紀平×原田で眼鏡の話
「紀平さん、目悪いんですか?」
事務室。
書類を手にした紀平さんが眼鏡をしていることに驚く。
普段が派手だからだろうか、似合わないことはないし寧ろ一周回って似合っているのだけれど、やはり俺の紀平さんに対するイメージとは違っていて。
「ああ、これ?…まあねー、普段はコンタクト入れてんだけど」
「へー……」
「…って、かなたん近すぎ。どんだけ見てんの」
「や、なんかすごい意外だったんで」
だって紀平さんと眼鏡。
眼鏡といえば翔太のイメージしかなかったので、なんだか目の前の紀平さんが知らない人みたいで。
なんとなく、緊張する。
「どう?真面目そう?」
そんな俺に、紀平さんは楽しそうに笑った。
真面目そうというよりも、若干こう、結婚詐欺師してそうなインテリ風ホストに見えなくもないがそんなこと言ったらどんな仕打ち受けるか分かったものではない。
「あ、でもなんか頭がよさそうですね!」
「良さそうじゃなくて良いんだけど?」
しまった、墓穴だった。
「す、すみません…。あ、でもかっこいいです…」
「ついでに褒められちゃったねえ。嬉しいな〜」
「う…っ」
何をしようとしても裏目に出てしまい、もう余計なことは言うまいと項垂れた時。
ふわりと爽やかな薫りが鼻腔を擽る。
顔を上げればすぐそこには紀平さんの整った顔があって。
「冗談だよ、別に気にしてないから」
その割には言葉に刺々しいものがあったような気がしないでもないが、本人が言うのならそういうことにしよう。
「っ…紀平さん」
名前を呼んだとき、軽く唇同士が触れ合い、そのまま角度を変えて深く貪られる。
紀平さんのことだから時間が長くなると窒息覚悟で身構えていたが、数分で紀平さんの唇は離れた。
「あぁ、でもやっぱ…キスのとき邪魔だな、これ」
なんて、真剣な顔をして呟く紀平さん。
その次の日も、更に次の日も紀平さんが眼鏡を掛けることはなくなったが本当にキスの時邪魔だから掛けないようになったのかどうかは今となっては本人しか知らない。というかそんな理由ではないことを祈る。
〜おまけ〜
笹山「珍しいですね、中谷さんが眼鏡掛けてないの」
原田「ああ、なんか定期的にメンテナスに出してんだって」
笹山「メンテナス?!」
四川「あいつ眼鏡なくなったら誰だかわかんねーな」
原田「まあ眼鏡が本体だしな」
四川「眼鏡が本体?!」
店長「ならばあいつもコンタクトか」
原田「いや伊達ですよ。あいつ視力めっちゃいいし」
店長「伊達?!」
…
笹山「なんか、中谷さんの見方変わりますね」
店長「唯一のアイデンティティの眼鏡すら紛い物とはな…」
翔太「君たち本当僕のことなんだと思ってるの」
笹山四川店長「眼鏡」