雨のち晴れ、そして虹_1 | ナノ

世界で一番、幸せになって欲しいと思うひとがいた。
沢山の愛を受けて、沢山の優しさに囲まれて欲しい。その人が少しでも笑える世界になればいいと思った。どうかどうか、彼が幸せでありますようにと、この目が閉じる瞬間、確かに私はそう祈った。

そしてそのひとは、私の執着に近い祈りを受けたのか、まさかのまさか。私の前に現れた。

「大倶利伽羅くん…?」
「……誰だ」
桜も満開の、穏やかな高校の入学式。呆然と呟いた私に、彼は冷ややかな眼差しを向けた。

大切で大事で愛しいひとは、私の前に現れた。人として、刀の記憶を一切持たないまま。


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