暫く続いた沈黙を、ハヤテが謝罪の言葉で破った。

驚いた私はハヤテに気づかれないよう、膝に左ほっぺをくっつけて、右に座るハヤテを見やる。


「……つまんねー…嫉妬した…」


ハヤテはうなだれた頭を、膝の間に入れていた。


「しっ……と?」


つい発した私の声に、ハヤテは顔をこちらに向けて『ああ…』とひとこと。

そして立ち上がると私の背後に回りこみ、足の間に私を挟んで座り直した。

お腹に両手を回したかと思うと、背中に頭を凭れさせる。


「オレ……ルルと付き合って初めての誕生日だから、……俺が1番喜ばせてやりてえって思ってた…」
「…………」
「なのに、いざ、お前を前にすると、照れ臭くて、素直になれなくて……。そんな自分に腹立って………」


ぼそぼそ言葉を紡ぎながら、ハヤテは回した腕に力を込める


「おまけにみんな……お前の喜ぶモンとか、ちゃんと知ってて。……それを貰って喜ぶお前に腹立って……。んな小せェ事に腹立つ自分が情けなくて……またイラついて……」
「………」

「おめでとうも言ってやれねーオレって……マジ……情けねェ…」


絞り出すように胸の内を話してくれたハヤテに、私の胸がトクンと鳴く。

だって……

あまりにも真っ直ぐで、照れ屋で、不器用なハヤテが、たまらなく愛しいから。

私は腕の中で向きを変え、膝立ちになって、うなだれるハヤテと目を合わせた


「……ハヤテ?」
「ん?」
「わたし、嬉しいよ?」
「…あ?うれ、しい?」
「うん、…ハヤテがそんな風に考えていてくれてたなんて……嬉しい…」


胸がいっぱいになった私は無意識のうちにまた、涙が溢れた


「ちょッ!泣くなよッッ!」
「……泣いてないしッッ!」
「泣いてんだろ、つか…お前の泣き顔…やべぇんだよッ」

「やばい、って!……どうせヒドい顔ですよッ!」
「ち……ちげーよ、そういう意味じゃなくて…」

「なら、どういう意味よッ!」


そう叫んだ私の後頭部に、ハヤテの手が伸びてきたかと思ったら
そのまま前に引き寄せられ、少し強引に唇を重ねた。


「……ンッ?!」


目を見開く私の前には、目を瞑るハヤテの顔。

挿し込まれた舌先から、ハヤテの体温が伝わってくる

しばらく重ねた唇が名残惜しそうに、ゆっくりゆっくりと離れていった。


「こ……こうしたくなるくらい、……やべえってことだよ」


そう言うハヤテの顔は、真っ赤だ。

たぶん、わたしも。


「……ルル、」
「ん…?」


改まった声で名前を呼ばれ、顔をあげる。
そこに、赤い顔のままのハヤテが、私の肩を両手で掴んだ。


「目ェ、瞑れよッ!」
「? 目を?……なんで?」
「いいから黙って瞑りゃいいんだよっ!」


早く瞑れよっ、と急かすハヤテに、半ば強制的に瞑らされる。

すぐにガサガサという音が聞こえてきた。


「……ひ、冷たッッ!」


直後、ハヤテの腕が首に伸びてきたかと思ったら、胸元にヒヤリと冷たい物が触れた。


「開けてもいいぜ?」
「……?」


目を開けて、嬉々とした表情を向けるハヤテを見てから、胸を見る。



「うわっ!…可愛いッッ」


そこにはシルバーのチェーンと。
それと同じく、シルバーでできた星形のチャームが揺れていた。


「ハヤテ…プレゼント無いって言ったのに……」
「出せるわけねーだろッ。船長にあんなモン、見せつけられた後によォ……」
「ぷ、……たしかに、」
「笑うなッ!つか、納得すんなッッ!!」
「ふふっ…ごめんハヤテ。……でも、嬉しい…」
「――ムリ!許さねェ!!!」


瞬間ぐるん…と。どういう動きをしたのか

気づけばハヤテの後ろには、胸元で輝くチャームと同じ、満天の星が輝いていて。


「……ルル、」
「……なーに?」


顔の横に両手をついて真っ直ぐ私を見下ろすハヤテと……目を合わせる。

大きな手が頬を包んだ


「――誕生日おめでとう…」


ハヤテの口が小さく動く。


ありがとう……


そう言おうとした私の言葉は
直後、重なった唇によって、口の中へと封じ込められてしまった。



そのまま体重を掛けて来るハヤテの胸を押し返す。

だけどその手は呆気なく掴まれ、冷たい甲板に縫い止められてしまう。


「痛いよ、ハヤテ…」
「……ルル、」
「なに?」


少しだけ唇を離したハヤテが、手首を掴む手に力を込めた。


「お前…っ!ドクターとかシンとか船長に……ベタベタ触らせてンじゃねえよ!!!」


さらに掴む手に力を込める。


「い……っ!でも、それはいつものことでしょ?」
「だから嫌なんだろッッ?!お前は俺のモンなんだよ、だからもっと嫌がれよッ!」
「……っあ!」


ハヤテの唇が、私の首筋に落とされた。
ちゅ、とキツク吸い上げられる。
同時にシャツの隙間から、大きな手が侵入してきた。


「ひゃっ…なに…?」
「お前ッ…もっと色気のある声、出せよなッッ!」


首筋にツ―…と唇を滑らせながら、ハヤテが上目遣いで私を見る。

だけどそんな声、出せるわけない。

だって、ここは……


「ハヤテッ!ここ甲板ッ!」


そうここは……船尾の木箱と木箱の間。

見上げれば満天の星空が、輝いている。


「ちょっと!やめてっ!誰か来たらどうするのよッ!」
「誰もこねえよ…っ!……てか……オレ我慢できねーしっ!」
「は?」


ハヤテは抵抗する私に体重をかけ、片手でシャツのボタンを外し始める。


「やめてハヤテッッ!…さむいから……」


11月も近い今の季節は、風も刺すように冷たい。
顔を背けて小声で叫ぶと、肌蹴た胸に顔を埋めるハヤテの動きが止まった。


「わ…わりぃ。やっぱさむいよなッッ!」


四つん這いで見下ろすハヤテに、シャツを抑えてコクコク頷く。

だけどハヤテは『…けど…』と言った。


「……け、ど…?」


恐る恐る、聞き返す。

ハヤテは気まずそうに、もごもごと口をまごつかせながら、真っ赤な顔で言った。


「一生忘れらんねー誕生日にしてやるッッ!……だから…」


下だけ脱げよッ!!!



ハヤテは私の肩を押さえつけ、空いた手で下着だけを抜き去ると、自分のベルトをカチャカチャ外した。


「ちょっと、やめてよハヤテッッ!」
「だから…ムリだって!…俺ッ我慢できねえし…」


腰に跨るハヤテは、素早くスカートを腰までまくると…
一気に中に、挿入して来た。


「あっ、ハヤ…っ!……んんんーー!!!」
「くっ…お前ん中、あったけッ」


ハヤテは根元まで挿入すると、前かがみになって、腰を前後に動かし始めた


「あっ、やっ!声、…でちゃ…」
「くっ!!やべー。すげえいい。ルル、俺の肩に噛み付いてろよッッ」
「ん…っ!ハヤ、テ!!」


徐々に激しさを増す、ハヤテの律動。

肩に噛み付き、首にしがみつくわたしは

揺れる満天の星空の下

ある意味、一生忘れられない誕生日を、送るのだった。






 
   






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