天国か地獄


 02

 いつもと変わらない元の志摩に戻ったことに安堵するも束の間、いつまでも呑気に感傷に浸ってる暇は俺にはない。

「あの、志摩……聞きたいことがあるんだけど」
「聞きたいこと?」
「会長たちのこと……阿佐美にも聞いたけど、全部は教えてくれなくて。今、学校はどうなってるんだ?」
「……そうだね、俺もあまり向こうには戻ってないから詳しいことはわからないけど、取り敢えず芳川知憲は生徒会長辞退を取り消した。俺に脅されたって言ってね」

 あの時、会長が風紀を連れて現れた時、そんな気はしていた。
 けれど、やはりそうだったのか。溜め息混じり、当の志摩も想定内だったのだろう。その反応は特に悔しそうなわけでもない。

「でも、ムカつくな。自分だけ綺麗な儘なんだからさ」
「……志摩」
「わかってるよ、これくらいのこと考えてたからね。あの会長さんならこうするだろうって」

 深い溜め息を吐く志摩。
 そういえば、あの時風紀委員に取り押さえられていた志摩は何故阿賀松の元にいたのだろうか。
 あまり思い出したくのない話題だが、旨に引っかかった小骨を見過ごすことは出来なかった。

「あの、志摩……どうしてあの時、阿賀松先輩の部屋に?」

 思い切って尋ねてみる。瞬間、ぴしりと志摩の周囲の空気が凍り付くようで。

「……なんで?」

 志摩の笑みが引き攣る。頬を硬直させた志摩は、横目で俺を見た。
 触れられたくない話題というのはすぐにわかった。けれど、

「お願いだ、志摩……もしかしたら、会長を止めることが出来るかもしれないんだ」
「会長を?……齋藤、何考えてるの?」

 怪訝そうに眉を寄せる志摩。言ったら呆れられることは間違いないだろう。お人好し、とまた笑われるかもしれない。それでもやっぱり、俺の決心は揺るがない。
 今回、栫井や志摩を巻き込んでしまって気付いた。
 目の前で誰かが傷付けられるのは耐えられない。その理由に自分が絡んでいるのなら、尚更。

「俺は……会長と阿賀松先輩を止める」
「なんだって?」
「二人がしてきたことに対して、ちゃんと処分を受けてもらう」

 必死に考えた結果、どちらか一方を罰したところで何も変わらない。
 それどころか均等が取れず、もう一方が暴走する。
 報復の連鎖で誰かが巻き込まれるのは見たくない。そう願った俺が行き着いた結論がそれだった。

「……」
「だから、教えてほしいんだ、会長のこと、先輩のこと。何でもいいから……」
「……」
「……志摩?」

 何も答えない志摩に、やはり呆れてしまっただろうかと恐る恐る顔を上げた時だった。
「ふっ」と、小さく志摩が噴き出す。

「ふ、ははっ!……いきなり真面目な顔をするから何を言い出すかと思えば……本当、まさか齋藤がそんなこと言うなんてね」
「し、志摩……?」
「ああ……ごめんごめん、少しビックリしてね。あぁ……面白い」

 ひとしきり笑った志摩はそう目尻の涙を拭う。
 こちらとしては必死に勇気振り絞った末の頼みを笑われ居た堪れないことこの上ないのだが、いまだ志摩は笑みを堪えきれないようで。

「し、志摩……俺は本気で……」
「……うん、わかってるよ。だから笑ってるんだよ」

「だって、アレほど平和ボケしていた齋藤が俺と同じこと考えてるんだからさ」そう、にやりと口角持ち上げる志摩。
 その笑みは先程までの愛想笑いとは打って変わって冷ややかなもので、細められた目と視線がぶつかった瞬間、ぞくりと背筋に寒気が走る。

「……ってことは、その」
「……ああ、俺が阿賀松のところにいた理由だったね。俺も気付いたときはあの部屋だったから経緯はわからないけど、風紀委員には会長のやり方をよく思っていない委員も数人いるっていうのを聞いたことある。その数人が会長嫌いの阿賀松と組んでても不思議ではないからね」
「その会長嫌いの人が、志摩を先輩に受け渡したってこと……?」
「やめてよ、人をお荷物みたいに言うの。……まあ、そういうことになるんだけどね」

