今日もいつも通り、目が覚めた。
そう、いつも通り。
いつ…いつも…通り……?


0.1 お目覚め



目を開けるとそこに広がっていたのは草原で、私の部屋ではなかった。
いつもだったら目を覚ませば、目の前に見えるのはまず天井。(それか怒ったお母さんの顔。)
今日は夏休みが終わって始業式だったはずだ。
普通の人だときっと慌てるんだけれど、遅刻をしたことがある私は特に怖くはないのでぼーっとしている。
周りを見渡してみるけれど、この周辺には家なんてもの自体が存在せず、草、草、草のオンパレード。
とりあえずふう、と溜息をついてこれからどうしようか悩んでいるとか細い、けれどとてもきれいな…、言うならばしゃんとしたテノールが聞こえた。
「あんた、どうしてここにいるん?」
「あんたって私?」
「そうあんた。あんたしかこの辺にはおらんと思うんそやけども。ちゃうん?」
「うーん、多分私1人だと思われます。」
「エンジュへの観光なん?こんな奥まで1人で来るなんて珍しいけど。」
とっても綺麗な声で落ちつくっちゃ落ち着くんだけど、誰と話してるのかよく分からない。
声が聞こえるのは後方なんだけど、「こんな声でも顔はおっさんです。」みたいな感じの人が出てきたらと思うと怖くて振り向けないで居た。
「やっぱりですか?あ、観光ではないです。…、あの、私誰と喋ってるのかわからないのですが。」
「あ、ごめん。顔出すの忘れとったわ。」
そう聞こえると同時に私の後ろの草むらがガサガサと音を立てて擦れた。
「初めまして、よろしうな?」
にっこりと笑顔を貼り付けたその人はとりあえずおっさんではなかった。
私より少し?大きい男の子で、多分歳は変わらないくらいだと思う。
「………綺麗。」
「………へ?」
思わず言ってしまった。
彼が動くたびに揺れる赤い髪が凄く綺麗で、彼に似合っていて。
突然言われた相手もびっくりしているが、少しだけ頬が赤い気もしなくはない。
「なに、突然…?…と、とりあえずおおきに。」
「あ、いえ。ごめんなさい!急に…その。」
彼はぽかん、とした後、ふわっと笑ってくれたが、私の胸の中は後悔でいっぱいだった。
「嬉しいわ、別嬪はんに褒められてしもた。」
「うう、ごめんなさい。どうせ私は平凡ですー。」
「へいぼ…?なにが?」
「顔、でしょう?スタイルも…はあ。」
「綺麗よ、あんた。」
「…お世辞、ありがとうございます。」
「お世辞ではおまへんんそやけども…なあ。鏡貸すけど見てみがな。」
「自分の顔なんて見飽きました。」
あまりにも平凡なんだもの。
「ええから見てみなさい。もそやけどもたら勘違いかもしれへんから。

ぐいっと渡され仕方なく鏡をのぞき込む。
なんなんだろう、この人。と思いながら見飽きたはずの顔を見るために鏡を覗く。
するとそこにいたのは私ではない誰かで。
黒かった髪は少し赤っぽい茶に変わり、長さも肩までだったのに胸下まで伸びていた。
顔も少しだけれど幼くなり、自分ながらに可愛い。
「え、これ誰ですか。」
「あんた。」
「…ありえない。」
「…かわってんな、あんた。」
「よく言われます。」
「………。」




 


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