08
病院内四階、非常階段前。
足音から逃げるように志摩との約束場所へやってこれば志摩がいた。
「ちょっと齋藤、遅すぎ……って」
「…………」
「ご、ごめん、走ったんだけど……誰かが追い掛けてきてるみたいで……」
俺の後ろに立っている栫井を見た途端、露骨に不快そうな顔をする志摩だったが、そんなことで揉めている場合ではないということを察したのだろう。
「まあ、そんなことだろうと思ったよ。……じゃ、いらないオマケも着いてきたところだしさっさと出ていこうか」
「……どっちがオマケだろうな」
「はあぁ?なにい?なにか言ったぁあ?」
と思ったがそんなことなかった。
「し……志摩、早くしないと……」
今にも栫井に掴み掛かりそうな気配すらある志摩を必死に宥める。
志摩は諦めたように溜め息を吐いた。
「そうだね、文句は後のためにとっておくよ」
機械仕掛けの扉の前。志摩はカードキーを使う。
それに反応してゆっくりと開く扉の前、灘や会ったことのない志摩のお兄さんのことで頭がいっぱいになっていた。
「それじゃ、行こうか」
「後ろはなるべく見ないようにね」そんな俺を見越したかのように、志摩は笑った。
カードキーを使って非常階段に出てからはひたすら段差を降下するぐらいで、体力が死にかけたことを除いては恐ろしいほどすんなりと病院の裏口からその建物を脱出することは出来た。
正直裏口の前で阿賀松が待ち伏せていないかとずっとヒヤヒヤしていたのだがそんなこともなく、俺達は病院から少し離れた位置にある公園へと来ていた。
少し空気が冷たい深夜帯。久し振りにちゃんと外に出た気がする。
病院にいたときよりも前、転校してからというも何かしらバタバタしていたお陰でゆっくり外を見て回ることなんて出来なかった。
「齋藤、大丈夫?」
「……な……んとか……」
心臓が痛い。恐らく走ったからというだけではないはずだ。
そんな俺の横、先程から一言も発していない栫井が後ろを振り返る。
「……どうかした?」
「別に」
栫井の視線の先には、先程までいたはずの病院が佇んでいて。
もしかして、灘が気になるのだろうか。口では何も言わないが、栫井は灘と仲が良かったように思える。……いや、良かったのかどうかは怪しいがどちらにせよ同じ生徒会の仲間だ。心配なのだろう。
「灘君なら、大丈夫だよ、きっと」
「は?」
「え、いや、だから……」
「んなことどうでもいいんだよ。……だけど、静か過ぎる」
どうでもいいとバッサリと切られ、ぐうの音も出ない俺だったが……確かに。それは先程から俺も引っ掛かっていた。
だってあの阿賀松がすんなり出してくれるとは思わない。
たまたまいなかったのか、それとも敢えて俺達の脱走を見逃しているのか。
だとしたら、阿賀松のメリットは?……なんだろうか、すごく、嫌な予感がする。
「ま、出られたらどうでもいいよ」
そんな俺達とは対照的に、あくまで前向きな志摩。
いやこれは前向きと呼べるのかどうか怪しいが、そんな志摩に栫井は「はぁ」と大きく息を吐いた。
「なに、その溜め息」
「……相手にするのも馬鹿馬鹿しい」
そう、ふらりと歩き出す栫井。
「あっ、ちょっ……栫井!」
