露天風呂 (ロイversion) | ナノ
第1話 



「よォーーし、次の目的地が決まったぜ?」


お宝を手に入れ、数日が過ぎた、ある日の夜。
キッチンにクルー達が集められた。
リュウガがドカッと椅子に腰を下ろす。


「次の目的地はベップ島だ」
「……といいますと…」
「つまり、温泉島ということだ♪」

シンの問いに、リュウガは飄々と答える。

「お前らも疲れが溜まってんだろうからな。…たまにはゆっくりしてくれ、」


直後、 しん、とキッチン内が静まり返った。
クルー達が互いの顔を見合わせる。

静寂を破って、ガタッとハヤテが立ち上がった。


「やりーーぃ!さすが船長ッ! オレ美味いモン腹いっぱい食うぜェー!」

な?と笑って、トワの背中を平手で叩く。

 ―― バシッと鈍い音がした。


「い……っ!そ、そうですねハヤテさん。でも僕はやっぱり温泉が楽しみです☆」
「そうだね。のんびりするのもたまには良いかもしれない♪」

ソウシがフっと笑みを漏らすと、ようやくここでクルー達も、強張る顔を綻ばせた。


「つーことで。後は頼むぜ、シン」
「了解です。ではさっそく進路変更しますよ」

シンがスマートに立ち上がりキッチンを出て行く。
リュウガもどっこらせと立ち上がった。

「話は以上だ。各自そのつもりで用意しといてくれ、」



こうしてシリウス号は、一路べっぷ島へと向かった。






それから数日後の夜。

「…なァ」

クローゼットの前に座り込む●●●が、着替えやらタオルやらを、鞄の中に詰め込んでいると、寝転ぶリュウガが、不意に本から顔を上げた。


「鼻歌なんか唄って、なんかイイことでもあったか?」

その声に、●●●が手を止め、振り返る。

「だって久し振りの温泉ですもの…」

クスッと笑えば、むくりと彼は起き上がり、ベッドヘッドに背中を凭れる。

「ちょっと来い」

そしてベッドを、トントン叩いた。

●●●は手に持つタオルを鞄に詰めて、それから向かいに座った。


「……う、わっ!」

…と、いきなり腕を前に引かれ、膝の間に挟まれたかと思ったら、後ろからぎゅうと抱き締められた。
お腹に腕を回され、肩に顎が乗っかる。


「なァ…」
「え、ええ?」
「ヤマトの温泉、ってのは、どんなんだったんだ?」

耳元でひそひそ話され、くすぐったい。
逃げようと上体を前につんのめると、「逃げんな」と、腕の力が強まる。
諦めて、カラダの力をフッと抜いた。


「そうですね。私も1度しか行ったことが無いんですけど…」
「ん」


リュウガは横顔を愛しげに見る。


「広いお風呂が外にあって、景色を見ながら入るんです。…すごく気持ちが良いですよ?」

その時を思い出してか、目を細めて話す●●●。

「ふーん、露天かァ〜〜それならベップ島にも、あるぜ?」
「ホントですか?」

勢いよく振り返れば、至近距離で目が合う。

「それだけじゃないぜ?」
「え?」
「他にもいくつかあったはずだが。……どうだ、●●●。
 ……2人で入るか?」


とたん彼の目つきが変わった。
普段見せる、ふざけた素振りは微塵もなくて。
射るような。……それでいて甘い眼差し。

思わず声を詰まらすと、リュウガはゆっくり目を伏せた。

 ―― キスされる

吐息が口にかかった瞬間、ハッ、と自我が戻ってきた。



「……狽ソょっ…と!!」

間一髪。胸を押して身を引いた。
リュウガはチッと舌打ちをする。

「なんだ、あとちょっとだったのにな?」
「あとちょっとって///」
「しかしお前もよく働いてくれてるからな、ゆっくりしてこい、」


うん、と頷くこめかみに、彼はちゅ、とキスをする。

くすぐったそうに身を捩るから、また繰り返す。


もしここで押し倒したら
コイツは俺を軽蔑するか。それとも――

そんな考えが頭をよぎって
それでも今は、抱きしめる腕に力を込めた。



そして翌日、港に降りると
湯気の漂う街並みが広がっていた。







 
   


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