第1話
嵐が去って着いた島は
俗に言う
地上の楽園
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princess
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「あーあ。……派手にやられちまったなァ」
参ったなァと見上げる船は
先日の嵐でボロボロになった、シリウス号――
これで命が助かったのは、優秀な航海士の、お陰なんだろうけれど。
それでもそれを修理する為、急遽船は、とある港に停泊するのを余儀なくされた。
「右舷・左舷共に…相当持って行かれまたし。……荷物もかなり流されましたね」
シンが胸の前で腕を組んで、破損箇所を眺める。
「これでケガ人が出なかったのが、不幸中の幸いですが……」
ソウシも「やれやれ」と、走り回る船員達を見回した。
「ま……しばらくここに滞在するしかねーか……」
参ったなァと頭を掻いて、リュウガは小さな声で呟いた。
「船長ォー!」
そんな男たちの気持ちを余所に、●●●が眩しい笑顔で駆けくる。
「ねえ船長!この町。とっても良い匂いがしますね?」
すう、と息を吸い込めば、港には花の匂いが漂っていて。
周りを見ればそこいら中に、さまざまな花が咲き誇っている。
「綺麗なとこだろ?」
「ええ、すごく」
リュウガは右手で肩を抱き寄せ、広がる町に視線を投げた。
「この国は小さい島だが、歴とした独立国だ、」
「ヘぇ〜〜」
「おまけにここは、年がら年中、春だからよ。いつ来ても花が咲いてんだ、」
「いつ来ても?!…うわっ、ますます素敵ッ!!」
胸の前で指を組んで、●●●はうっとりと街を見る。
リュウガは満足そうに微笑んだ。
「おまけにここは、質のいいダイヤモンド鉱山があるからな。貧乏人なんて、いねえんだ」
「!」
「ま、……世界に僅かしかねぇ、地上の楽園、てとこだな、」
●●●は1度リュウガを見遣り、再度街へと視線を投げた。
「地上の楽園、ですか……」
目の前に広がる街を見つめて、●●●は目を輝かせた。
そう。
この国はまさに、地上の楽園という名に、ふさわしい国だった。
季節は1年を通して、春の日差しが降り注ぎ
国全体には、色とりどりの花が咲き誇っている。
ダイヤモンド産業で潤うこの国は、税金はおろか。
学費、医療費、全てタダで。
手厚い国の保護のもと、国民は穏やかな生活を送っていた
※
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