男って奴は | ナノ
第1話 







今日は朝から変だと思った――


手伝いにキッチンに行けば……
「手伝いはいらねえ」と、ナギさんにドアの前で断られ。

その代わりと言ったら何だけど

そこにタイミングよく現れたシンさんとソウシ先生に手を引かれ……
私はなぜか2人の手伝いをして、1日を過ごすこととなった。



…とはいっても、どれもたいした仕事じゃなくて…

航海室の本棚を並べ直すことだったりとか。
シンさんの肩揉みをしたりとか

ソウシ先生とはお茶を飲みながら止血帯を作ったり、雑談をしたりと。
どれも、仕事とは言えないことばかり。


そんな事をしているうち。
気づけば、いい時刻になってたようで。


「そろそろ、夕飯の時間かな?」
「…?」


脱脂綿を切る手を止めて、小さな窓に視線を向ける。


「わっ!もう真っ暗ですね!」
「みたいだね?」


ソウシ先生がクスッと笑う。


「日も短くなったから。…長々と手伝わせてごめんね?……疲れてないかい?」
「はい……大丈夫です♪」


笑いながら答えるとソウシ先生もふふっと笑って、私の頭に手を置いた。


「ルルちゃんに手伝って貰えて助かったよ、ありがとう、」
「いえ……たいしたこと、できませんから、」


それからテーブルにある脱脂綿を片付け、最後に床を掃き終えたところで、軽く肩を叩かれた。


「ありがとう、そろそろ夕飯に行こうか、」
「……はい、」


こうして私たちはキッチンへと向かった。








「はい、どうぞ……」


ソウシ先生がドアを開けてくれる。
1歩入った瞬間。



パンパンッンンンッッッ!!!


 「「「――おめでとう!!……ルル!」」」

「?!」


声を揃えてそう言われ
呆然と立ち尽くしてしまった。


「え?…えええ?!」


ポカンと呆ける私の前に
立ち上がって笑うみんなが居る。
そんな中、真っ先に声をかけたのは、船長だった。


「おいルル。…んなとこに突っ立ってねえで、さっさと入れ、」


船長は歯を見せ、ニカリと笑う。


「じゃあ、入ろうか…」


ソウシ先生に背中を押され、私はキッチンに入って行った。




席に着くと目の前には、ヤマトならでわの料理を始め。
豪華な料理が、ところ狭しと並んでいる。


「おまえ、自分の誕生日も忘れてたのか?」


隣に座るシンさんが、呆れたように笑いかける。
ようやくそこで思い出した。
今日が自分の誕生日だった事に……


「実は…毎日が楽しくて…すっかり」


苦笑しながら答えれば、おかしそうにシンさんが笑う。


「海賊船に乗りながら楽しいとは……お前も相当、変わり者だな?」


意地悪く言うシンさんだけど
その顔はとても優しい。


「まあ、いいじゃねえかよシン。…自分の誕生日も忘れるくれえ楽しいとは、嬉しいじゃねえか」


船長もそう言って、豪快に笑う。


「今日はルルちゃんにバレやしないかと、ハラハラしたよ…」

「あ…それでっ!」


向かいに座るソウシ先生の言葉で、私は漸くハッとした。
私をキッチンに近寄らせない為に、2人が手伝いを頼んだことに。

妙に納得していると、隣に座るナギさんが、私の肩をポンと叩いた。


「今日の料理は、トワとハヤテが手伝った、」
「えっ…?!」
「あんま役にはたたなかったけどな、」


ナギさんが少し笑ってハヤテとトワ君をチラと見る。


「は?!…そんな事ねーだろナギ兄ィィ!俺達だって頑張っただろ?」
「そうですよ。ただ…ルルさんのようにはいきませんけど……」


焦りながらも、いきり立つ2人に、さらにナギさんが優しく笑む。


「ま……努力だけは認めてやる……」


…かと思うと。


「けどお前らっ!2人で何枚の皿、割ったんだよ!」
「うっ…!!それは……」


急にシュンとうなだれる2人の姿に、ナギさんがぶっと吹き出した。


「つっても今日はルルの誕生日だからな、…大目に見てやる、」


その言葉にハヤテとトワ君が、うつむく顔をおずおず上げる。
途端、笑い声が響いた。


「…………」


そしてわたしは、というと……そんなみんなを見回して
胸にふつふつと、熱いものがこみ上げてくる。


「みなさん……」


私はすと、立ち上がった。


「今日は私の為に…こんなに素敵な誕生会を…ありがとうございます、」


潤む目を見られないよう、腰を折って頭を下げる。


「おいおい。堅っ苦しい挨拶はなしだ!」
「せん…ちょう……」


船長の言葉に、私はおずおずと顔を上げた。


「ほら、…泣きそうな顔してねーで、……お前らもグラスを持たねーか!!せっかくの料理が冷めちまうぜ?」


船長の掛け声で、全員が手にグラスを持つ。

船長が立ち上がり、それを高々と持ち上げた


「……んじゃあ、ルルの誕生日を祝って…」


「「「――カンパーイッッ!!!」」」



船長の音頭で

楽しい食事が始まった。








 
   






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