 生徒会側でいながら、阿賀松と繋がっている人間。
 それは、使えるのではないだろうか。

「……へえー」

 ふと、考え込んでいると志摩がにやにやと笑っていることに気付く。
 その目がなんとなく不愉快で、「なに?」と声を掛ければ志摩は「いや別に」と喉を鳴らす。

「齋藤でもそんな顔をするだって思ってさ」

 どんな顔をしていたというのか。楽しげな志摩はそれ以上何も言わなかったが、今は志摩と馴れ合っている場合ではない。

「その風紀委員の人、誰だかわかる?」
「さぁ?流石にそこまではわからないな」
「……そう」

 せっかくいい手掛かりになると思ったのだが、志摩でも目星がつかないとすると道のりが一気に遠くなってしまう。
 項垂れる俺を他所に、ふとなにかを思い付いたようだ。「ああ、でも」と志摩は声を上げた。

「知ってるだろうってやつならいるね」
「本当に?」
「齋藤の傍にいるじゃないか、生徒会にも阿賀松たちにも通じてるやつが一人」

「本当は勧めたくないけど、あいつらを潰すためだからね」と続ける志摩に、俺は「あ」と声を漏らす。
 栫井平佑。少なからず風紀委員とも接触あるであろう奴なら何か知っているかもしれない。
 問題は、素直に教えてくれるかどうかだが。

「俺があそこで目を覚ました時、栫井もいたんだ」
「栫井が?どうして?」
「さあ?目障りだったからじゃない?だけど、齋藤が来る前にはどこかへ引き摺られていたみたいだったね」

 そう興味無さそうに続ける志摩。
 先程目を覚ましたとき、なぜ栫井が病室にいるのかわからなかった。
 だけど保護されたと考えれば、まあ、納得出来る。
 会長の暴行の被害者という立場である栫井の存在はやはり阿賀松にとって利用価値が高いのだろう。
 だけど、栫井が阿賀松たちと繋がっているということがやはり不可解で。
 栫井は会長を庇おうとしている。その裏で、会長を邪魔する阿賀松たちと繋がっているのだ。
 栫井と阿賀松、二人に共通するものはなんなのか。
 考えてみるが、ぼんやりとしたそれがハッキリとした形で浮かぶことはなかった。

「あの、栫井と阿賀松先輩は仲がいいのか?」
「良さそうに見える?」
「いや……でも、だとするとどうして栫井は先輩に協力するのか……それがわからなくて」
「協力だって?」

 目を見張る志摩は知らないのかもしれない。
 小さく頷き返し、俺は安久に殴られたあの日のこと、文化祭前日の盗聴器のことを話す。

「……栫井が阿賀松に……」

 難しい顔をして押し黙る志摩は何かを考えているようだ。
 声を掛けるべきか迷ったが、それよりも先に志摩は俺を振り返る。

「弱味を握られているとか、そういうこと?」
「……いや、わからないけど、いくら弱味を握られていても栫井は会長を陥れるとは思えない」

 盗聴器のことに関しては、あの時会長が盗聴器を見付けることが出来なければ最悪処分されている可能性だってあったわけだ。
 会長を庇おうとしている栫井が他人から強要された程度で言う事を聞くとは思えない。
 もしそうだとして、栫井を動かす程の弱味とはなんなのか、見当すらつかなくて。

「……ほんと、考えれば考えるほど意味がわからないやつだな。でも、まさか栫井がね」
「あぁ……」
「ま、そのことも含め聞いてみたらいいんじゃない?」
「聞くって、本人に?」
「勿論。でもま、そのまま聞くってわけじゃないけどね。少し……変化球でいくってのもいいんじゃないかな、あのへそ曲がりには」

 そう笑う志摩はどこまでも愉しそうで。
 まさかまた刃物突き付けて脅すなんて真似しないだろうな。
 ヒヤヒヤする反面、やる気になった志摩に一抹の頼もしさを覚えてしまう辺り俺も大概毒されているということか。

 ◆ ◆ ◆

「ぜ……絶対無理!無理だってば!」
「無理?どうしてそう決め付けるわけ?」
「決め付けるとかじゃなくて、だって、そんなこと……出来ないから……っ!」
「齋藤、さっきの決意はどうしたの?二人を潰したいって言ってたよねぇ?」
「お、俺は、別に潰したいんじゃなくて止め……」
「どっちにも変わりないよ。どちらにせよ、栫井の手が必要なんだからさ」

