迷子審神者2 | ナノ


あれから3ヶ月。男性の審神者とは時折連絡を続けているある日の事。思ったよりも早く、再会はやってきた。

「ま、迷った……」

やっぱり迷った。
なんで毎度こうなってしまうのか。三日月が護衛の段階で薄々思ってはいたけど。いたけども、何故。
右見ても森、左見ても森。進める道は後ろか、目の前の獣道程度だ。これから政府の会議だというのに。

「みかづきー…?」

近侍を呼んでも当然声は返ってこない。
何年も審神者やってる癖に迷うのかよ。そう思われる方もいるだろう。
だがしかし、違うのだ。
年に一度行われるこの会議は、毎年場所が変わるのだ。なんでもセキュリティやら安全面やらの為らしい。頼むやめてくれ。

「あっ、やばい、時間ない、遅刻しちゃう」

その場をぐるぐるした後、目の前の獣道を見据える。草がたくさん生え、枝や雑草は好き放題。それでもここがまだぎりぎり進める道。
よし。仕方ない。
覚悟を決めて、足を踏み出した、その時。

「おい」
「ぐぇっ」

襟足を引っ張られて、進みかけた動きが止まる。見上げたそこには、私の本丸にはいない顔があった。

「大倶利伽羅…?」
「…ここでも迷子になるのか、アンタ」

まるで私を知っている様な言葉に首を傾げる。

「えっと、どちらの大倶利伽羅さん…?」
「…以前演練で近侍をした」
「あぁ!」

あれから数多く演練をしたが、大倶利伽羅を近侍にしていた本丸はあの男性の所だけだ。すぐに納得が行って、思わず顔を綻ばせる。

「そうなんですまた迷子になってしまって。うわぁ、どうしよう、会えてよかった、本当に本当に不安だったんです」
「…1人か」
「三日月と来たんですが、案の定はぐれてしまって」

大倶利伽羅は苦々しい顔をすると、すぐに私の手首を引いて歩き出した。つっかえながらも足を進めると、彼はざくざくと獣道を進んでいく。

「連れてってくれるんですか…?というか、道がわかるんですか?」
「…人の気配のする方に進んでいるだけだ」
「ひ、ひとのけはい…」


流石は刀剣男士。ごくりと喉を鳴らしていると、パキンと音がした。
音の出処たる大倶利伽羅の足元を見ていると、気づいてしまった。彼がわざわざ飛び出てる枝や草を折っているのを、見てしまった。

(う、わ)

パキン。また、彼が飛び出していた枝を折る。
余りにもさり気なく、それでいて胸が擽ったくなる優しさに、繋がれている手首に熱が集まっていく。

「あ、あの、ところで大倶利伽羅さんの審神者さんは?」

熱をどこかにやりたくて、上擦った声のまま話しかける。

「…アンタの三日月と同じだ」
「あぁ……」

納得がいって思わず遠い目になる。きっと彼は、今日もたまたま近侍だったのだろうが、苦労する立場なんだろうなというのがありありと分かってしまう。

「でも本当に会えてよかった。正直、泣きそうだったんです」

どこに進んでも同じ景色で、近侍はいない。暗く鬱蒼とした森は、飲み込まれそうに思えた。

「後でジュースでも奢らせて下さい」
「必要ない」
「えぇ。うーん、でも私が必要ありますから。好きなもの教えてくださいね」

伝えると、握られた手首の力が少し強くなった気がして、少しだけ遠ざかった筈の熱が戻ってくる気がした。

「あっ、すごい、ついた!」

とてつもない速さで獣道を抜けて出た場所は、本部の裏手のようだった。1周すれば表口まで出られそうだ。
安堵の息が深く漏れる。

「良かったぁ。本当にありがとうございます」

お礼を言っている最中も、大倶利伽羅は足を止めない。どうやら表口まで連れてってくれるらしい。
いや、彼の審神者さんもそこにいるかもしれないから当然といえば当然なのだが。
ただ、繋がれた手首に意識が集中しちゃうのは、仕方ないんじゃないだろうか。