咄嗟にやつの裾を掴めば、渋々ながらも立ち止まってくれた栫井は「何」とこちらを睨むように振り返る。
「……どこに行くんだよ」
「どこでもいいだろ」
「まだ、約束守ってもらってないよ」
「…………」
押し黙る栫井に、「栫井」ともう一度その名前を呼んだとき。
面倒臭そうに髪を掻く栫井。
「……このまま彷徨いてるわけにはいかないだろ」
確かに、この時間帯なら校門も閉まっているだろうし学園にも寮にも戻れない。
だからと言ってホテルの部屋を借りるにしても今の俺たちは無一文に等しい。
野宿。脳裏に浮かぶその二文字にぞっと寒気を感じたとき、
「それなら、いい場所があるよ」
そう口を開いたのは志摩だった。
「こんなこともあろうかと用意してたんだよ、齋藤」
褒めて、と言わんばかりに笑い掛けてくる志摩に嫌な予感を薄々肌で感じつつ、俺達は志摩を先頭に歩き出すことになった。
「ちょっと、志摩、本当にここ……」
「大丈夫だって、ほら」
「で、でも」
ついてこいと志摩に言われるがままついてきたはいいが、どんどん路地の奥へと入り込んでいく志摩に不安にならずには居られなくて。けれど、もたもたしていると、
「おい、後ろ詰まってんだけど」
「わっ、ご、ごめん……」
後ろにいる栫井から飛んでくる文句に慌てて俺は前へと進む。
どうやらこのままついていくしかないようだ。
ネオンが眩しい大通りから外れた裏路地。
こんな時間だというのに俺達の他にも溜まっている人間がいて、向けられる視線に居心地の悪さを覚えながらもそれを無視して志摩についていく。
やがて、志摩はとある建物の前で止まった。看板は出ていない。けれど、そこが飲食店だというのは漂う香ばしい肉の薫りでわかった。
まさかここだというのか。
躊躇なく扉を開いた志摩はそのまま「こんにちはー」と中へ入っていく。
それに続いて入店した俺は、目の前に広がる景色、いや、そこにいた人物に目を見張った。
「あらぁ、亮太ちゃん遅かったじゃないの〜!ずっと待ってたんだから〜!」
「え……」
カウンター席の前、そこを陣取る推定2メートルはあるであろうおっさん、いや、おば……いやいやいや、どっちだ。わからない。けど声は男だし、でも、見た目は女の格好してるし……。とにかく俺の理解の範疇を越えたその店主に俺は言葉を失う。それは栫井も同じだった。
ただ一人、志摩は平然としていて。
「ああ、ごめん。こいつら遅くてさ」
「あら、そっちの黒髪の子が言ってた子?退院おめでとう!大変だったわね〜」
「いやそいつはオマケ。こいつが俺の友達」
そういきなり肩を組まれ、驚く。
友達、そんな単語に一抹のこそばゆさを覚えたが、それも店主の「あーらあらあら!」というダミ声で吹き飛んでしまう。
「まあ、そうだったのー!でも二人とも可愛いじゃな〜い」
そう、店主に見詰められた栫井の顔色は心なしか青い。
その視線から逃げるように栫井は志摩に掴み掛かる。
「おい、お前どういうつもりだよ……っ」
「いいから黙ってて」
「はあ?」
そう、栫井を振り払った志摩は店主に振り返る。
「それじゃ、二階の部屋一晩借りるね」
「いいわよ、どうせ空いてんだから。どんどん騒いじゃってちょうだい」
「ありがとう、姉さん」
姉さん?!
