「まさか、あの人が犯人だなんて思わなかった」
「寧ろ俺はあの女が殺されたことに驚いたよ。最後まで生きると思ったんだけどな」
映画館内。
話題のサスペンスアクション映画を観終わった俺達は各々感想を口にしながら他の客に紛れて放映会場を後にする。
売店前。
ゴミを捨て、そのまま映画館を後んす、にしようとした時だ。
「あれ?志摩?」
たった今まで隣にいたはずの志摩が居ない。
慌てて立ち止まり、辺りを見渡せば志摩はすぐに見つかった。
売店の放映映画に因んだグッズが並ぶ棚の前、グッズを鑑賞している志摩に駆け寄る。
「何見てんの?」
「いや、せっかくの記念だしさ、なんかないかなーって」
言いながら、パンフレットをパラ見する志摩。
記念という言葉になんとなくむず痒くなりながらも、俺は近くにあったキーホルダーを手に取る。
「……こういうのとか?」
「ん、いいね。それ。それにしよっかな」
「本当に買うんだ」
「俺って結構思い出大切にしたいタイプだからさ」
「……へー」
「なに笑ってんの」
嬉しくて、とは言えなくて「いや、別に」と慌てて俺は緩んだ頬を引き締める。
そんな俺に小さく笑い、志摩は会計を済ませた。
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