第7話
食事が終わると昼間の応接室に集まっていた。
酒の用意がいつの間にか整っている。
さっそく呑み始めたリュウガの隣でエドワードもまた興味深げに、航海やお宝の話を、酒を酌み交わして聞いていた。
リチャードは、●●●の膝にちょこんと座り、ハヤテとトワをからかう。
「おい、お前…!」
ソファーでワインを飲むシンが、唐突にリチャードに呼びかけた。
「なにか用か、シン…」
リチャードをはじめ3人も、キョトンと振り向く。
「なにかじゃないだろ。いつまで甘えてるつもりだ?」
「甘える?」
「王家の人間なら、そこから降りろ!」
シンが言う、そことは、もちろん●●●の膝の上。
シンが睨みを利かせると、ナギも同じく、リチャードを睨む。
「お前、ずっと●●●にひっついてんじゃねぇかよ」
2人に叱咤され、リチャードはムッと眉を寄せた。
…かと思うと、くるんとカラダの向きを変え、挑発するよう、●●●の首にしがみつく。
「ふんーーだ!僕は子供だからいいんだもんね。●●●もそう思うでしょぉ〜っ?」
子犬の様な瞳で顔を見つめるリチャードは、確信犯。
この目に●●●は弱いのだ。
案の定、引っかかった●●●は。
「も、シンさんもナギさんも、小さい子に目くじら立てて、大人気ないですよ?!」
「は?」
「リチャードさんはまだ甘えたい盛りなんです!抱っこぐらいいいじゃないですか!」
●●●は2人を睨みつけると。
「ねぇ〜〜っ☆」
リチャードと顔を見合わせた。
「な」
シンとナギはその姿に、「ガキにやられた」と。2人の姿を呆然と見つめた。
そこに執事であるレスターがドアを開け、深々とそこで一礼をした。
「リチャード様。お風呂のご用意が整いました」
その声に、くるっとリチャードが振り返る。
ぴょんと膝から飛び降りて、●●●の手を、くいと引いた。
「ねえ、●●●〜っ!一緒にお風呂に入ろうよぉ〜」
その声に、各自の耳がピクピク動く。
リチャードにねだられ、●●●は考えるように黙り込む。
(おいおいまさか。……ガキと風呂に入るんじゃねーだろうな)
いくら子供とはいえ、リチャードは男。
会話が途切れ、一斉に視線が集中する。
そうとは知らず、●●●がおもむろに口を開く。
「リチャードさん、ごめんなさい。一緒には入れません」
優しく頭を撫でながら、残念そうな顔を向ける。
(やっぱりな…)
クルーは安堵の息をつき。
しかしリチャードは、食い下がる。
「え〜〜〜何で?」
「だって私。着替えを持ってきていませんもの」
そう。泊まるのは予定外。
全員が手ぶらで城にきたのだ。
理由を告げると不意にエドワードが、声を掛けた。
「着替えならこちらで用意してある」
「え?」
「他の者も、そのつもりでいてくれ」
それを聞いてリチャードは、もう一度強く腕を引いた。
「じゃあ、いいでしょ?一緒に入ろうよぉ〜〜」
握った手を左右に揺らし、甘えたようにねだられて、●●●はどうしたものかとエドワードと目を合わせた。
彼は、すまない、とでも言いたげに小さく頷く。
その意味を理解して、●●●はリチャードに微笑んだ。
「そうですね。そういう事ならお言葉に甘えて。リチャードさん。入りましょう☆」
「やったぁーー!」
●●●は立ち上がり、手を伸ばすリチャードを抱っこした。
そのままクルーに背を向け、ドアに向かう。
リチャードは、肩から顔を覗かせて
遠い目をするシンとナギに
「ベェーー」と赤い舌を出した。
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