「ふーん、なるほどなるほど」


冗談だろ。
湯船から上がろうと腰を持ち上げていたことを思い出し、背後から吹き掛かる息に血の気が引く。
そして慌てて手で隠そうとしたとき、徐に尻を掴まれた。
手のひら全体を使って包み込んでくる縁の手は大きく尻たぶを揉み扱き、俺はぎょっと目を見開いた。


「やっ、ちょ、せんぱっ」

「堪んないなあ、このぷりっぷりの可愛いお尻。食べちゃいたい」


なにするんだ。
背後を振り返り、自分の下半身に目を向ければ臀部に顔を埋める縁の青い髪が視界に入る。
それと同時に、尻にがぶりと嫌な感触が走った。

噛み付かれてる。尻を。
そう気付くのに然程時間は掛からなかった。


「ひっ、や……め……ッ」


縁にあま噛みされた箇所が痛みでじんじんと疼き始める。
そして口が離れたと思えば噛み跡をべろりと舐められ、そのまま隈無く臀部に舌を這わされた。
他人に尻を舐められているという事実が俺の羞恥心諸々を刺激し、いたたまれなさで押し潰されそうになる。
唾液が絡まる熱い縁の舌が皮膚を滑り唾液で臀部を濡らした。
徐々に肛門付近へと舌が近付いていき、鼓動が加速する。
気付いたら下半身に熱が集まっていた。


「せんぱ、いぃ……っ」


吹き掛かる息が、濡れた舌の感触が、噛まれた歯形の跡が、この状況全てが興奮材になっているようだ。
逆上せたかなにかで頭が可笑しくなっているだけだと思いたい。


「ビクビク震えてちゃってもー可愛いねえ、お尻の穴までヒクついてんじゃん。やらしー」


不意に這わされていた舌が離れ、すぐ背後から縁の笑い声が聞こえてくる。
その言葉に縁からは自分のケツが丸見えになっていることを思い出し、あまりの羞恥にきゅっと括約筋が緊張した。
瞬間、締めた肛門にずぷりと二本の指が入ってきて、そのまま強引に左右に開かれる。
両手で臀部を掴まれ親指で肛門を抉じ開けられ、そこに息が掛かかった。
ひゅっと息を飲んだ俺は、慌てて肛門を閉じようと力むが物理的に抉じ開けられたそこが締まるはずがなく、縁の言うように端から見ればただ中が痙攣してるようにしか見えないのだろう。


「っみ、見ないで下さい……っ」


そう分かれば顔が熱くなり、なんかもう泣きそうだった。
そう言ってケツを手で隠そうとするが後をどうこうするのはむずかしく、「目の前にかわいーお尻突き出されて見るなって言う方が無理だよねー」と笑う縁に振り払われる。
そして、ふと手が離れた。
ようやく止めてくれたようだ。
そう、内心ほっとしたときだった。
尻たぶと尻たぶのその間、ぺちんと硬い肉が這わされる。
舌とは比べ物にならない太く質のあるそれに嫌な予感しかなくて、咄嗟に腰を引いて逃れようとした瞬間腰を掴まれ強引に擦り付けられた。


「ぁ、や、なに……っ」

「なにって?齋籐君のかわいーお尻に俺のちんこ挟めてんの」


だろうとは思ったがやはり言葉にされるとなかなか破壊力がある。
にゅるりと割れ目に擦り付けられるそれに、俺は「ひい」と声を洩らしながらぎゅっと目を閉じた。
再び両手で尻を寄せるように揉まれ、性器を挟まされる。
先走りだろうか。
それとも先程の唾液だろうか。
嫌なぬめりのお陰でそれはぬるぬると割れ目に添うように滑り、その感触にぞくぞくと背筋を仰け反らせた。