いや、驚くのはそこではない。けれど、二階ってことはまさかやっぱりここに泊まるつもりなのか。
最早顔色が土色になってる栫井に構わず、店内の奥へと歩いていく志摩。
迷子にならないようにその後ろを追いかけていたら、「あ」と思い出したように志摩は立ち止まる。そして、カウンターの方を覗き込み、笑った。
「今回の部屋代、方人さんにツケといてね」
◆ ◆ ◆
「しっ、志摩、志摩」
「ちょっと、齋藤焦りすぎ」
「ど、し、知り合い……?」
「まあ、そうだね。そんな感じ」
「バイトしてたんだよね、ここで、暫くの間さ。それで、帰りたくない時とかは泊めてもらってね」と笑う志摩はどこか懐かしそうで。
志摩がバイト。バイト自体無縁の生活を送っていた俺からしてみれば志摩の話はなんか別の世界のことみたいで。
というか、未成年の飲み屋のバイトは引っ掛からないのかと気になったが聞かない方がいい気がしたので敢えて触れないことにする。けれど。
「…………」
「齋藤?」
「なんか、未知の世界……」
先程の店主といい、こうしてこんな時間帯に彷徨くなんて考えたこともなかったから、余計。
いつもとは違う環境に、そんなこと考えてる場合ではないとわかっていたけど、それでも少しだけ、わくわくしている自分がいた。そんな俺に、志摩は「だろうね」と笑う。
二階にはいくつか座敷の個室があるようで、再奥の部屋、そこに俺たちは上がる。
充満する畳の薫り、なんとなく旅館に泊りに来たような錯覚に陥るが此処は料亭だ。
「マサトって……縁方人か?」
靴を脱ぎ、畳の上に上がった時。ずっと黙っていた栫井がぽつりと呟いた。
「聞いてどうすんの?」
「……」
「ま、そうだけどね」
なんでわざわざ挑発的な態度を取るのだろうか。
見てるこっちがヒヤヒヤしてしまう。
けれど、店主さんも縁のことを知っていたみたいだったが、もしかして縁もここでバイトしていたということだろうか。
だとしたら縁経由で阿賀松に居場所を知られないかと心配になったが、考えれば考えるほど心配事は増えるばかりだ。このままでは身が保たない。そう考えた俺はせめて数時間だけでも、今だけはゆっくり休むことにする。
「志摩って、この辺に住んでるの?」
「何?俺に興味出てきたの?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど……」
「……まあ、住んでるっていうより遊ぶ場所がこの辺だったってくらいだけどね」
「そうなんだ」
それは、初めて知った。
てっきり俺みたいに他県から寮へと移り込んだ奴が多いのだと聞いていたから、きっと志摩もそうだと思っていた。通りでここの辺りに詳しいはずだ。
「それより、一晩借りるってなんだよ。寝る場所探しに来たんじゃないのかよ」
「そうだけど?」
「寝る場所がねえじゃねえか」
布団も、と唇を尖らせる栫井の指摘に俺はハッとする。
言われてみれば布団がない。ここがそういう店ではないと分かっていたものの、当たり前の事実に狼狽えだす俺に志摩は不思議そうに首を傾げた。
「何言ってんの?あるじゃん、いっぱい」
「は?」
「ほら」
そう、志摩が指差したのは座敷だった。
今度こそ俺と栫井は戦慄する。
「え?ま、まさか……ここに……」
「冗談じゃねえ、誰が踏んだかわかんねえ場所で寝れるかよ」
「ちょっと、何二人とも。まさか雑魚寝出来ないとか馬鹿みたいなこと言わないよね?」
「ざ、雑魚寝……!」
これが噂の。
だけど、ずっと柔らかいシーツの上で眠ってきていた俺にとって硬い座敷の上は少し抵抗があった。
どうやらそれは栫井も同じのようだ。
「そんなに嫌なら出ていってもいいんだよ。特にお前だよ、俺的には寧ろ消えてもらった方が嬉しいんだけど」
そう、栫井を指差す志摩。一気に周囲の空気が凍り付くのがわかった。
殴り合いにならないかヒヤヒヤしたが、そんな俺の心配をよそに栫井はふらりと出口に向かって歩き出す。
