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「…何故またここにいる」

GWの初日。当然学校は休みで、私自身の予定も特にない。そんな平日の午前中に、私はいつかの神社に来ていた。目の前の青年は、こないだ自分が寝っ転がっていた所に片膝を立てて座っている。その変わらない風貌に少しだけ安心した。

「あの、こないだはありがとうございました。無事に友達と仲直り出来まして…。ここに来たらまた会えるかなって。あ、これお礼です」

紙袋に入った小さな菓子折りを相手に渡す。中身は無難なクッキーだ。ここら辺にはこういったちょっとお洒落なお菓子はなかなか売っていないので隣町まで足を伸ばしたのは中々良い思いで。

「…結構だ」
「えっ、クッキー苦手でしたか」
「そうじゃない」
「なら、ここに置いておきますね」

青年の隣にクッキーを置いて、それを挟んだ状態で自分も座る。
正直会えるかどうかは分からない所だったために、ここに来るまでドキドキしていたのだ。せっかくなので受け取ってもらいたい。

「でも本当に居てくれて良かったです。会えなかったら無駄になっちゃう所でした」

まぁそれならそれで自分で食べるだけだからいいのだけれど。とは言わずにサワサワと風で揺れる境内の中、ゆっくりと揺れる時間を体感する。

「…おい、用が済んだなら帰れ」

なんとなくだけど、この人、実はすごく淡泊というかあっさりしている人な気がする。じっと隣を見ていると「なんだ」と酷く鬱陶しそうに言われた。

「んー、もう少しだけここにいちゃダメですか?」
「ダメだ」
「ケチ」

なんとでも言ってろ、ととうとう隣の人はこちらに背を向けて寝っ転がってしまった。私の話は聞く事も無いという事か。だけど逆に考えれば起きるまではここに居てもいいという事かもしれない。変な方向に、少女は頭の回転が速かった。
用というなら、言ってしまえばたくさんある。
この隣で寝ている青年はどこから来たのか、とか。いつからいたのか、とか。そもそも、どうしてこんな辺鄙な田舎の神社にいるのか、とか。それでも、それらを聞くだけの仲でも、踏み込んでいい仲でも無い事だけは分かる。隣にいるその人に、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「…友達と仲直り出来たの、本当に嬉しくて。どうしても直接お礼が言いたかったんです。貴方が言葉を尽くせって、言ってくれなかったらきっと今でも喧嘩したままだったかもしれない」

隣の人は聞いているかわからない。それでも良かった。この人の言う通り「言葉を尽くしてお礼を言いたかった」のだから。もしこの言葉が届いているなら、それは逆に良い事だろう。

「だから今日、貴方に会えて本当に良かった。言いたい事が言えました」

空を見上げると、もう桜はどこにも残っておらず青々とした葉っぱが風に乗ってお互いをぶつけて揺れている。平和だなぁ、なんて思ってしまうほど、穏やかな日。
足をぶらぶらさせて、立ち上がって地面を踏みしめた。振りかえった所で相手はやはり寝ている。これはマイペースなんだろうか、それとも関わり合いたくないだけか。それらを判断するだけの物をまだまだ、というよりも全く私は知らない。
まぁ、それでもいいんじゃないだろうか。何せ、言葉を尽くして知っていけばいいのだから。

「あと、ここを秘密基地にしたてたの、確実に私が先なので明日もここに来ますね!」

そこでようやく、相手は嫌そうな顔をこちらに向けた。




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