鍵の付いた日記帳には
いつのまにか君があふれていた


お母さんに買ってもらった可愛い日記帳には小さな鍵がついていて、
それを持っているのは私だけだったから、
中を知っているのも私だけ。
内容と言っても簡単に言えば風介の事しか書いてなかった。
少し前の方をパラパラとめくってみると
今日もアイスを食べてた、だとか
晴矢と喧嘩して泣いてた、だとか、
そんなくだらない事ばかり書いてあった。

特別なことなんてなくたって
一緒なら それでよかったのに


毎日が凄く楽しくて、幸せで、
風介と一緒にいるだけで世界がキラキラしてた。

ぽつり ぽつりと雨が濡らすアスファルト
傘も差さないまま 滲んでゆく想いまで


明日こそ言おうと思って日記帳を閉じて
ベットに転がった私は小さく誰もいない天井に向かって
「好き。」と呟いた。ある意味これが日課になっていた。
明日こそは、明日こそは言おうと思っていたのに。

「さよなら」 君の声が揺らしたベル


なんでそんな事、言うの。
だって私は貴方が!

心のまんなか 鈍く響いた
初恋リグレット 小指にキス
震える手を握りしめた


「お前が、好きだった。」
そっと私の小指にキスをした後、風介は
「口にしたら怒るだろう?」
と笑った。

つないだ手に甘えていたの
気持ちだけをただ押しつけていた
初めての感情は 嬉しくて
苦しくて 絡まってしまった


風介はどこにも行かないと思っていた。
ずっと一緒、離れることなんかない、って。
初恋だったから甘酸っぱい気持ちに酔ってしまっていたけれど、
さりげなく繋がれる手に安心していたけれど、
それは枷にもなんににもなってなんかいなかったんだね。

少し冷たい雨が隠す涙跡
もっと濡らしていて そう やさしく叱るように
「ごめんね」 君の声とうつむく姿

ずっと傍にいるって約束したのに、…すまない。
そう言って頭を撫でられたけれど、
私の視線はずっとアスファルト。
涙がこぼれて生まれた痕がさらに私を泣かせた。

心のまんなか くり返してる
初恋リグレット 零れるなら
この想いもさらってほしい


いっそ風介の事なんか忘れた方がいいのかもしれない。
だって私の所には帰ってこないのでしょう?
だけどそんなことできなかった。
好きなんだもの、彼のことが。

「ありがとう」伝えられず
願いもまた 心のまんなか 降り積もっていく


「ありがとう。」
そう言えば彼は驚いたように目を見開いた。
「何が…だ、私はお前との約束をっ!」
「ありがとう、風介。貴方に会えて、よかった!」
そう言えば抱きしめられて少し低めの彼の体温と出会う。
否定するように身体をよじれば背に回っている腕がさらにきつくなる。
「あと…少しだけ。」

初恋リグレット
オルゴール(はこ)の鍵は開けたままで 目を閉じた


迎えなんて来ないと分かっているけれど、
貴方のこと、ずっと待っています。



初恋リグレット









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