鏡写しの愛3 | ナノ



3.本丸にて、幕間。




「刀ってやっぱり主を中心に考えるもの?」
「…なんだ急に」

縁側で日の当たる場所。間にお茶と日本の団子を置いた皿を挟んで、私と大倶利伽羅はゆっくりとしていた。さて、なんでそんな質問をしたのかというと、正直特に理由など存在しない。最近の私の中の疑問のようなもので色んな刀剣男士に聞いているのだ。ただ、大倶利伽羅には皆とはだいぶ違う質問をしているのだけれど。「気になって」とだけ言えば、訝しげに眉間にしわが寄せられる。

「そんなに深く考えないで平気だよ。大して意味のない質問だから」
「……」

顎に手を当てて大倶利伽羅はこちらを見る。金の瞳が、きゅるりと観察するように細められた。私はこの彼の瞳が、とても好きだ。

「刀によって違うだろうが、俺は意識することは無い」
「そうだと思った!」

考えていた通りの答えに声を上げて笑ってしまう。慣れあわない彼らしい、簡潔な答え。

「俺は慣れあうつもりなんざ無いからな」
「それも思った!」
「だが」
「ん?」

そこでふい、と視線が庭へと移る。それにつられて庭の方を見る。美しく手入れされた木々と花が美しく咲き乱れている。

「…もう遅いな」
「何が?」
「さぁ?」

どうやら答えてけれる事は無いらしい。団子を1本持ってもぐもぐと咀嚼しだしてしまった。
大倶利伽羅は言葉少な故に、たまにこうして自己完結してしまうことがある。私としては、まぁそれで大倶利伽羅が納得しているならいいやと思うのだけれど、やっぱり気になるものだ。

「慣れ合うのが遅いってこと?日本語おかしくない?」
「喧嘩売ってるのか?」
「いやぜんぜん」

諦めよう。私も団子を食べる。3色団子は、昨日私が買ってきたものだ。いつもすごく並んでいるお店なだけあって、とても美味しい。

「大倶利伽羅は、変えたい歴史ってある?」

隣の大倶利伽羅が少しだけ息を詰めた音が聞こえた。そちらを向けば、やはり鋭い視線がこちらを向いていた。

「いや、全然深い意味なんてないよ。これもやっぱり気になっただけで」
「アンタは」
「え?」
「アンタはあるのか」

質問を質問で返さないで、と言いかけてそういえば私もいつも大倶利伽羅にそれ注意されてるな、と思った。
さて、なんて答えようか。思案してからすぐに口を開く。

「あるよ。例えば、昨日鶴丸にプリン食べられる前に食べておけばよかったなぁ、とか、掃除をちゃんとやっておけばよかった、とか」
「……そうか」

視線の厳しさは変わらない。ただその厳しさの中に、たくさんの優しさと慈しみが入っているのを私は知っている。

「…大倶利伽羅は?」

つ、と視線が私の瞳を見る。いや、今までも見ていたのだけれど、私の奥の奥を見るようにじっと、こちらを見据えるのだ。私はこの彼の瞳が、いたく好きだ。やがて、ゆっくりと大倶利伽羅が口を開く。

「俺は――……」

あの時彼はなんて答えたのだったか。ただ、つきんと胸に痛みの様な、しこりの様なものが残ったのは覚えてる。



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