「齋籐君、どうした。随分眠たそうだな」


生徒会室にて。
ソファーの隅っこで貰ったお茶を飲んでいると、同様グラスを片手にファイルとにらめっこしていた芳川会長がそう尋ねてくる。


「……ああ、ちょっとここ最近寝不足で」

「寝不足か……大丈夫か?」

「大丈夫です。夜まで起きとけば多分ぐっすり……ふぁ」

「もう限界来てるじゃないか。あまり無理をするな。眠たいときは寝ろ、仮眠室使うか?」

「仮眠室……って、確か」


一度入ったことがあるが、ふかへかでなんとも寝心地よさそうなベッドが置いてあるあの部屋か。
確かあれって栫井が鍵持ってるんじゃなかったっけ。
思いながら芳川会長に目を向ければ会長も俺が言いたいことに気付いたようだ。


「安心しろ、鍵なら預かってる。あいつが持っているとまともに授業に出ないからこの間取り上げたんだ」


なるほど。
どおりでここ最近常に眠たそうな栫井が本格的にうとうとし始めているわけか。
運がいいのか悪いのか、生憎生徒会室には俺と芳川会長しかいない。
他の役員がいれば恐らく断っていたのだろうが、やばいくらいの睡魔に負けた俺は素直に芳川会長の優しさに甘えることにした。

芳川会長の持っていた鍵を使って生徒会室の奥にある仮眠室に入り、ふらふらとベッドに近付いた俺はそのまま布団を捲り中に潜る。
なんだこの羽毛は。気持ちよすぎる。
肌触りのいいひんやりとした掛け布団の感触にうっとりしつつ、俺はそのまま枕に頭を乗せた。


「部屋の鍵はここに置いとくからな。生徒会を閉めるときまた起こしに来る。それまでゆっくり休んでくれ」


遠くから芳川会長の声が聞こえ、半分上の空になりつつこくこくと頷いたがそれが芳川会長に伝わったかどうかはわからない。
栫井が授業サボってここに入り浸る気持ちも分かる。

芳川会長が仮眠室から出ていったようだ。
聞こえてくる扉が閉まる音を最後に、俺はあっという間に意識を手放す。

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