「早く、撮ってよ……っ」
両サイドのスカートの裾を持ち上げ、自らの下着を志摩に晒す。
掌にじんわりと汗が滲み、酷く全身が熱くなるのがわかった。
下腹部がタイツに覆われているだけ余計、間抜けな格好が恥ずかしくて堪らない。
舐めるように絡み付いてくる志摩の視線を意識しないよう赤くなった顔を俯かせ、ぎゅっと目を瞑ってはみるが、無理だった。
「はははっ、齋籐顔真っ赤じゃん」
足元から聞こえてくる志摩の笑い声。
先程同様、床にしゃがみ込みローアングルからレンズを向けてくる志摩になんだかもう生きた心地がしない。
おまけに、自分から頼み込んできたくせに中々写真を撮ろうとしなかった。
そのお陰で、先程からずっと俺は自分のスカートを捲るはめになっていた。
それももう限界だ。
「も、志摩……っ」
「わかったわかった、そんなに急かさないでよ。齋籐ってば欲しがり屋さんなんだから」
「別に、欲しがってなんか……」
ようやく撮る気になったのか否か、からかってくる志摩に反論しようとしたときだった。
パシャリと、視界が白ばむ。
「エロい顔。そんなに真っ赤になってタコみたい」
写真を撮り終え、カメラを外した志摩は挑発的な笑みを浮かべる。
志摩の揶揄に眉を潜めた俺は「誰のせいだと……」と唸りながらスカートの裾から手を離した。
そして、そのままセーラー服を脱ぐため上着のサイドについたファスナーを下ろそうとしたときだ。
「あれ?なに脱ごうとしてんの?」
「え?」
「まだ駄目だよ、二枚しか撮ってないじゃん」
「さっき、一枚だけって……っ」
おまけにサービスで一枚撮らせたのにまだ足りないと言うのか。
流石に我慢出来ない。
丁重にお断りさせていただこうとしたときだった。
「気が変わっちゃったんだから仕方ないじゃん」
そうなんでもない調子で続ける志摩。
不意に手が伸びてきたと思った瞬間、ソファーに押し倒される。
いきなりの行動に受け身が取れず背中が座面のクッションにぶつかるが、それで強打する羽目にはならなかった。
しかし、俺を怯ませるには十分なもので、仰向けに倒され、呻きながら上半身を起こそうとしたとき、足元に膝立ちになった志摩はそのままスカートの中にカメラを近付けてくる。
「まっ待った!志摩、どこ撮って……ッ」
「齋籐のパンツ」
「やめてよ、なんでそんなところっ」
「ほら、暴れない暴れない。スカートが捲れちゃうよ」
「まあ、俺はそっちの方が有り難いんだけどね」持ち上げ、露出させた股間をタイツの上から撫でられたと思えば志摩は膨らんだその部分の薄いタイツを摘まみ、思いっきり引っ張る。
瞬間、ぶちぶちと細かい繊維が引きちぎれるような耳障りな音がしたと思えば、タイツに伝線が走り、そして大きな亀裂になった。
乱暴に破かれ、黒いタイツから下着が覗く。
せっかく用意したのになんで破くんだ。
ぎょっと目を丸くして股間部を主に大小様々な亀裂をつくられる無惨なタイツを呆然と眺めていれば、どうやら志摩は満足したようだ。
破れたタイツの穴から覗く下着に顔を近付けた志摩は、そのまま股間の膨らみに軽く口付けをする。
そのもどかしい感触に身動ぎしたとき、口を開いた志摩にぱくりと下着の膨らみを食い付かれた。
そして、そのままそれに歯を立て甘噛みされる。
全体を解すように歯や唇、舌を使ってやわやわと刺激され、布越しのもどかしいその感触にぞくぞくと背筋が震えた。
「っ、や、ぁ……っ志摩、やめてよ……やめてってば……っ」
破れたタイツが絡み付いた足を動かし、なんとか閉じようとするがそのまま両太股を掴まれ無理矢理開帳される。
その股ぐらに顔を埋める志摩の頭が視界に入り、じんと耳が熱くなった。
泣きそうになりながら、下着の上から性器を刺激してくる志摩の頭を押さえ止めようとするが当の志摩は相変わらずどこ吹く風で。
性器を嬲られている内に唾液でぐっしょりと濡れた下着から口を離した志摩は「記念だよ、記念」と薄く微笑み、そして下着から浮き上がった勃起した性器を指の腹でつっと優しくなぞる。
布越しに伝わってくるその感触にピクリと下半身が反応した。
