福寿草 | ナノ
第3話 










「もー…さっき、まだって言ったでしょ?」
「さっき、ってお前。5分も前だぞ!!なァ早くしろ!オレの酒がなくなっちまう」

悲愴な声にSAKURAは、は…っと息をつく。

「もー…無くなるわけないでしょ?」

まだ始まってもいないのに!
ゴチルSAKURAは、手元のポーチのチャックを開く。

中には1本の赤いルージュ。
それを手に鏡に顔を近づけて、ツー…とそれを滑らせる。
最後に唇をパッと合わせ、ようやく彼女は立ち上がった。




「ん〜〜」

1度ドアに行きかけ、再度鏡に背を向ける。
背中丸出しのこのドレスは、昨日リュウガと街に行って買った物。
彼が選んだドレスの中から、1番露出の少ない物を、選んだつもりだったけど……

V字の胸元。

太ももを割る、スリット。

髪もアップにしてみたけれど。

子供っぽい自分には、不釣り合いな気がしてならない。

「……。…だ、大丈夫だよね?……よし!」

言い聞かせるよう頷いて。
よくやくSAKURAはドアに向かった。



      *



「お待たせしました。開けますね?」

ドアの向こうに声をかけ鍵を開ける。
カチャンと音がしたのと同時に、リュウガが中に入ってきた。

「ったく……オレの上着――」

…と、言葉半ばで黙り込む。
目の前には赤いドレスの、見知らぬ女。

「(お前、誰だ?)」

そう聞くが先、バンッッとドアが音を立てた。

「…きゃっ!」

そのまま両手でヒョイと抱き上げ、ベットの上に放り投げる。
彼女が体制を整えぬうち、リュウガも上にダイブした。

「……!…ちょっと!!!」

抵抗する間も与えられずスカートのスリットを肌蹴させると、リュウガは足から下着を抜き去った。

「な、な、な、ちょっと船長ォー、パーティー」
「あ?…そんなん知るか!!!」
「へ?」

その間も、リュウガは肩紐を両手で掴み、一気に腰までずり下げる。
プルン、と胸が弾き出た。

「な、!」

そのまま覆いかぶさってくる彼のカラダを、素早くシーツを掴んだSAKURAは、思いっきり足で突き放した。


「やめて…っ、てばァ――!」

そう叫びながら。





「ん?」

「あ」

直後、組み敷かれたSAKURAの目と、
起き上がったリュウガの目が、バチッとかち合う。
そして彼の肩には、突き出した。しかも、スカートから出た、剥き出しの足。

「やばっ…」

引っ込めようとした瞬間、リュウガの手が、ガシッと足首を掴んだ。

「ひ!?」

途端、鼻やら背中やら額やらに冷や汗が伝う。
彼の顔に、にやっと人の悪そうな笑みが浮かんだ。

「ほぉー…足から舐めて欲しいってことか?」
「ち、……ちがう!」

だけど彼の唇が、ふくらはぎをツー…と這う。
思わずじっと見とれていれば
リュウガは目を合わせたまま、足の指を口に含んだ。

……………。

1本づづ舐められる指。

不謹慎だけどカラダの芯がゾクゾクした。

そのまま彼は膝を立たせ開かせると、足の付け根に顔を埋めようと身を屈める。
そこまできて、ようやく自我が戻ってきた。

「ちょっと!!」

ばっ、とベットの上を後ずさり、ベットヘッドまで後退する。
震える声を張り上げた。

「こ……こんな事してる場合じゃなくて!…今からパーティーに行くんでしょ?!!」
「あ?そんなん、やめだやめっ!それより、お前と…な?」
「……は?」

づい、と唇めがけて近づく顔を、頬を掴んで制止する。
触れる寸前でお預けをくらったリュウガの眉間に、深い深いシワが寄った。


「も、そんな顔してもダメッ!!ていうか……今日は船長さんが集まるパーティーなんでしょ?海賊王の船長が行かなかったら……」
「そんなモン、オレが行かなくたって……」
「行かなくたって?……行かなきゃ、始まらないでしょ?」

ね?…と、じっと目を覗き込む。
リュウガは一瞬黙り込み、かと思うと、右手で頭をボリボリ掻いた。


「やっぱ行かなきゃダメか?」
「当然です!」

キッパリ言い切る。

すると彼は舌打ちをして、四つん這いのカラダを渋々起こした。

(ふ……良かった…)

…そう思ったのも、束の間。


「っ、……キャッ!」


次の瞬間、両の手首を彼に掴まれ、ベットの上に押し倒された。

「ん、……」

足の上に跨ったかと思うと、上から唇を奪われる。
すぐに舌が差し込まれ、何度も深く重なり合う。

「終わったらお前っ、…覚えとけ!」
「……んぅ……っ、」
「腰が抜けるまで抱いてやる!」

指と指を絡ませながら、リュウガは何度も深く口付け
足の付け根に股間をグイグイ押し付けてくる。
苦しくて顔を背けると、最後に、ちゅ、とキスをして
「口紅直したら出かけるぞ」と、何ごともなかったみたいにカラダを起こして、彼はベットを降りていく。
その背中を数秒見つめた。

「おい、なにやってんだ。…さっさと行くぞ」

だけど、下着とコートを投げてよこされ我に返って
慌ててSAKURAは起き上がった。

それから素早く準備を整え

2人はシリウス号をあとにした。








☆☆


 
   


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