危うい天使 | ナノ
第6話 








「ぅ……」

目が覚めると、そこは医務室のようだった。

「気がついたかい、●●●ちゃん……」

横を向くと、椅子からソウシが腰をあげたところ。

「…ソウシ……先生…」

カラダを起こそうと手をついて、痛む傷に顔を顰める。
浮いた頭は、枕に逆戻りしてしまった。


「慌てなくていいから、…ゆっくりね?」
「……すいま…せん…」

ソウシに背中を支えて貰い、ゆっくりカラダを起こしていく。
そこまできて、着ているシャツが自分のではないことに気づいた。


「あの……これ…」

ブカブカのそれに戸惑いながら顔を上げる。

「それはトワのだよ、」
「えと……トワ君の?」
「ああ。●●●ちゃんのシャツ。…治療の時に切らせてもらったんだ、」

その言葉に、海岸でのことを思い出した。
無意識に手を頬にあてる。

ソウシがベッドに腰を下ろした。


「それでさっきリュウガが来たよ、」
「え……せんちょ…うが?」

瞬間胸が、ドキッとした。
手を添えた頬がどんなに腫れているかなんて
想像するに、容易い。

(……どうしよう…)

この顔を見た時のリュウガの顔を思い浮かべて、心臓が五月蝿くらいに鳴り響く。
うつむけば、ソウシが髪を耳にかけた。

「それでね……●●●ちゃん…」
「!…………はい……」

顔をあげれば、何か言いよどむソウシの顔。

「あの……せんせい?」
「いや……なんでもない。…リュウガが部屋で待ってるだろうから、行きなさい――」


言葉を呑むソウシに肩を掴まれ、戸惑いながらも頷く。
それから何度かお礼を言って、●●●は医務室をあとにした。



      ※



甲板に出ると船は港を出ていたようで、周りは海。
手と足に巻かれた包帯を見て、重い足取りで階段を上がる。

コンコンッッ
何度か深呼吸をしてから、ドアを開けた。

中を覗くと、背を丸めるリュウガが、ベッドに端に座っている。

手には血に染まる、自分のシャツ――

立ち止まって、●●●は静かにドアを閉めた。


「船長……迷惑かけ…」

ドアを背に、ぼそぼそと呟くように言う。
その声にシャツを投げ捨て立ち上がったリュウガが歩いてきた勢いのまま

Σバァァンンッッッ!!!
思いっきりドアに両手をついた。

「……!!」
「なァ……」
「…っ」

顔を挟むように付かれた手。


「お前はそんなに強かったのか?」

いきなり掛けられた怒りを帯びた低い声に
思わずぎゅっと目をつぶる。と。

Σガァァンンッッッッ!!!!

今度は拳が、思いっきりドアを殴りつけた。


「なァ……」
「く」
「お前は男2人を相手に勝てる見込みがあるほど。
そんなにお前は強かったのか?」
「……っ」

答えることも出来ず、下を向いて押し黙れば。

「聞いてんだろーがッッ!答えろッ、●●●ッ!!!!」

耳をつんざくような、怒鳴り声。

恐らくキッチンにまで聞こえているだろう。
うつむく●●●は肩をすくめ、唇を噛んだ。

「それは……」

リュウガの言いたいことは分かる……
……心配していることも。

でも


「あの時わたしが行かなかったら…あの子達は……」

自分は間違っていない――
そんな目で見上げた顔に、リュウガの顔が僅かに歪む。


「お前は間違ってねえと、そう思ってんのかッッ?」
「………」

無言で見つめるその顔は、…肯定の顔。
顔色を落とすリュウの手が、●●●の顎を片手で捉えた。

「…いっ!」
「それでお前は、近くに居た奴らに知らせもしねーで。……挙げ句こんな顔にさせられて、…ベタベタカラダを触られて……」
「………っ」
「それでもまだ分かんねえのか?お前は女なんだぞッッ!!
少しは、自分の事も考えろッッ!!!!」

買Kァンンンンッッッッ!!!!!

再び拳がドアを殴る。

●●●は首をぎゅっとすくめ、それでも、っと…リュウガの顔を睨みつけた。


「だけど人を助けるのに、男とか女とか……強いとか強くないとか……そんなの関係ないです…」
「くっ………」
「困ってる人がそこに居たら、そんな事、考えてる余裕なんて!」

自分は間違ってない――
涙をこぼして見つめる顔に、リュウガは固く拳を握った。


「ああそうか。……お前は女だっていう自覚がねえんだな…」

呟くリュウガが、真っ直ぐ自分を見据えている。

そして訪れる、重たい沈黙。
ゴクッと唾を呑んだ瞬間。

 ―― ビリリッッッッッ!!!

右手ひとつで、シャツが左右に引き裂かれた。


「きゃっ…なにッッ?」

そのままダンッッと押し付けられ、見上げた口を、上から強引に塞がれた。

「ンンッ……」

顎を掴まれ、ぬめる舌が入ってくる。
抵抗する手をリュウガは掴み、その手をドアに押し付けた。

「……!!!……いやっ、!!」

開いた傷から血が流れ、
鉄の味が、口いっぱいに広がっていく。
だけどリュウガは、離してくれない。
顔を逸らせば、腕を掴まれ、そのままベッドに投げ飛ばされた。


「や、なに……???」

倒れた●●●を見据えたまま、リュウガはベットに膝をつく。
上から顔を見下ろした。

「おまえは、男も女も関係ねえんだよな?」
「……っ!!」
「だったら俺が、これからお前を無理やり犯す、」

 ―― 嫌なら力で抵抗しろ、


シャツを引き裂きベルトを外して

リュウガはいきなり●●●を組み敷いた。







 
   






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