確かに俺に非があるのは事実だ。
事実だけど、だからって、こんな仕打ちは非道いんじゃないのか。
「うっ、ひぐ……っ」
「おい、いい加減泣くのやめろ!鬱陶しいんだよ!」
「だって、だって、こんなの……酷いです……っ」
「元はと言えばてめえが悪いんだろうが」
むっとした阿賀松に即答され、早速言葉に詰まってしまう俺。
事後、目を覚ませば至るところに噛み跡があるわ骨は痛むはケツは広がってるし痛いし、手首の拘束は解けているものの痕は残ってるし痛いし、それなのに阿賀松と縁はどこかスッキリした調子で当たり前のように飯食ってて「あ、お前の分はそれな」って犬用の器に入った野菜の切れ端渡されて喜ぶ奴が特殊だろう。
声を押し殺し、咽び泣く俺の横。
並ぶようにしゃがみ込んだ縁はそのまま俺の頭をそっと抱き寄せる。
「おーよしよしよし、可哀想な齋藤君。鬼伊織に酷いことされちゃったねぇ。ほら、俺に見せてご覧。傷物になってないか確かめてやるから……っぶねえ!」
誰のせいだと、とどさくさに紛れて体を触れてくる縁を振り払おうとしたとき。
空瓶が飛んできた。
勿論そんな危ないものを投げるやつなんか一人しかいないわけで。
「ベタベタすんじゃねえよ。手垢がつく」
「ひっでぇ!そんなんだから齋藤君が心開いてくれないんだろ!」
面白くなさそうに唇を尖らせる縁を、阿賀松は一笑した。
「良いんだよ、別にそんなもん開かなくても。黙って股だけ開いとけば」
「お前がどう思おうが俺のものには変わりねえんだから」そう、当たり前のように宣言する阿賀松。
ふと視線がぶつかって、収まっていたはずの鼓動が再び乱れ始める。
「せ、先輩……」
「え?齋藤君、いいの?最低なおっさんみたいな発言で頬染めちゃっていいの?」
「齋藤君、早まらないで!」と肩揺すってくる縁を無視し、「それ、さっさと食べろよ」と目の前の器を蹴る阿賀松に、慌てて俺はそれを平らげた。綺麗になったそれに「よくできた」と頭を撫でられれば、全身の痛みが軽くなったような気がしないでもない。俺?末期だと思う。
おしまい
←前 次→