「いやーいつも思ってたけどやっぱいいねえこの感触、むちむちしててたまんねえ」


いつもそんなこと考えてたのか。
まあどうせろくなこと考えてないだろうとは思っていたが。

吐息混じりの縁の声。
尻全体を好き勝手使われ縁の性器を扱かされるというのはなかなか屈辱的というかされている俺のが恥ずかしくて堪らない。


「っ、や……っやめてください……っそんな……っ」


すりすりと這わされる嫌な感触な擦り付ける度に高度を増し、気が付けばガチガチに勃起していた。
脈を打つ裏筋で肛門を擦られ、とうとう耐えられなくなった俺は浴槽にしがみつきながらそう懇願する。
すると、本気で嫌がる俺の気持ちがようやく伝わったのか今まで先走りを塗り込むように性器を擦り付けていた縁の動きがピタリと止まった。

そう思った矢先のことだった。


「へえ、じゃあこのままこっちに入れた方がいい?」


不意に性器が離れたと思ったら、そのまま徐に肛門に先端を押し付けられた。
この人は本当に俺の話を聞いているのだろうか。
挿りそうで挿らないなくらいの強さで宛がわれるそれに全身が緊張し、血の気が引くのがわかった。


「っぁ、ちが……っ」


慌てて、そうふるふると首を横に振れば「違くないって」ときっぱり否定された。
そして、ずぷりと先端部が僅かに埋められる。
水気でふやけていたせいかあっさりと受け入れてしまう自分の体が怨めしくて仕方がない。


「だってほら、ちょっと入れただけで丸飲みするみたいに締め付けてくるもん」


緊張したそこに捩じ込まれるそれに沈むそれに、背筋が凍る。
目を見開いた俺は逃げるように浴槽にしがみついた。


「っ、えにし、せんぱ……っ!抜い……っ」

「ああ、ごめんね。ちょっと入れっちゃった」


そう頼めば、今度はあっさり聞き入れてくれる縁。
つぷりと小さな音を立て引き抜かれる性器に、威圧感諸々が消え内心安堵するとともにあまりにも物分かりがいい縁にただならぬ不安を抱いた。


「やっぱりどうせ突っ込むならこっちのが良いよね」


そう独り言のように意味深なことを口にする縁。
そして、次の瞬間だった。


「え?……っうわ!」


服を引っ張られ、再び浴槽に引っ張り込まれる。
しかも、先程より深い。
足がつかないというほどではなかったが、いきなりの不意打ちに対応が遅れてしまう。
服が重くて、今度はしがみつく場所がないわ脱がされかけたズボンが引っ掛かって邪魔だわでなんか溺れたみたいになった。
というか、もしかして溺れてるのか俺は。


「あれ?齋籐君もしかして金槌?」


そしてそれは縁から見ても同じだったようだ。
慌ててズボンを穿こうとして更にバランスを崩す俺に対し縁は「そりゃ悪かったな」と笑う。


「ほら、こっち来いよ」


そして、不意に手を差し伸べられた。
どうやら掴まれということらしい。
しがみつく場所が欲しかった俺は咄嗟にそれを掴めば、そのまま縁に軽々と抱き抱えられる。
凄まじき水中パワー。
とかそんなアホみたいな考えていた俺は、目の前の縁を見上げた。
腰を抱えられ、俺は縁の上半身にしがみつき、両足は縁の腰を挟むようにふよふよ浮いていて。
あれ、この体制ってなんかやばくないか。
波に揺らされながらそう俺が気付いたのと肛門に違和感を感じたのはほぼ同時だった。


「っあ……っえ?」


先程同様肛門に硬いそれを宛がわれ、それはずぷりと体内へ埋め込まれる。
気を取られ、あまりにもナチュラルな動作で捩じ込まれるそれに俺はぎょっと目を見開いた。


「やっ、待っ先輩っ、うそっ」


性器を捩じ込まれ抉じ開けられた肛門に、一緒になってお湯が入り込んでくる。
普段の挿入とは違う不思議な感触だった。
包み込むような水の感覚とここが大浴場だという罪悪感羞恥心諸々に高揚する胸。
遠慮なく割り込んでくる縁はまったく悪びれた様子もなく「ごめんねー齋籐君、入っちゃった」とただ笑う。

そのまま挿入されればされるほど潤滑剤代わりになる先走りも流され、圧迫感に似た息苦しさに縁にしがみつく指先に力が込もった。


「ん、ひっ、うぅ……っ抜いてくださ……んんっ!」


波打つ湯船に揺らされ、その水温に心地よくなる反面遠慮なく挿入されるそれに下腹部が圧迫される。
落とされないよう縁の肌に爪を立て懇願するが、根本まで挿入されたそれはゆるく出し入れされ、這うように内壁を擦られぞくぞくと腰が打ち震えた。


