骨は炬燵に置いといて | ナノ



本丸の中は、深い深い静寂に包まれている。まだ誰も起きてこない、妖怪も寝静まる時刻。うっすらとした霧に包まれた世界の中で、大倶利伽羅は縁側で、太めの柱に背を預け、じっと身じろぎもせず門の先を見ていた。既に戦装束を身につけ、本体を抱えて金の双眸を輝かせる。
やがて、門がぎしりと控えめに開いた。人が1人分通れるか通れないか程の隙間を開け、その先から足が現れる。次に腕。それから頭。
大倶利伽羅はゆっくりと立ち上がり、門へと向かう。門の中から現れたその人間は、疲れきった顔と、赤く瞳と目尻を染めながら、驚いたようにこちらを見上げた。

「…大倶利伽羅」
「あぁ」
「大倶利伽羅だぁ」
確かめるように名を呼ばれ、再度頷く。それからゆっくりと袖を握ってから、涙に濡れた目尻をへにょりと曲げた。

「あのさ、お願いがあるんだけど」
こちらを見る瞳の奥には、酷く痛々しい色が残っている。それを目にしながら大倶利伽羅は相手の言葉を待った。

「一緒に、駆け落ちしてくれない?」
へらと笑いながら、今にも泣きだしそうな顔をしてくる審神者の手の中には、小さな壺が握られていた。


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