七色十色 | ナノ
第2話
「よォーーし!…んじゃ、ここらで、レナの誕生会をやるとするか!」
着いた島は緑茂る小さい島。降り注ぐ太陽と砂浜が美しい。
直後リュウガは眉根を寄せて、レナの頭に手を置いた。
「悪いなレナ。 せっかく店でも貸し切って、祝ってやろうと思ったのによ、」
というのも、本日誕生日を迎えるレナは、晴れて今日。
16才になる。
そしてそれはこの時代。成人の仲間入りをする節目の年で。
今頃港に停泊して、盛大に祝ってやる筈だった。
しかし、先日出くわした海軍船に思いのほかしつこく追い回されたため
目的の港に着くことは不可能となり
偶然通りかかったこの島に急遽停泊したのだった。
「それより私のせいで、寄り道をさせてしまったみたいで……」
申し訳なさげに目を伏せるレナの肩を、リュウガが片手で抱き寄せる。
「…んなこたア、気にするな!! 揺れる船にも丁度飽きてたところだ、」
「ん、……でも」
上目遣いで、ちらりと伺う。
リュウガの隣で、シンも腕を組んで、ふ…と笑う。
「ま、……近くにこの島があったのがラッキーだったな、」
「そんなとこだ。気にすんな、」
ナギも珍しく、口を緩める。
「そうだぜレナ。船長は酒が飲めりゃ―…どこでもイイだろうけどよォー!」
「ですよね♪」
「ふふ……だろうね♪」
口々に声をかけるクルー達は、以前この島に来たことがあるらしく。
みんな笑顔で楽しそう。
「そうですか?」
「おう。お前は黙って祝われろ」
「………。では、お言葉に甘えて…」
「よし。…んじゃナギ。さっそくで悪いが、宴の準備に取りかかってくれ、」
その言葉を合図に、ナギが肩に掛ける食材を置く。
ハヤテとトワが酒瓶のケースを運んでくると、不意にシンが声を掛けた。
「船長、どうせなら、あの場所に行ったらどうです?」
「? あの場所か?」
「それはイイ考えだ。ここは日射しも強いから、レナちゃんも日焼けが気になるだろうし…」
ソウシもシンに賛同する。
リュウガの口元に、ふっと笑みが浮かんだ。
「おお、あそこかっ!イイところがあるじゃねえかよ」
「?」
見れば、みんな笑顔で笑ってて
向き合うリュウガが手を握る。
「どうだ?もう少し歩けるか?」
「はい。それは全然平気ですけど…」
「なら上等っ!!森を抜けたところに湖があるんだが。せっかくだ、行ってみるかっ!」
おおおお!!!
笑顔で賛同するクルーと共に、背後に茂る森の中へと入っていった。
*
「ふわあああ♪」
1歩森に入ってみれば、木漏れ日の眩しい緑のアーチ。
思わず溜め息が漏れてしまう。
「キョロキョロしてると転ぶぞ、」
「…!」
上を見ながら歩く腕を、シンが笑ってクイと引く。
ビクリとカラダが縮こまった。
「すいません、シンさん///」
「荷物よこせ。持ってやる、」
「え?!」
シンに気を取られているうち反対側から、ナギが荷物をくいと引く。
「これくらい平気ですよ?」
「いいからよこせ、」
「あっ!」
断る間もなく、手からヒョイと荷物を奪う。
ナギはそれを肩に掛けた。
それを申し訳なさげ見つめる手を、今度はソウシが右手で掴む。
「レナちゃん、こっちに来てごらん?」
「へ?!」
あれよあれよという間に手を引かれ、少し道を外れていく。
茂みの中に大きな花が咲いていた。
「うわっ!…きれいッ!」
「ふふ……ほら♪」
ポキッと折った赤い花を、ソウシが耳にツッと挿す。
「よく似合うよレナちゃん♪…お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます//」
ハニカんで笑うレナの名前を、今度はハヤテとトワが、大声で呼ぶ。
「なあ、こっちに来いよ!」
「綺麗な鳥がたくさんいますよ♪」
「え?!どこに?」
パタパタと2人に駆け寄る彼女の顔は、満面の笑み。
それをジトリと見るのは、先頭を歩くリュウガだ。
なんでこうも、レナにチヤホヤするのか。
それは今日が、彼女の誕生日だからだろうけれど。
大人気ないと思いながらも、ムカッ腹がたってくる。
それでも黙って暫く歩くと、突如黒雲が空を覆い、嫌な風が草木を揺らした。
「ヤベえぞ、ひと雨くるぜ?」
確か湖の近くに、いくつか洞窟があった筈だ。
「お前ら…急ぐぞ!」
リュウガの掛け声で走り出した直後。
ポツリと雨が、頬を濡らした。
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