「ごめんね、佑樹くん。あっちゃんがあんな悪戯するとは思わなかったから……」

「いや、いいよ。……気付かなかった俺も俺だし」


後日。
阿佐美から事情を聞いたが、やはり今思い出してもドキドキする。
それと同時に阿佐美じゃないと確信することができなかった自分が恥ずかしくて堪らない。
そして、今目の前にいる阿佐美も偽物ではないのかと疑う自分自身も。


「無理ないよ、あっちゃん、ああいうのには無駄に気合い入れてるから」


傍迷惑なやつだな、というのは口に出さず「そうなんだ」と適当に答える。

本当、阿賀松のやつ、余計なことをしてくれた。
これから毎日阿佐美が本物かどうかをビクビクしながら過ごさなきゃいけないなんて……。

そのときだった。
カチャリと音を立てリビングの扉が開く。
あれ?鍵閉めてたよな、なんて思いながら目を向けた俺はそのまま青ざめた。


「あ、あれ?佑樹くん……?って、なんで、俺が……」


そこには阿佐美がいた。
そして俺の隣にも阿佐美がいて、隣の阿佐美はいきなり現れた阿佐美――ややこしいので阿佐美Bと呼ぼう――阿佐美Bに絶句する。


「ちょっと、また、あっちゃん!それ捨ててって言ったじゃん!佑樹くん、違うよ、違うからね。俺が本物だから、ちょっとなんで逃げ……もー!あっちゃんいい加減にしてよ!」


おしまい

←前 次→
top