「すごい齋籐、もう勃ってんじゃん。女の子の格好しちゃって興奮してんの?」
「違っ、だって、志摩が……っ」
「やだな、俺のせいにしないでよ。齋籐が勝手に興奮して勃たせてるんでしょ」
「ほら、また硬くなった。これじゃすぐにスカートめくれちゃうね」捲り上がったスカートを戻し、不自然に盛り上がったそこを掌で柔らかく押し潰すように揉みしごいた志摩は「はしたないな、佑樹ちゃんは」と鼻で笑う。
「…………っ」
屈辱的なはずなのに、体の芯が酷く熱くなり下腹部がじぐりと疼いた。
全身の血液が下腹部に集まり、膨張する自分の性器に気付きながら尚も性器を揉む志摩の手を止めようと弱々しく押さえたときだった。
ぱしゃりと軽快な音とともに視界が瞬き、咄嗟に目を細める。
白に染まった視界に色が戻ってきたとき、目の前にはカメラを手にした志摩がいた。
「女の子扱いされて勃起しちゃうなんて本格的に変態だね、齋籐。恥ずかしくないの?」
「そんな、こと……っ」
「あるでしょ」
「こんなに勃起させちゃってさぁ。興奮しちゃった?」言いながら、再びスカートの下に手を這わせた志摩はタイツごと下着をずり下ろした。
瞬間、スカートの中で押さえ付けるものがなくなった勃起した性器が外気に晒され、嫌な通気性に俺は目を見開き、膝上までずりさげられた濡れた下着と破れたタイツを見る。
そして。
「あ、その顔いいね」
ぱしゃり、とまたシャッターが押された。
その眩しさに顔をしかめ、自分の顔を手で覆った俺は指の隙間から覆い被さってくる志摩に目を向ける。
「も、やめてってば」
「どうして?俺は齋籐との思い出を全て残しておきたいだけなのに」
「ほら、顔隠しちゃダメ」顔を隠そうとする俺の手首を掴み、無理矢理引き剥がした志摩はそのまま俺の唇に自らの唇を寄せた。
ぷにっと触れるだけの軽いキス。
かと思えば、そのままペロリと唇を舐められ、頬から首筋へと志摩の長い舌を這わされる。
「っ、ぅ……っ、んん……ッ」
大きな襟を捲るように鎖骨を舐められたと思えば、そのまま吸い付かれる。
志摩の髪が唾液で濡れた首筋を掠り、くすぐったい。
宥めるようなその優しい愛撫に身動ぎをした俺は気恥ずかしくなって志摩から顔を逸らした。
「だって、恥ずかしいんだってば、これ……っ」
「俺しかいないんだから恥ずかしがらなくてもいいのに」
「だから、志摩だから恥ずかしいんだってば」
このままじゃ恥ずかしさのあまり憤死しそうだ。
熱くなる顔を隠すことも許されず、泣きそうになりながらそう志摩に制服を脱がさせてくれと懇願しようとしたとき。
不意に、志摩の動きが止まる。
気になって、おずおずと顔をあげて上に乗る志摩を見上げればきょとんと目を丸くした志摩と目が合った。
「そんな可愛いこと言わないでよ。……俺まで恥ずかしくなっちゃうじゃん」
そして、笑みを強張らせた志摩は徐に俺から視線を外す。
その顔がじわじわと赤くなるのを見て、俺はここで照れるのかとぎょっとした。
というか、
「っか、かわ……っ」
可愛い。可愛い?
志摩のツボがわからず、あまりにもストレートな言葉にこちらまで狼狽えてしまっていたときだった。
言いかけて、言葉を遮るように唇を塞がれる。
「ぁ、ふぁ……、んん……ッ」
薄く開いた唇を割ってにゅるりと侵入してくる唾液で濡れた舌に全身が緊張する。
そして、ぎこちない動きでそれを受け入れたとき、不意に舌を抜かれた。
もうやめるのか。
暖かく心地よい舌の感触を堪能する暇もなくあっさりとなくなり、名残惜しくなった俺はそのまま志摩を見る。
すると、体を起こし、その場に膝立ちになって横たわるこちらを見下ろす志摩と目が合った。
「ね、俺をこんなにした責任、ちゃんと取ってくれるよね」
言いながら、自分の腰に手を伸ばしベルトのバックルを掴み、外す志摩はやけに熱っぽい眼差しをこちらに向ける。
息が荒い。
なにかをねだるように「齋籐」と名前を呼ぶ志摩はベルトを緩め、不自然にテント張ったズボンのファスナーを下ろし、微笑んだ。
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