阿佐美の様子が可笑しい。

常に情緒不安定でどこか挙動が怪しいやつだったが、今日はいつもに増して際立っていた。


「詩織……なにしてんの?」

「え?掃除だけど」


自室内。
CDや雑誌でごちゃごちゃになった棚を空にし、整理整頓をしている阿佐美はそうあっけらかんとした調子で答える。

あのずぼらで面倒くさがりな阿佐美が自主的に掃除。
それだけでもおかしい。川で鯨が連れるくらいおかしい。
なのに阿佐美の異変はこれだけでは止まらなかった。


「掃除って、あの、なんか今日あるの?誰か来るとか……」

「へえ、誰か来ないと掃除しちゃダメなわけ?」

「え?や、別にそういうわけじゃないけど……」

「ならどうでもいいじゃん。それよりゆうき君、喉渇いたんだけど」

「あっ、うん、わかった」


しかもナチュラルにパシられた。

まあこれくらいなら寧ろ進んでやることなので特に不快には感じなかったが、やはりなんかこう、違和感を覚えずにはいられない。

お茶を注ぎ、ソファーに座り一息ついていた阿佐美の元にそれを届ける。


「はい」

「ありがとう、ゆうき君」

「いいよ、これくらい。別に」


いつもと変わらない笑みを浮かべる阿佐美に俺は益々わからなくなった。
別になにかがあるわけでもないし、どういう風の吹き回しなのだろうか。

訝しげに阿佐美を一瞥した俺はそのまま向かい側に腰を下ろす。

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