第5話






「なぜだリュウガ?」


どこか口を緩めながらも、エドワードは鋭い眼光で尋ねる。
リュウガは腕を組んだまま、ニヤリと笑って答えた。


「コイツも大事な仲間なんでな。一人ここに置いていく訳にはいかねえんだ」


するとエドワードもまた、腕を組む。


「ほう……仲間か」


フッと口元で笑ったかと思うと、彼は穏やかな声音で言った。


「お前達は海賊だそうだな」
「……っ」


とたんリュウガを始めクルー達の顔が僅かに強張る。
それに気づきながらもエドワードは続ける。


「我が国にも海軍くらいある。…お前達の噂は聞いている」


そこまで言って一呼吸おくと、彼は鋭い眼光で言い放った。



「海賊王リュウガッッッ!嫌と言うなら、ここで捕らえても良いんだぞ?」


啖呵を切るが、しかしリュウガも負けてない。


「ああ、捕まえるならそうすれば良い。脅したところで、置いていく気はねぇからな」


リュウガが言い放つと、クルーもそうだと睨みつける。


「ハハハ……」


突然エドワードが笑い出した。
一同が顔を見合わせる。
エドワードは笑った事を謝罪して続けた。


「さすが海賊王だ。その根性、気に入った」
「は…?」
「では、お前達全員をもてなすというのはどうだ?」
「もてなす?……海賊だぜ?」


エドワードがふっと笑う。


「俺の特技は、人を見抜くことだ」
「…って、どういう意味だ?」
「お前らは海賊だが、悪い奴には見えん」
「な」
「それにお前達の船は、派手にやられているそうじゃないか。当分出航はできないんだろ?」


そこまでバレてるのかと、リュウガはバツが悪そうに頭を掻く。
エドワードの表情が、ふっと緩んだ。


「弟も彼女を気に入ってしまったようだしな」
「………」
「それにお前達が悪人なら、街に放しておくよりは、安心だろ?」


そういうことかとリュウガは思った。
確かに手元に置いておけば、市民の安全は守られる。


「どうだリュウガ。 身の安全を保障した上。必要な物は全てこちらで手配しよう。…悪い条件ではないと思うが?」


譲歩するエドワードに、リュウガは口元だけで笑った。


「では殿下、酒はありますか?」
「は?」


突拍子もない申し出に、エドワードは再び声を出して笑った。


「ああ、たっぷりある。好きなだけ呑むがいい」

「んじゃ、契約成立だな!」


今度はリュウガの高笑いが、応接室に響いた。

それからエドワードは近衛兵に視線を投げた。


「聞いての通り彼らは私の客人だ! 丁重に扱うように」


近衛兵は素早く手を脇に下ろし、真っ直ぐ姿勢を正した。


「ということで……城は自由に使ってくれ。リュウガには酒を用意させよう…」


それだけ言ってエドワードは、部屋を出て行く。
近衛兵も彼に続いて背後のドアから出て行った。

扉が閉まると肝を冷やしたクルー達が、次々とソファーに倒れ込む。


「スゲーよ船長!王様に向かってあの態度だもんな!」


ハヤテがドカリと座り込む。


「私もさすがに、肝を冷やしましたよ、船長」


ソウシも呆れたような、ホッとしたような表情で、苦笑いをリュウガに向ける。

リュウガは椅子にドカリと腰掛け、は……と息を吐き出した。


「俺も全部バレてるとは思わなかったが…」


エドワードの目を思い浮かべて、リュウガはフッと笑った。


「アイツも悪い奴じゃ……ねえな…」


そう。あの目は役人特有の、見てくれに捕らわれる人間の目じゃない。

人の本質を見抜く目だ。




「ふふ………驚いた?」


その時、ずっと●●●に抱きついていたリチャードがソファーの前に歩み出た。


「兄様はねえ★とぉ〜ても強くてカッコ良くて。…すっごく優しいんだよっ!」


ヘヘンと笑ってリチャードはソファーの端にちょこんと座る。


「僕も、おっきくなったら、兄様みたいになるんだっ!」


そう言って、キュートな笑みを●●●に向けた。



「フン……ガキがかわい子ぶりやがって。そんな作り笑いに騙されるか!」


シンが小さな声で毒づくと。●●●の声が響いた。


「もぉ〜〜リチャードさん、偉いですっ!」


●●●はリチャードの頭を抱き寄せる。


「は?」


シンは思わず絶句した。

そしてナギは「やっぱりな」と、大きく息を吐くのだった。


その後、数人の執事がやってきて、各自を部屋へと案内した。






長い廊下をひたすら歩いて、●●●が連れてこられた部屋は、天蓋つきのベッドが目を引く、とても広くて明るい部屋。


「うわぁ…なんだかお姫様になったみたい」


執事の存在もつい忘れ、奥まで行って窓を開ける。
広いバルコニーがそこにあり、眼下には美しい町並みが見えている。

下の庭には真っ赤な薔薇が咲き誇り、手入れされた庭園が広がっていた。


ふと目をやると、白馬に乗るエドワードが丘を走っていくのが見える。



「ふふっ、やっぱり王子様は白馬なんだ」


口に手をあて、●●●はクスクスと笑っていた。









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