場所は変わらず志摩の部屋のソファーの上。
詳しく言うなら、ソファーに座る志摩の膝の上に俺は股がっていた。
向き合うよう、抱き合うように座り志摩と下腹部を密着させた俺は肛門に挿入されたそれに眉を寄せる。
弛いが、奥深くを突き上げるような丁寧ながらも心地よいピストン。
その快感に勃起した性器が短いスカートを捲りあげ、先走りで濡れた先端が頭を出した。
ピストンの度に揺れるそれを見て、志摩は笑う。


「齋籐、ダメだよこんなに勃起させちゃ。これじゃスカートの意味ないじゃん」


「ダメだからね、こんな格好俺以外の前でしちゃ」言われなくてもするはずがないのに一々注意してくる志摩の性格に今さらどうも思わない。
喋りながらもぐりぐりと中を突き上げられ、その振動に無意識ながらも腰が揺れる。
塗りたくられたローションと志摩の先走りが体内で混ざり、志摩が動く度にぐちゅぐちゅと音が立った。
体内に響くその音が酷く恥ずかしく、下からの突き上げに耐えるように俺は志摩の服を掴んだ。


「っ、ぁ、んんッ、や……っあ、しまっ、志摩ぁ……っ」

「はははっ、えっろい声。そんなに呼ばなくても聞こえてるよ」


すがるように志摩のシャツを引っ張り、抱き締める俺の頭を撫でる志摩は照れ臭そうに笑い、そしてそのまま俺の背中を抱き寄せ「ほら」と顔を近付けてくる。
なにをしろと言われたわけではないのに、つられるようにしておずおずと志摩に顔を近付けた俺はそのまま唇を重ねた。
触れ合う唇同士からお互いの体温が混ざり、唇と下腹部、行き交う体温にまるで溶け合ったような錯覚に陥る。


「んん、む……っ」


唇をなぞるように侵入してくる志摩の長い舌におずおずと自らの舌を突き出せば、そのままぬるりと舌を絡め取られる。
唇と唇、舌と舌を押し付け、お互いにただ無我夢中で酸素を貪り合うような激しい口付けに骨の髄まで溶けそうになった。
キスしている間も挿入は続き、後頭部と腰に回された志摩の手に抱き締められ、体の隙間がなくなるくらい強く抱き締められた状態で下から激しく突き上げられれば、あまりの心地好さに意識が飛びそうになってしまう。


「っ、んぅ……っふ……っ」


体がぽかぽかと暖かい。
激しい挿入の揺れで捲れ上がったスカートなんてお構いなしにキスをする。
背後に回された力強い腕が、腹の中で膨張する性器が、生暖かい吐息が、柔らかい唇が、長く絡み付いてくる舌が。
自分に触れるあらゆる志摩が堪らなく愛しくて、気が付いたら志摩の肩にしがみついて腰を揺らしていた。

お互いの唾液で口が汚れようと、無理な体勢のせいでタイツが破れようと構わず、志摩を求めるように相手の唇にしゃぶりつき、挿入された性器を内壁全体で締め付け、更に硬度を増す志摩の性器の上に腰を下ろしそれを何度も繰り返す。


「っさ、いと……ッ」


不意に唇が離れ、ちゅぽんと小さな音を立て舌が引き抜かれる。
急に寂しくなる口に、何事かと咄嗟に目の前の志摩を見据えれば、顔をしかめた志摩は小さく呻いた。
どうやら、酸素が足りなくなったようだ。
浅く、はっはっと犬のように呼吸を繰り返す志摩に顔を近付けた俺はそのまま相手の唇に軽く唇を落とす。


「っは、ぁ……やっ、もっと、キス……っ」


そしてそう、ぐちゅぐちゅと腰を上下させながらせがむように志摩の顔を覗き込めば、酸素補給が済んだのかほんのりと赤らんだ頬をひくつかせる。
してくれないのだろうか。
そう、怖じ気付いたとき、志摩はその口許に引きつったような笑みを浮かべた。