「っあ、い、やだっ、先輩……っ」


体内で波打つような感触が、動きに合わせて鳴る波の音が、なにもかもが堪らなくて、そう、逃げるように腰を浮かせたときだった。
もがいていると不意に縁の顔が近付いてきて、気が付いたときには唇を塞がれていた。


「んっ……ぅむ……ッ!!」


ちゃぷちゃぷと波が立つ。
片手で腰をしっかり押さえ付けられ、もう片方の手で後頭部を押さえ付けられた。
唇を舐められ、そのままリップ音を立てて吸われる。
いきなりキスをされ目を丸くした俺は、慌てて顔を逸らそうとするが構わず唇に舌を這わされそのまま開きかけたそこにねじ込まれた。


「っは、んんっ」


咥内と体内を同時にまさぐられ、湯船の熱気に当てられた頭はどろどろに溶け、なにがなんだかわからなくなってくる。
舌を絡み取られ舌を擦り合わされればぞくぞくと背筋に甘い刺激が走り力が抜けそうになった。
縁の肩を掴んでいた手はずるりとずれ、こちらが脱力したのを確認すれば縁は舌を引き抜き、ちゅっと軽いキスをしてそのまま唇を離す。


「うぁ……っ」

「そんな顔すんなよ、ゾクゾクするじゃん」


どうやら縁は随分と拗れた性癖を持ち合わせているようだ。
呆然とする俺に、唇の両端を持ち上げ薄く笑みを浮かべた縁。
不意に持ち上げられ、何事かと目を丸くしたときだった。
繋がった状態のままいきなり浴槽から這い出され、大理石の上に背中を押し付けられる。
背後に硬い感触が当たり、慌てて上半身を起こそうとすれば腰を掴んだままの縁は再び腰を打ち付けてきた。
漂うような水中とは違う、ハッキリとした中で出し入れされる勃起した性器の感触が生々しく、微睡みかけていた意識は叩き起こされる。


「ぅくっ、ん、やっ、やめ……っんうっ!」


擦り付けるようなピストンされる度に腰が動き、水浸しになった大理石の上で体が跳ねる。
無意識の内にやっぱり、水中よりこっちの方がいいだなんて思ってしまう自分をぶん殴ってやりたい。

どさくさに紛れてちゅっちゅっと唇や頬、額に目元など至る場所に唇を寄せられ、こそばゆさで顔を歪めた俺はただひたすら激しいピストンを堪えるように縁の腕を掴んだ。


「っん、ぅっ、んん……っ」


瞬間、中で勃起したそれは大きく跳ね、破裂するように体内に熱が広がった。
それでも縁の腰は止まらず、吐き出される精液をかき混ぜるようにピストンを繰り返す。
唇が離れ、縁の口許に笑みが浮かんだ。
中に注がれる精液が奥まで流れ込み、そのドロリとした感触とぐちゅぐちゅと音を立てながらも打ち付けられる性器に擦られ、既に限界が近付いてきていた俺の視界は一瞬白ばむ。


「っ、ぁ、ひ……ッんん!」


そして、ピストンに合わせて打ち付けられていた勃起したそれは大きく跳ね、先端からは精液が勢いよく吐き出された。
掃除しに来たのに、汚してどうするんだ。
そんな自重気味な思想を働かせながら、ぐったりと仰向けに倒れ込んだ俺はなんかもうどうしようもない虚無感に襲われた。





「齋籐君、ごめんてばー。そんな怒んなよ」

「……怒ってません」

「じゃあこっち向いてよ、ほら、牛乳買ってきたから」

「……牛乳?」

「自家製濃くまろミルクだよって痛い!ちょ、優しくして……!ビンタしないで……!爪も立てちゃ駄目だって!ほらもーイチゴミルク専用機になるだろっ……え?イチゴミルクが飲みたい?はははっ、齋籐君ったらなかなか可愛いの好きだねー……って、え?まじ?」


おしまい

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