「あれ、いないなぁ」

表口に向かううちに、人の姿が増えてきた。刀剣男士と共にいる審神者が大半の中で、残念ながら私の三日月は見当たらない。
どうやら大倶利伽羅の審神者もいないらしく、彼は足を止めると苦々しく舌を打った。

「ううん…中ですかね……」

言うやいなや、またも大倶利伽羅は歩き出す。繋がれた手首をそのままに私も足を進めた。

施設の中には、外にいるよりも多くの審神者と刀剣男士がいた。
さて、私の三日月はどこだろうか。しかし辺りを見渡してもそれらしき姿は無い。ここまでいないと、流石に不安が胸の内に生まれてしまう。

「も、もしかして何か事件に巻き込まれたんじゃ」

嫌な考えが一気に回ってきて、さっきとは違う意味で泣きたくなる。しかし、大倶利伽羅はこちらを見ると、重々しいため息をついた。

「……ここまで連れてくればいいだろう」
「え?」

切れ長の目が私を捉えると、繋がれていた手が離れ、彼はどこかへと歩いていった。
いつぞやと同じようにそれを呆然と見送っていると、後ろから肩を叩かれた。

「主、探したぞ」
「あー!三日月!」

後ろを振り向いて、そこににこやかに立っていたのは散々探し回った三日月本人で、思わずぎゅうっと抱きしめた。

「どこいってたの?なんか危ない目に合わなかった?怪我とかしてない?大丈夫?」

体をぺたぺたと触りながらおかしなところは無いかと見るが、彼はいつものように笑う。

「ふむ、どうやら俺は心配かけたようだなぁ」
「すっ……ごい!心配した!」
「はっはっは、悪かった。しかし迷子になったのは主だろう?」
「ウッ、そ、その通りです……」

私の頭を撫でて彼は心底嬉しそうに声を上げて笑う。その掌の優しさに目を細めた。

「大倶利伽羅に連れてきてもらったのだろう?礼は言ったか?」
「え……あ、言えてない!普通に見送っちゃった…」
「主がいないままここに来た俺を見てな。はぐれたと言ったら、大倶利伽羅が一番に来た道を進んでいった」
「……ん?どういう意味?」

三日月の言う意味が理解出来ない。首をかしげていると、彼はふむ、と考えるように頷いた。

「アレはなかなかに優しい刀だな」
「…えっと、それって……」

把握してきた状況に、じわじわと顔に熱が集まるのが分かる。

「俺より早く飛び出すものだから、ついつい見送ってしまった」

はっはっはっ、と笑う声が聞こえるが、わたしの中はそれどころではない。
獣道からわざわざきてくれた。獣道でも通りやすくしてくれた。
そもそも、彼がいなくなった直後に三日月が来た。それはつまり、彼は三日月がここら辺にいると知っていたという事だ。そして、それらを何も説明せずに行ってしまった。彼はきっと、全て分かっていたのに。
分かって、優しくしてくれていたのに。

「うわぁ、どうしよう……」
「ん?」

今さらになって分かった自分のダメさと、考えれば考えるほど早くなっていく心臓に、三日月の袖を握る。

「これ、もしかしなくても、私。どうしよう、三日月。大倶利伽羅って、すごい、すごい優しいんだね」

見えなかった物が見えた途端、違う物まで見えてしまった。
ぶわりと、体全身に熱が回る。

「す、すき、だ」

余りにも単純すぎる。ちょっと優しくされたからって。
それでも、気付いてしまった。彼の分かりにくい優しさに。

「私、こんな、良いのかな。どうしよう、どうしよう三日月」

私は審神者で、彼は刀剣男士で。そして私の刀剣男士では無くて、別の審神者の刀剣男士で。
でも、好きだ。
いろいろな事が浮かんでは消えていくのに、三日月はゆっくりと笑って私の頬を撫でた。