そして。


「なに、もうほんと齋籐、可愛すぎなんだけど……っ」

「っ、ん、んんっ」


いきなりぎゅっと抱き締められたと思えば、再び強引に唇を塞がれた。
求めていた志摩の体温に安堵した俺は挿入される志摩の舌に吸い付きながらそう相手の舌を甘噛みする。
咥内と体内。両方で行われる挿入に荒い息と共に室内には湿った音が響いた。


「しま、ぁっ、んぅ……ッ」


ぬるりとした舌に咥内を荒らされると同時に深く体内をえぐられ、背筋に走る甘い刺激に胸が大きく仰け反る。
次第に激しさを増すピストン運動に、肌と肌がぶつかる音が一層大きくなった。
落とされないよう、唇が離れないようにと志摩にしがみついた俺は上下から挿入される志摩の舌と性器をただひたすら受け入れる。
乱暴な挿入に腰がガクガクと痙攣し、限界まで勃起して血管浮かべた性器がびたんびたん腹に張り付いて苦しかったがそれらの苦痛まで心地よく感じてしまうのは恐らく相手が志摩だからなのだろう。


「んっ、んぅっ、ふ、ぁあッ」


なんとか志摩の唇を離さないよう必死に相手の腰に足を回したりと試行錯誤してみたものの、やはり限界だったようだ。
挿入に夢中になっているのか、いきなり腿を掴まれたと思えばそのままソファーの上に押し倒され、繋がった状態のまま浮かされた腰に何度も性器を打ち付けられる。
唇同士が離れ糸ができるが、やがてそれも途切れてしまう。
名残惜しかったが、もう一度キスをしようとした矢先体内をえぐられその快感に思考回路がぶっ飛んだ。


「しま、しま……ッもっと、ゆっくり……ぃ……っ!」


激しい挿入で掻き出されたローションがピストンの度に辺りに飛び散る。
ギシギシと危ない音を立て軋むソファーの上、激しい挿入にスカートを揺らす俺は上に覆い被さるようにガツガツ突っ込んでくる志摩の衝撃に堪えれず、苦痛に顔を歪めた。
ローションと先走りで濡れた性器が内壁を這いずる感触は酷く気持ちがいいが、如何せん力が強すぎる。
足の付け根が軋んだ。
しかし、当の志摩はよっぽど挿入に夢中になっているらしい。


「さいとう、好き、好きだよ……っ。齋籐。大好き、齋籐っ、齋籐……っ」

「あっ、あッ、んんっ、や、しまっ、しまぁ……ッ!」

「ああっ、孕ませたいなあ……っほんと。可愛いよ齋籐っ!ねえっ、齋籐、このまま俺の子供孕んでよ、そんで結婚しよっ?俺が養ってあげるよ、ずっと。ずっとねっ!名案だと思わない?俺、女の子三人と男の子四人欲しいんだよね。全員齋籐似でさ。あ、でもそうなったら手術しなきゃだめか、齋籐子宮ないもんね。じゃあ今度学校休んで性転換手術受けてみようか、手術費なら俺が出すからさっ」


パンパンと腰を打ち付けながらよがる俺を愛しそうに見下ろす志摩はそう譫言のように甘い声で囁く。
激しいピストンのせいで呼吸がうまくできず、軽い酸欠に陥った脳みそは思考回路をぐちゃぐちゃに乱され志摩の言葉を言葉と認識出来るほど機能はしていなかったが、それでも志摩がなにをいっているかのおおよその部分は把握できた。
今はただその言葉の意味を理解することが出来ず、それでも志摩の口から出た『性転換』という聞きなれない単語に寒気を感じずにはいられない。
言葉は震動となり、結合部から伝わってくるそれにぞくぞくと背筋が震え、思わず体内を出し入れするそれをキツく締め付ければ志摩は柔らかく微笑んだ。
そして、俺の腰をがっちりと掴み、深く自分のものを根本まで挿入する。


