「詩織って、手、おっきいね」
寮の自室にて。
ソファーに座って一緒にテレビを見ていた阿佐美の手が入り、何気なくそのしっかりした骨組みの手に触れれば阿佐美は「え」と固まった。
「ほら、こんなに指の長さ違うし」
「別に、そうでもないよ」
「そんなことないって」
ほら、と呟き阿佐美の手のひらに自らの手を重ね合わせればやはり指の長さが違う。
やっぱり身長が違うからかな、なんて思いながらすりすりと指を絡めてみれば、阿佐美の顔がみるみる内に赤くなっていった。
「ちょ、たんま、佑樹くんっ」
そして、止められる。
「え?」と顔を上げれば、困ったような顔をした阿佐美。
「……触りすぎだよ。く、くすぐったい」
「あ、ごめん」
指の長さを確認するのに夢中になっていたお陰で無遠慮にベタベタ触ってしまっていたようだ。
今さらになって自分の行動が恥ずかしくなって、咄嗟に阿佐美の手から離れようとしたら、その武骨な手に握り締められ引き留められる。
「詩織」
「こうしたら、あんま変わらないよ」
手のひらを合わせるように指を絡め取られる。
「大きさ」と静かに続ける阿佐美は気恥ずかしそうに笑いながら繋がった手を軽く上げた。
絡み付いた手はまるでなにかに祈るみたいで。
恋人繋ぎ、という単語が脳裏を過る。
「本当だ」
確かに、丸まったこれならあんまり変わらない。
なんて思いながら、俺は「あったかいね」と頬を綻ばせた。
おしまい
「佑樹くん、ずるい」
「え?なにが?」
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