「…主の頬に、花が咲いているな」
「こんな顔じゃ会議に出れない……」

三日月は一瞬きょとんとさせながら、またすぐに声を上げて笑う。余りにもその笑いが長いものだから、段々別の意味で恥ずかしくなってきてしまう。

「あぁ、いいなぁ。うん、主。若いとは良いものだな」

笑顔を深くして、今度は頭をなでてくる。

「主のしたい事をするがいい。人間は、それができる」
「…」
「したい事をして、そうして見つけた物を、時折俺に見せてくれ。じじいは、それが楽しみだ」
「三日月…」

満足そうに笑みを深くする三日月に何も言えないでいると、こちらを呼ぶ声が聞こえた。
声の方を向いた途端、胸が一気に高鳴る。

「大倶利伽羅さんと審神者さん…!」
「こないだぶりだなぁ。そろそろ会議始まるぞ」
「さ、さっきは、ありがとうございました!」

男性と、その後ろを退屈そうに歩く大倶利伽羅に向かって頭を下げる。
男性は一瞬だけきょとんとして顔を見せてから、豪快に笑った。

「あぁ、大倶利伽羅の事か。気にするな気にするな!コイツが嬢ちゃんの事を気に入っただけの事だ。無事に辿り着いて良かったな」

気に入ったとか、やっぱり大倶利伽羅が迎えに来てくれたんだとか、いっぱい言いたいことはあるけれどそれらをすべて押し込めて再度お礼を告げる。

「今回の会議の場所は迷いやすかったからな。仕方がない」
「年々会議の場所に辿り着くまでが難しくなってる気がしました…」
「それだけ戦争が過激になってるという事だろう。中も外も油断できん」

苦々しい顔をして男性は言う。
中も外も油断できないとは本当にその通りで、信頼できる相手なんて数える程もいない。苛烈になっていく戦況、終わりの見えない戦。どれもこれも、私の双肩には余りにも重すぎる。
そうこう話しているうちにもう会議が始まるようで、会議室へ入れと放送がかかる。

「主よ、大倶利伽羅には改めてちゃんと礼を言うべきだと思うぞ?」

歩き始めると、こそっと三日月の耳打ちが聞こえて肩を跳ねさせた。
さ、さらりと難しいことを…。
また熱を取り戻した身体に気付かないフリをして、三日月にも耳を近づけてもらう。

「ちゃんと言う。言うから、その、えーっと、見守ってて!変な事大倶利伽羅さんに言わないで!」
「はっはっは、あいわかった。見守ろう」

本当に分かったのだろうか。よろしくね、と言いながらしゃらりと揺れる三日月を見た。



そうして会議を終えて、今。
私は大倶利伽羅と2人きりでジュースを飲んでいた。

(っていやいやなんでやねん)

ひとりでノリツッコミをしている場合ではない。

会議が終わった後、男性が少し上層部と話すことがあると言って大倶利伽羅を私の所に置いていったのが五分前。
三日月が所用を思い出したと言ってどこかへ去ったのが四分前。
そうして、じゃあさっきのお礼にジュース奢りますと、自販機の前でそれを手渡したのが一分前だ。

今は広間のベンチに私が座り、彼はその隣の壁に背を預けている。

「…あの、さっきは本当にありがとうございました」
「…アンタに礼を言われる筋合いはない」
「でも実際本当に助かりましたし、お陰で無事に三日月にも会えて会議にも出れました」