「……だからね、今はこれで我慢してね」


その言葉と同時に体内の志摩の性器がドクンと大きく脈を打ち、跳ねた。

そして次の瞬間、熱を持った志摩の性器から大量の熱が腹の中に注ぎ込まれる。
そこまではよかった。
よかったのだ。
全ての精液を出し終わる前、志摩は再びピストンを再開させる。


「っや、ぁ、っく、んんッ!ふっ、ぁ、あっ、ぁあッ!志摩、や、んんんッ!」


吐き出されたばかりの粘ついた精液は耳障りな音を立て、内壁に練り込まれるようにそれを擦り付けられる。射精中にも関わらず勃起した性器に中をぐちゃぐちゃに掻き回され、奥深くまで流れ込む心地よい熱にとうとう我慢の限界に達した俺の全身は緊張し、志摩に精液を注ぎ込まれながらその快感に射精した。





事後。
何度か射精した後、ボロボロのぐちゃぐちゃになったセーラー服を脱いだ俺は畳んだそれをぼんやり眺めていると、ペットボトルのお茶に口をつけていた志摩は「どうしたの齋籐、そんな顔して」と不思議そうな顔をしてこちらに近付いてきた。


「いや、あの、さっきの性転換手術って……」

「ん?ああ、なんだ。興味あるんだ?」

「ち、違う……けど……」

「ふふ、冗談だよ。冗談に決まってるじゃん。俺子供嫌いだからいらないよ」


最中、言われた言葉をぐるぐる悩んでいた俺に志摩は相変わらずなんでもない調子で続ける。
「それに、齋籐だけでも手が掛かるのにちっちゃい齋籐がいたら過労死しちゃうしね」そして志摩はなにか想像したのかどこか楽しそうに笑った。
その笑顔がなんとなく引っ掛かって、俯いた俺はそのまま押し黙る。
ずぐずぐと疼き出す胸に奥歯を噛み締めたとき、浮かない顔の俺に気づいたようだ。
「齋籐?」そう心配そうな顔をして尋ねてくる志摩を見上げ、俺は「だから、その……頑張るから……」と口ごもる。


「志摩がやりたいのがあるなら、言ってよ。……なんでもするから」


本音だった。
最中に出た言葉が嘘のように聞こえなくて、志摩が性転換を本気で望んでいるとは思ってはいなかったがやはり不安は大きくなるばかりで。
だからそう、すがるように志摩を見上げれば目の前の志摩はきょとんと間抜け面を晒し、そして「そっか」と静かに頷いた。
そして、


「じゃあ次はこっちいこうか」


言いながらまたソファーの影から紙袋を取り出す志摩に思わず「え?」と素っ頓狂な声をあげてしまう。無理もない。この展開でそれは可笑しい。というかなんだその量は。


「ミニスカナースにミニスカメイド、ミニスカポリスにボンテージ。まだまだいっぱい用意してるよ」


何着分もの衣装が入れられてあるであろう紙袋をバサバサと俺の目の前に重ねていく志摩は変わらない笑顔で「どれがいい?」なんて無茶なことを尋ねてくる。というかなんで女装限定なんだ。突っ込みが追い付かない。
そして戸惑う俺を無視してばんばん紙袋を積み上げていく志摩。
増える衣装に俺は益々混乱するばかりで。


「ちょ、待っ、え?え?」

「俺的にはこのワンピースビキニとか一押しなんだけど。大きなフリルが可愛いでしょ?きっと齋籐に似合うと思うよ」


冗談じゃない。
上に乗った紙袋を手にし、押し付けてくる志摩に気圧され後退りする俺。
そんな俺を怒るわけでもなく、志摩はやはりいつもと変わらない優しい笑みを浮かべ俺を見据える。


「まあ、時間はたっぷりあるからね、好きなもの選びなよ」



そして、最後にデジカメを手にした志摩は「余計なこと考える隙もないくらいたくさん愛してあげるから」と楽しそうに微笑んだ。


おしまい

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