「あっ、栫井……」
まさか、本気で出ていくつもりではないだろうな。
不安になって慌てて呼び止めた時、栫井は座敷の上に座り込む。
そして、
「ここから入ってくんなよ、俺の場所だから」
子供か。
「あっそ。じゃ、ここから全部俺ね。入ったら部屋から追い出すから」
「お前の部屋じゃねえだろカス」
「あんたの部屋でもないよね」
「お、落ち着いて、二人とも」
というかその法則だと俺が寝る場所がないんだけど。
なんて一人あたふたしていると、どうやら栫井の陣地に足を踏み込んでしまったようだ。
「おい、そこ踏むなって言ってんだろ」
「あっ、ご、ごめん」
「あーあ、そこ俺の陣地って言ったよね」
「えぇっ」
いつの間に。というか徐々に志摩の陣地が拡大していっているのだけどどういう摂理だ。
「ほら、罰だよ。齋藤はこっちで寝ること」
「いや、いいよ、俺入り口のところ行くから……」
「残念、そこも俺の陣地だから」
どうしたらそうなるんだ。無茶苦茶過ぎる。
最早もうどこが陣地とか何も考えなく適当に言ってるのではないのかと勘繰りたくなるほどのルール無用に狼狽えてる矢先、「ほら」と思いっきり腕を引っ張られる。
「ちょっと、志摩……っ」
抱き締められそうになり、流石に栫井がいる前でそんなことをするわけにはいかない。
そう思って慌てて志摩から逃れようとすればスリッパが飛んできた。
「うるせえな、息すんじゃねえよ!寝れねえだろ!」
もうどうしろと。死ねと言っているのかこれは。空を飛ぶしかないのか。
と、一晩だけでも、せめてゆっくり休むために揉め事のないようにと飛んでくる罵詈雑言無茶苦茶を必死に受け止めていたのだが残念ながら志摩の方の煽り耐性は皆無だったことを思い出す。
そして、案の定。
「はあ?お前の心臓の音のがうるせえんだけど?」
「あの……」
「じゃあ何も聞こえないようにしてやるよ」
「二人とも……」
「お前からな」
「落ち着い……」
「「あんたは引っ込んでろ!」」
「……はい」
結局、ケーキ持ってきたお姉さんの仲裁により引き分けということになったがお通夜のような空気の中全員別の方角を見ながら食べたケーキは味がしなかった。
空腹も満たしたところで眠気がやってきたのだろう。床の上、丸まって眠る志摩は爆睡している。
無理もない、ここ数日俺に付き合ってもらったせいでろくに休めてないはずだ。
志摩の許可を得て志摩の陣地で休んでいた俺だけど、そんな志摩のイビキで眠れなかった。
それでも起こす気にもなれないし、不思議と眠くない。寧ろ、目が冴えきっている。
これから自分がすることを考えると、怖くて震えそうだった。それ以上に、それほどまでのことをするという事実に酷く、興奮した。
それでも、少しだけ身体を休めた方がいいだろう。そう思って小さく寝返りを打った時、奥の襖が開く音が聞こえる。
どうやら、栫井が部屋を出ていったようだ。どこに行ったのだろうか。
もしやこのままどこかに行きやしないかと不安になって、なるべく志摩を起こさないよう気をつけながらも俺は栫井の後を追い掛け、その個室を後にする。
早朝。
既に閉店時間を迎えた料亭内は静まり返っている。
複数の襖が並ぶ通路を抜けた時、不意に煙が鼻腔を掠める。どこからか吹き込んでくる生温い風。それを追い掛けるように歩いていると、すぐに目的のそいつを見付けることは出来た。
「か、こい」
「……なに?」
通路の突き当り、開いた小窓の側に立っていた栫井はゆっくりとこちらを振り返る。
その指が挟んでいた煙草に、少しだけ、緊張する。
「いや、出ていくの見えたから……何してるのかと思って」
「逃げるのかと思った?」
「そういうわけじゃないけど……」
「じゃ、帰れよ」
そう、深く息を吐く栫井。溢れ出した煙がそのまま窓の外へ逃げていく。
栫井も、疲れているのだろう。わかっていたけど、それでもやっぱり、なんでだろうか。放っておくことができなくて。
