最初は会長さんの怒りを買って。
 その次は確か、奇襲に遭った阿賀松伊織を庇ったんだっけね。
 そして今度は、信じていた灘和真に裏切られるなんて。

「本当、齋藤って馬鹿だよね」

 だから駄目だって言ったのに。
 何度も何度も何度も何度も忠告したのに。
 その度に俺の言ったことを聞かずに動くんだからさ、少しはこっちの身にもなって貰いたいなぁ。
 濃厚な鉄の匂いにも、もう慣れた。赤い水溜まりの上、横たわる齋藤に歩み寄る。
 開いたままになってる瞼を指で閉じてやれば、ぱっと見眠ってるだけのようにも……見えないか。無理だよね。そうだよね。だって、この世界は既に終わってるんだから。

「もう一回、最初からやり直そうか」

 齋藤が生きて卒業する世界を探すために。
 きっと齋藤のいう皆が報われる世界なんてどこを探しても見つかるはずがないけれど、それでも、一緒に探してあげるよ。齋藤が満足する世界を。

「そこに俺がいれば最高なんだけどね」

 まあ、無理なんだろうけど。

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