「やっ、やっぱ駄目ですって……!こんな……っ!」

「ぴーぴーぴーぴーうっせえな。ケツ丸出しでなに言ってんだよ」


お前が脱がせたんだろうが。
阿賀松の手によって強引に壁を向かされた俺は背後に立つ阿賀松を振り返ろうとしたときだった。


「っんむ」


ぬっと伸びてきた阿賀松の手のひらに口を塞がれる。
動揺のせいか物理的なものなのか息苦しくなって慌てて阿賀松の手首を掴み剥がそうとするが、それよりも先に開きかけた唇に指を突っ込まれた。


「っ、ひゃ、ぅ、んんっ」


捩じ込まれる二本の長い指に咥内を掻き回され、そのまま舌を捉えられる。
舌先を指で摘ままれ、そのまま口の外へ引っ張り出され唾液が溢れた。
舌が思うように動かず呂律が回らない。
恐らくそれが阿賀松の狙いなのだろう。

こいつ、本気だ。
阿賀松の手から逃げるように首を横に振るが顔面下部を押さえ込まれているお陰で逃げようとすればするほど首が痛み、バランスを崩した俺は壁に手をつき体勢を建て直す。
どうやらそれがまずかったようだ。


「はいはい、よく出来ました……っと」


背後から吐息混じりの阿賀松の笑い声が聞こえたときだ。
ちゅぽんと音を立て唾液に濡れた阿賀松の指が抜かれたと思った瞬間、下腹部に違和感が走る。
主に肛門。
臀部に這わされた指先に肛門を左右に広げられ、うわやばいと慌てて振り払おうとした矢先、ゴムを被せられた阿賀松の性器を宛がわれた。

そして、先ほどの行為ですっかり解されていたそこはそのまま捩じ込んでくるすんなり阿賀松を受け入れようとする。


「っ、ぁッ、やぁっ、せんぱ、ぁ、嘘、嘘嘘嘘、待っ……ぁ、あぁあ……ッ!」


唾液をねっとりと馴染ませた内壁を這うようにゴムに覆われた性器はずぷずぷと体内の奥へと埋め込まれる。
ゴム越しでも伝わってくる性器の打つ脈に阿賀松の熱。問答無用に入り込んでくるそれらの感触に全身が打ち震えた。


「やらしいなぁユウキ君、お前すっげー薄いの選んでんじゃん」


逃げる俺の腰を掴んだ阿賀松は笑う。
ゆっくりと、焦らすような動きで挿入してくる阿賀松の挑発的な声に顔が熱くなった。
挿入に耐えるように壁を掴む俺が俯くのが分かったのだろう。
阿賀松は笑う。


「そうだよなぁ、どうせなら気持ち良い方がいいもんな」


根本まで挿入されたそれが抜かれそうになったかと思えば思いっきり奥深くまで突っ込まれる。
そんな動作を繰り返し何度も何度も奥を抉られる度背筋が震え、薄く開いた口から白い息が溢れた。


「っ、んぅっ、ぁ、くぅ……っんん……ッ!」


喘ぎ声を押し殺し、耐えるように壁に手をつく。
冷えきった外気とは逆に熱を帯びる体内。
ピストンに合わせて内壁を這いずるゴムの感触に違和感を感じずにはいられない。
しかし、阿賀松の方はそうでもないようだ。
腰を打ち付け、いつもよりも乱暴な動きで奥を突かれる度に頭が真っ白になり、なにも考えられなくなる。


「はッ、ぁ、ひっ、せんぱッ、ぁ、あぁっ!」

「どうだ?ユウキ君、自分で選んだゴムは。ほら感想言ってみろよ、」

「っ、ぁっ、んんっ、いいです、きもちいいですぅ……ッ!」


激しさを増すピストンに耐えられずガクガクと股が震える。
快感で疼く結合部を突かれる度に蕩けるような甘い刺激が脳を溶かし、思考が儘ならなくなった俺はただそう問い掛けられるがまま譫言のように口走った。
そんな俺の言葉に背後で阿賀松が呆れたように笑う。


「ユウキ君ってほんと素直だよなぁ。時々まじで驚く」

「ん、ぁっ、しゅッ、っすみません、ごめんなさい、ごめんなさいぃ……っ!」


喋っている最中に突かれ不自然に声が上擦る。
薄暗い路地裏に響く俺の声にぎょっと驚いた阿賀松は「おい馬鹿、声でけぇよ」小さく舌打ちをし、そのまま俺のマフラーで口を塞いできた。
そしてそのマフラーを噛ませた阿賀松は「そんな謝られたら俺がレイプしてるみてぇだろ」と笑う。
まるで合意だとでも言うかのような阿賀松の言いぐさも気になったが、マフラーを噛まされているお陰で言葉を発せない。
もしこれがなかったとしてもまともに会話が出来る自信はないのだけれど。


「っん、ふ、くぅ、んん……ッ」

「ほらもっと腰振れよ、動かねえと暖まんねえだろっ」


大人しくなった俺を良いことに、言いながら阿賀松は丸出しになっていた人の尻を叩く。
その痛みにビクンと下腹部が別の生き物のように跳ね、四肢に力がこもった。
どうやら中の阿賀松のものを締め付けたようだ。
内壁を摩擦するように出入りする阿賀松の性器が体内で膨張するのがわかった。
そして、その感触が気に入ったようだ。
腰を打ち付けながら、二発三発四発と鷲掴んでいた臀部をひっ叩く。


「ひ、ぅ、んん゙ぅッ、っゔ、んっ、んんっ!」

「はは、お前ケツ叩かれるとすっげぇ中締まんのな」


「便利なケツだな」笑う阿賀松は言いながらパシンと思いっきり尻をひっ叩く。
骨張った阿賀松の大きな手の力は強く、手形がくっきり残りそうな勢いで乱暴に叩かれたそこはじんじんと熱く腫れ、わずかな刺激も大きく感じる程敏感になっていた。
目頭が熱くなり、涙が滲む。
その痛みを堪えようと力む度に無意識に阿賀松を喜ばせてしまうという悪循環に陥ってしまったようだ。
顔を歪め、奥歯を噛み締め、すがるように壁に寄りかかる俺の赤くなった尻を撫でる阿賀松。
その優しい指先の感触に触れられた臀部はじんと疼くように痺れる。
マフラーから口を離し、阿賀松の方を振り返ろうとしたときだった。
優しく撫でていた指はぎゅっと俺の尻をつね上げる。
走る鋭い痛みに思わず目を見開いた。


「っ、ぃッ、ぁ、やめ、痛いです、痛いです……っ!」


痛みに涙がぼろぼろ溢れ、後ろを振り返り慌てて止めさせようとするが構わず長い阿賀松の爪がみちみちと皮膚にめり込み、悲鳴を上げる。
そんな俺に対し慌ててやめるどころか力が入り中の異物を締め付けるそこを乱暴に抉じ開けるように挿入を続けた。


「は……ッ、こりゃいいな」


息を荒くした阿賀松は固唾を飲み、低く譫言のように呟く。
あまりの痛みに痛覚が麻痺してきた臀部だが五感の方は正常に機能しているようだ。
挿入された性器の脈が早くなったかと思えば、瞬間どくんと大きく脈を打つ。


「っは、ぅ……ッ!」


体内でゴムが膨らみ、違和感に腰が膨らむ。
射精したらしい。
いつも好きなだけ腹いっぱい出されていたせいだろうか。
こそばゆいようなもの寂しいような言葉にし難い感想を抱いたは俺だけではなかったようだ。


「ただ、中に出せねえのが勿体ねぇ」


そう阿賀松は笑った。

←前 次→
top