「俺も、一緒にいていいかな」
「その、邪魔しないから」と慌てて付け足せば、少しだけ栫井は嫌そうに目を細めて、すぐにそっぽ向いた。
「……もう十分してんだろ」
「え?」
「いちいち聞くなよ。……勝手にしろって言ってんだよ」
「あ、ありがとう」
「……」
取り敢えず、隣に行こうとすれば栫井は煙草の火を揉み消す。
わざわざ消すことなかったのに、と思ったがやっぱり俺がいると邪魔なのかもしれない。
「……あの」
「朝になったら、あっちに戻る気なんだろ」
口を開きかけた時、栫井の方から話し掛けられて少し驚いた。
あっち、というのは学園のことなのだろう。俺は頷き返す。
「風紀委員に八木っていう3年がいる。そいつが、阿賀松伊織の後輩だよ」
「え?」
「他にもいるけど、そいつに聞いた方が一番手っ取り早い。……あんたに話すかどうかは知らねえけど、あとは自分でしろ」
まさかこのタイミングで教えてくれるとは思ってもいなくて、忘れてしまわないように慌てて俺は「八木」と口の中で呟いた。
聞いたことのない名前だが、それだけでも十分な手がかりになる。
「ありがとう、栫井」
「……」
「あ、あの……どこに行くの?」
「約束は守った。……後は俺の勝手だろ」
確かに、そうだ。約束はここまでだ。
これ以上踏み込めば、嫌がられる。頭では理解できていたけれど、それでも栫井を黙って見送ることが出来なかった。
「栫井」
気が付けば、俺は栫井の腕を掴んでいた。
びくりとその腕が緊張する。自分の掴んだ腕が怪我している方の腕だということを思い出し、慌てて俺は手を離した。
「ごめん……でも、その……一緒に来てくれないの……?」
「……なんで」
「なんでって、言われても」
一人にできない。
満身創痍の栫井を見ていたら、不安になるのだ。
それでも、そんなこと言ってしまえば余計なお世話だと怒られるだろう。
「……」
「その、俺は……」
言葉を探すが、見当たらない。
口籠っていると、不意に栫井はの指が目の前に伸びてきた。
あ、と思った時には両頬を鷲掴まれていて、次に瞬きをしたときには栫井の目がすぐそこにあった。
「っ、ふ、っぅ……っ!」
強引に口を塞がれる。噛み付くようなキスに驚いて、全身が萎縮する。
どうして、という困惑もあったがそれ以上に強引なそれが縋り付かているみたいで、錯覚なのだろう。分かっていたが、触れてくる冷たい栫井の指を払うことは出来なくて。
「ん、ん……ぅ……」
唇に食い込む歯。少しでも力を入れれば噛み千切られてしまいそうで、怖かった。
けれど、それでも、震えそうになる身体を落ち着かせるようにぎゅっと自分の服を掴めば、抵抗しない俺に栫井の眉間が寄る。そして、次の瞬間、突き飛ばすように身体を引き剥がされる。
「うぜぇんだよ、お前……っ」
壁にぶつかりそうになったが、なんとか持ち直す。
栫井の行動に驚いて顔を上げれば、忌々しそうに顔を歪める栫井がこちらを見下ろしていた。
「ちょっと優しくしてやっただけで勘違いしてんじゃねーよ」
見て分かるくらい赤くなった栫井に、今度はこっちが狼狽える番で。
どうして栫井が照れているのか、意味が分からなくてあたふたしていると栫井は俺から逃げるように歩き出す。
「か、こい……」
「着いてくんなよっ」
「……!」
「あんたは、さっさと部屋に戻れよ」
「あいつうぜえから」と、吐き捨てるなり栫井は通路を歩いてどこかへ行ってしまう。
追い掛けようと思うが、俺も俺でかなり動揺していたようだ。
栫井の背中が見えなくなった瞬間、緊張が解けたように腰が抜けてしまった。
どうすればいいっていうんだ。真っ赤になった栫井を思い出し、こちらまで顔面が熱くなってしまう。
このままでは戻るに戻れない。俺は顔面の熱を取るため暫く風を浴びていた。
そして、気が付けばすでに朝になっていた。
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