別に、誰かに嫌われることも避けられることも慣れていたつもりだったが、どうしたことだろうか。
縁に絡まれてるところを仁科に助けてもらって数日、俺は、仁科に避けられていた。
別に露骨に無視されるわけではない。たまたま会ったとき挨拶すればぎこちないものの挨拶を返してくれる。
けれど、返事だけをすればそのままどこかへ行ってしまうのだ。
自意識過剰かとも考えたけど、避けられてるとしか考えられないのだ。

元々、俺にも仁科にも立場というものがある。仲良く話せる間柄ではないと分かっていても、この間のことがあるからかまた以前と同じ、寧ろ遠くなった仁科に一抹の寂しさを覚えていた。

厚かましい。たかが、一度よくしてもらえただけでこれほどまで舞い上がるなんて、仁科だって迷惑だろう。


「……っ、……」


自意識過剰の自惚れ野郎。安久ならそう言うに違いない。
やめようやめよう、最近変だ。元々仁科とは親しい間柄というわけでもないのに、こんな。
自分が自分で分からない。気付けば仁科のことばかりを考えてしまっている自分が恥ずかしくて、俺は軽く自分の頬を叩いた。


「……風呂入ろ」

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