なんとなく、不穏なものを感じた。
「……?」
まさか、と思いながらもゆっくりとドアノブを掴めば、扉は静かに開く。
やっぱり、扉を閉め忘れているようだ。
危ないな、なんて思いながらも、このまま無視することが出来ず、せめて扉が開いていることだけ栫井に伝えよう。
そう思って「栫井?」と恐る恐る室内へ呼びかけた、そのときだ。
開いた扉の隙間、そこから覗いた部屋の中に人間の足が見えた。
床に寝転がるように放り出されたその足に驚き、慌てて扉を開けば案の定、そこには廊下の上で倒れる栫井の姿があるではないか。
「栫井?……栫井っ!」
ノックとか挨拶とかそんなマナーを踏んでる余裕はなくて、靴を脱いでバタバタと駆け寄る俺。
「栫井?」と恐る恐る横たわる栫井を揺する。
いつも日焼けや健康とは無縁そうなやつだと思っていたが、今の栫井は不健康体そのもので。
白いを通り越して土色になってる栫井にあわあわしてるときだ。
僅かにその唇が動く。
「え?なに?」
「み、ず……」
水!
飛び上がった俺は、言われるがまま部屋の奥、水道のあるであろう洗面台へ向かった。
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