それで2人で手を繋ごう | ナノ
もぞりと、隣の存在が身じろぎするのがわかって目を開いた。ゆっくり浮き上がる思考の中、一矢纏わぬ背中が、起き上がっていくのを見る。
「…雪だ」
呟く背中は、細く白い。寝起きに見るには、幾分か刺激が強い。が、その背中は先ほどよりも少しだけ気持ち高まった声でこちらを振り返った。
「大倶利伽羅、起きてるんでしょう。見て、雪だよ」
ゆき。ゆき、ゆき、あぁ、雪か。
寝起きで思考が恐ろしい程に遅くなっているのを感じながら、大きくあくびをした。
「…今の暦は」
「7月だね」
「……もっかい寝るか」
寝ないよ、そうくすくすと笑いながら審神者は少しだけ空いた襖の前から退いた。隙間から、静かに雪が降っているのが分かる。
「……雪だな」
「でしょ?」
しかし。と空を見上げる。真っ青な空が広がる中、白い小さな塊がゆらゆらと落ちてきている。それは、落ちる最中に溶けだしては、輝きを伴っていた。起き抜けの眼に、柔らかな明るさが染みる。
「…不思議なものだ」
「本当にね、あべこべすぎちゃう」
言いながら、審神者は再び布団に潜ってくる。裸の状態での冬は寒いらしい。
「…今は夏だろう」
「でも雪降ってるよ。寒いし。雪は冬にしか降らないじゃない、それに寒いし」
「暦は夏だ」
「今だけは冬」
夏、冬、お互いの主張を言い合ったところで、どちらかが負けるわけでもない。両方そろって息を吐き出しながら、小さく笑った。
「おかしいね、これだけ一緒にいるのに季節の感覚すら合わないなんて」
「…それで良いだろう」
私もそう思う、再度笑ってから審神者の冷えた指先が大倶利伽羅の頬に触れる。それに重なるように掌を乗せれば、相手の目が緩やかに細くなった。
「…全部一緒なんて、つまらないもんね」
その言葉に、大倶利伽羅は目元を柔らかくさせるのだった。
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見ているものは一緒でも、感覚的にこうだと思う審神者と、視覚的、論理的に考える大倶利伽羅。全然違う2人だけど、お互いを尊重して、ゆっくりと歩いていけたらいいね。