元々三日月とはぐれた自分が原因である。それなのに他本丸の大倶利伽羅に迷惑をかけるというダメっぷり。
色々な意味で泣きたくなるのを我慢して、頭を下げた。

「本当にすみません、以後気を付けます」

彼の前で謝るのは何度目だろう。そろそろ呆れられてもおかしくない。

「…一城の主が早々に頭を下げるな」
「ウッ、すみません、あ、違うか、えーっと、はい、わかりました」
「…それと、今回の件、軽率に動いたのは俺だ」
「…えっ」

ぱっと顔を上げると、穏やかな顔の大倶利伽羅がそこにいた。
私の前では苦々しい顔をしているのしか見た事が無かったせいか、じわりと頬に熱が溜まる。

「…何か言われたら、俺に責任の所在を求めろ」
「そんなこと!」
「揉み消す」
「な、なるほどー……」

スパッと言われた声にいっそ清々しさを覚える。
そうだ、大倶利伽羅の主は政府の中枢に位置する人だった。余りにも彼が気さくだからそれを忘れてしまう。

「でも、来てくれたのが大倶利伽羅さんで良かったです」

改めてしみじみと思う。
なにせ、近侍はあの三日月だ。例え迎えに来てくれたとしても、その途中でまたはぐれない自信がない。むしろもう一回はぐれる。

「それに、こないだの演練でももっとお話したかったんです」

一言交わすだけで終わった演練を思い出して、小さく笑う。

「私の本丸は伊達の刀が居ないから、お話出来るのとっても楽しくて、嬉しくて」

もうきっと私の本丸に伊達刀が来ることは無いだろう。それはもう諦めた事だけれど、やはり知らない刀と話してみたい気持ちはある。

「あっ、いやすみません、私の話ばっかり。でもお礼を言えて良かった。今度そちらで何かあったら言ってください。微力ながらお手伝いさせて下さい」
「…余計なお世話だ」
「うっ、すみませんそうですよね。って、あーまた謝っちゃった、違いますよね」

かといっていい言葉が見当たらず、うんうん唸る。大倶利伽羅はそんな私を呆れ気味に見ると、空になった私の缶をひょいっと取った。

「あっ!良いです私が捨てます」
「座っていろ」

少し離れた所にあるゴミ箱まで歩き出した大倶利伽羅の背を見つめて、小さく息を吐く。

お礼も言えたし、ジュースも奢れた。私の任務はもう達成した。後はもう、私は三日月を、彼は審神者さんを待つだけだ。
そしたらここでお別れして、きっと暫く会うことは無いだろう。寧ろもう2度と会えないかもしれない。

「……、…」

きゅ、と掌を緩く結ぶ。会えない、という事実がやけに重く、そして現実味を帯びていることに随分と苦しく感じた。
流石にもう、自分の気持ちくらい自覚している。している、がこんな軽率で良いのだろうか。
相手は他所の審神者の刀剣男士だ。そもそも刀剣男士という時点でハードルが高いのに、他所の本丸ときた。もうダメだろう。

演練で会うこともきっともう無いし、会議で会える確率だって、今日が特別だっただけ。

「ううん……」

胃の腑から吐き出すよう重たい息を出して、頭を抱えた。

「…なにをしてる」
「あっ、大倶利伽羅さん。すみません、ありがとうございました」

上がりかけた私の腰を制して、大倶利伽羅さんは隣に座る。
ゆるゆると腰を戻しながら、目を見開いた。
まさか隣だとは。隣か。なんてこった。隣か。少しの距離を開けているとはいえ、近い。
電車の座席くらいの距離に、体が固まる。

「そ、れにしても、審神者さんどこまで行ったんでしょうね」

相手に違和感を持たれないよう、必死に話題を投げる。しかし、相手はあの大倶利伽羅。一言二言で会話は終わってしまう。
やがて、決して心地いいとはいえない沈黙が訪れた。

「……」
「……」

大倶利伽羅は足を組んで眠たそうにしている。その横顔をチラリと覗きながら、所在なしに指を弄る。緊張で早まる心臓が、うるさくて仕方がない。

「…あ、あの」

やがて決意して口を開いた。
本当は聞く気も言う気も無かったけれど、やはり彼の口から聞いておきたかった。もう二度と会えないなら、尚更。
息を吸い込んで、隣を見た。

「私を、探しに来てくれた、のは、どうしてですか」

三日月よりも早く飛び出してくれた。わざわざけもの道を通って探しに来てくれた。
それだけしてくれた理由が、どうしても知りたかった。

「たっ、大した理由が無いならそれで良いんです。でもその、何か、理由があるなら、知り、たくて」

去っていた熱がじわじわと戻ってくる感覚がする。きっと今、顔は赤いし汗も垂れてる。
それでも、と相手を見据えると、ゆっくりと金の目がこちらを向いた。窓からの夕日を反射して、きらきらと眩しく光る。

