今年もよろしくお願いします | ナノ


最近の本丸に、大倶利伽羅はいない。

いや、決して不穏な空気であるとかそういう事では無く、単純に連隊戦に駆り出されている為に、本丸には寝る時に帰ってくる程度になってしまっているという事だ。
朝から連隊戦に出て、昼に軽い食事、そのまま夕餉まで戦い続け、夜にはご飯を掻きこむようにしてすぐに寝る。おおよその刀もそうなっているし、私もまた、疲れが取れず早々に寝てしまうのがここ毎日。そのせいで、ここ数日まともに話すら出来ていない。なんともまぁ、寂しい事よ。いや、相手はそんな事露ほどにも思っていないかもしれないが。私としてはやはり、その、思い人とせっかく同じ所にいるのに会えないのは、少し、いやかなり寂しいというか。

でも、今日は違う。何せ、新年だ。新しい年が始まる日。流石にそんな日にまで連隊戦をひっきりなしにやるのはどうか、という事で今日だけは夜の連隊戦を無しにして、新年会としたのだった。
お陰で私にも余裕が出て、久しぶりにおやつが作れた。ほんの簡単なクッキーだけれど。夜には宴会が始まるから簡単な物を、と皆に配っているが、目的の人物が見当たらない。小さな袋に詰めたクッキーを持ったまま、廊下を歩くが、冷たい風が横切る。

「うーん、やっぱり居ない…」

本丸をほぼ一周したが、見当たらなかった。もしかするとどこかへ買い物に行っているのかもしれない。あれれ〜買い物に行く時は言ってね、って言ってるけど聞いてないぞう。…まぁ、それはいいや。

「…久しぶりに話せるかと思ったんだけどな」

がっくりと肩を落として、とぼとぼとと厨の方へと足を進める。
きっともう宴会の準備が始まっているだろうから、それを手伝わなくては。少しだけ下がった気持ちを無理矢理持ち上げて、数歩進んだ、その時だった。

スパン。と、部屋の襖が開いた。

「えっ」
「……アンタ、」

そこに居たのは寝ぼけ眼の大倶利伽羅で、後頭部にある寝癖から今の今まで寝ていたのだろう事は容易にわかった。

「大倶利伽羅さがしたよ、て、えっ!?」
「来い」

強く手首を引っ張られて、さっきまで大倶利伽羅が居たであろう部屋に押し込められる。そのまま、襖に背中を押し付けられ気付くと唇をむさぼられていた。

「んっ…は、ぁ」
「…久しいな……」
「…ん……」

厭らしい音を立てて口が離れる頃、私はもうすでに息が切れかけていて、じわじわとおかしな熱を体がもち始めていた。それは大倶利伽羅も同じだったのか、瞳の奥に、常には見ない熱の燻りがあるように思えた。

「…おおくりから、だめ……」

大倶利伽羅の指先が、審神者の太ももを撫で始めた事に気づき、朦朧とする頭でどうにかそれを押しとどめる。途端、目の前の男の気持ちが五度下がるのが分かる。同時に、何故、と聞いているのも。

「だっ、宴会、あるもん、支度…」
「…しなくていいだろう」
「そうっ…したい…、…けど、そうはいかないよ」

しなくていい、その一言にどれ程今心が揺れ動かされたか。しかし、一年の初めに主が居ないなど、余りにも余りにもだろう。大倶利伽羅も分かってはいるのか、死ぬほど低い舌打ちをしながら顔を離した。

「…なら、今夜。意地でも抜けてこい」
「…宴会を?」

大倶利伽羅は無言で首肯する。恐らく深夜になる頃には、皆べろんべろんだ。そこで私が抜けても問題は無いだろう。私もまた、頷いた。

「…じゃあ、今夜、ね」
「あぁ」

するりと頬を撫でながら、大倶利伽羅は再び唇を合わせた。大倶利伽羅はキスが好きだ、と、勝手に思っている。二人っきりになった時、彼は必ずこうしてキスをしてくる。それが嬉しくて、満たされてしまうから、色々流されがちになるけれどそこは一旦割愛させてもらおう。

「…あ」
「なんだ…」

そういえば忘れてた、と手に持つクッキーの袋を渡す。

「おやつにね、せっかくだから作ったの。そんなに量多くないし、これくらいなら宴会のご飯も食べれるだろうって」

大倶利伽羅はまじまじと袋を覗きこんで、袋を開けた。

「えへへ、今年もよろしくね」
「…あぁ」

来年は少し、落ち着くと良いね、なんて、二人して笑った。




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お久しぶりです!年末からバタバタしてしまっていて更新が滞ってしまってすみません…玉はようやく五万行きましたソハヤいらしゃーーーい!!
そんなわけで今年もくりさにばっかりでやっていこうと思います。何卒、今年度もよろしくお願い致します。

2017/1/1
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