「せ……先輩、そういう言い方はやめてくたさい」

「んー?どうして?だって本当のことじゃん?……それともなに?亮太には秘密にしておきたかった?」


どうしてこうもこの人はわざと人の神経を逆撫でするような物言いをするのだろうか。
志摩をからかって楽しんでいるのだろうが、巻き込まれた俺からしてみればたまったものじゃない。
ほら、志摩の顔色がみるみるうちに変わっていってるし……うわあもう、本当最悪だ。


「齋藤、どういうことなの。なんでこの人と一緒にいたの?」

「なんでってその、俺は……その、ただ、聞きたいことがあって……」

「聞きたいこと?」


怒ったような口調で問い掛けられ、別にやましいことなんてないはずなのに身が竦んでしまう。

志摩が喜びそうな遊び場を教えてもらっていた、なんて言ったら志摩はきっと引くだろう。疎ましく思われるかもしれない。
でも、このままじゃ志摩は納得してくれないだろうし……。

いざ本人を前にすると顔が熱くなって、なんだか堪らなく恥ずかしくなる。


「……」


押し黙る俺に、更に志摩は表情を険しくした。
どうしよう、益々機嫌悪くなっている。
なにか言わなければ、と思うけど、後一歩踏み出せなくて。


「っ、あ、あの、志摩、俺……」


そう、なけなしの勇気を振り絞り、声を出したときだ。
志摩に腕を掴まれ、縁から引き離すように強い力で引っ張られる。

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