「…知りたいか」

静かに首肯する。
大倶利伽羅が丁寧に手袋を外して、指先だけ私の頬に触れた。冷たい指先に、私の熱さが移ってしまうように思えて、目を伏せた。

やがて指先だけだったのが掌へと変わっていく。触れる面積が大きくなる度に、どうしたら良いのか分からないほどに心臓が高鳴り、体の内側に熱が溜まる。

「あ、の」
「黙っていろ」

声の近さに、息が、震える。
彼の手は、まるで硝子でも触るようだ。それが耐えきれず、目を閉じた。
熱くて、苦しくて、死んでしまいそうな気すらしてくる。

「………」
「………」

彼の息が、私に触れている。
早馬のように駆ける心臓を抑えられない。あぁ、本当に、死んでしま、

「おおい待たせたな!帰るぞ!っと、邪魔したか?」
「おっ、おおおおおお疲れ様です!!」

目を見開いて勢いよく立ち上がる。右を見ると、少しだけ気まずそうにした男性が申し訳なさそうに見ていた。
あっ、ああああ、穴があったら入りたいとはこのことか。入りたい。穴に入りたい。

「わざとじゃなかった、邪魔するつもりもなかったんだ。すまん」
「…死ね」
「いや悪かった、本当に悪かった」

呪詛のような言葉を吐き捨てて、大倶利伽羅も立ち上がる。
さっきまでの事が恥ずかしくて、たまらなくて、視線も合わせられないまま頭を下げた。

「あの、今日は本当にありがとうございました。また機会があったらよろしくお願いします」
「おう、嬢ちゃんも元気でな。そら、大倶利伽羅も挨拶しろ」

背中を押され、大倶利伽羅は1歩前に出る。
否応なしに合わされた視線に、一気に熱が加速する。

「あ、あの、私」
「…会いに行く」
「へっ」

咄嗟に意味が理解出来ずにいると、既に彼はこちらに背を向けて歩き出していた。
男性が何度も振り返って手を振ってくれているのに頭を下げながら、隠しきれない寂しさに胸元を強く握った。

やがて二人の姿が見えなくなった頃、今度は右の方から見慣れた姿が歩いてくる。

「三日月!」
「おぉ、主。ここにいたか」
「どこいってたの?心配した」

今日だけで随分胃に来る事が多かった。出来ればもうやめて欲しいと言ったって、三日月はころころと笑うだけだ。

「なに、主が花を咲かせようというのでな。手伝ってやろうかと」
「やっぱりわざといなくなったんでしょ……」
「はっはっは、なんのことだろうなぁ」

もう。と口を尖らせるけれど、結果的に助けられたし、話せてとても嬉しかった。結果オーライだし、今回はちゃんと会えたから良しとしよう。

「でも本当に急に居なくなるのはやめて。何処か行くなら行くでちゃんと言って」
「俺は主を心配させるような事はしないぞ?」
「知ってるけどそれでも心配なの!」

誰だって、自分の刀がどこに行ったか分からなくなったら心配するだろう。勿論帰ってくると信じてはいるが、それでも、だ。
そう伝えるのに、三日月は私の頬をむにむにと抓ってくる。聞いてないな、これ。

「主の頬は柔いなぁ」
「もう。やっぱり聞いてないでしょ」
「そら、帰るぞ。皆が腹を空かして待ってるからな」

話を逸らされたと分かったけれど、まぁ、良しとしよう。なにせ、三日月が本当に嬉しそうに笑うので。
肩から力を抜いて、私も笑った。


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