 いけしゃあしゃあとよく言えたものだ。
 目の前の志摩に協力を要請してしまったことを早速後悔し始めたが、既に手遅れな状態であるのも事実で。

「で、でも……そんな、こと……俺……」
「大丈夫だよ。栫井の手癖の悪さはわりかし有名だからさ、齋藤でも興味くらいは惹けるよ」

 まるで他人事のように、実際他人事だからそんなことを言えるのだろう、志摩は。
 だって、そんな、栫井に色仕掛けだなんて。
 正直、栫井の手の速さは知っている。現に、俺は栫井と……。そこまで思い出して、顔が熱くなる。

「……や、やっぱりやめよう、別に他の方法だって探せば……」
「あるだろうね。だけど、これが一番手っ取り早いんだよね。あのむっつり野郎のことだよ、少し優しくしたら絶対ボロ出すって」
「そんな、志摩じゃあるまいし……」
「齋藤、何か言った?」

 小声で呟いたはずなのだがどうやら志摩の耳に入ってしまっていたようだ。慌てて「なんでもない」とうつむく俺。
 やはり、それでも色仕掛けは無理だ。というかそもそも色仕掛けってなんだ。志摩はただ面白がっているだけではないのか、もしかしなくても。

「あの、志摩、……悪いけど今は冗談に付き合ってる暇は……」
「冗談?齋藤は冗談だっていうの?俺はこんなに真剣に考えてるのに」
「だって無茶苦茶すぎるよ。……第一、色仕掛けなんてわかんないって、俺」
「なら仕方ないね、俺がやるよ」

 そう言って腕まくりをする志摩。さらりととんでもないこと言い出す志摩に思わず「えっ?!」と声が裏返ってしまう。

「齋藤が嫌がるからと思ってやめようかと思ったけど、まあ栫井くらいなら骨の一本や二本……」
「だっ、ダメだって!何言ってるんだよ!」
「だって齋藤は嫌だって言うし」
「だからってそんなこと……」

 このままでは埓があかない。
 志摩に任せておけば、なにが起きるかわからない。ただでさえ栫井は怪我人だ、志摩に任せるくらいなら俺が穏便に済ませるしかない。

「わ……わかった、やるよ、やればいいんだろ」

 色仕掛けなんてしなくても、栫井から聞き出してやる。
 実力行使しなくても、解決することは出来るはずだ。
 早速私怨に走る志摩を引き止めるため、俺は栫井と接触することに決める。

「ま、俺もちゃんと見張ってるし本当になにかありそうだったらすぐ止めるよ」
「あ、当たり前だよ……!」

 笑う志摩になんだか酷く疲れてきた。
 だけど、正直、安心した。いつもと変わらない志摩の態度だが、だからこそか、いつもの厭味ったらしい言葉も皮肉も居心地よく感じるのは恐らく志摩から刺が抜け落ちたからか。
 そんなこと考えていると、不意に病室の扉を叩かれる。
 瞬間、ぴたりと志摩の動きが停まった。

『あの、ゆうき君……ご飯、用意したんだけど入っていいかな』

 扉越しに聞こえてくる控えめな声は、阿佐美だ。
「はい」と答えれば、すぐに扉が開きトレーを手にした阿佐美が病室に入ってくる。

「暫く何も口にしてないからお腹減ったかなって思ったんだけど、無理に食べなくてもいいよ」
「いや、ありがとう。……そろそろ減ってきてたから助かった」
「ならよかった。……あ、ここ、置いてるね」

 ベッドに付属してる可動式のテーブルの上、阿佐美はトレーを乗せる。
 本当はあまり食欲はないが、飲み物くらいは口にしておいた方がいいだろう。志摩と話しすぎたせいか、口の中がカラカラだ。

「ふぅーん、齋藤には阿佐美がわざわざ料理を届けてくれるんだね」

 トレーの上、水の注がれたグラスを手にしたときだ。
 並べられた病院食を横目に、志摩はそんなことを言い出した。
 先程までの俺に対する態度とは打って変わって刺々しいその言葉に、阿佐美がぴくりと反応する。

「……そうだけど、それが?」
「なんかおかしくない?他の連中のところは病院の人間が運んでるんでしょ?なんで齋藤だけ阿佐美が直接運んでくるわけ?」

 また始まった。悪意しか感じない質問攻めについグラスを落としそうになるが、確かに、志摩の指摘する意味もわかる。

「何がいいたいわけ?」
「じゃあ単刀直入に聞かせてもらうけどさ、もしかしてこの料理、なにか細工とかしてないよね」

 単刀直入すぎる。流石の阿佐美も疑われて面白くないのだろう。その眉間に皺が寄る。
 ……志摩が言う意味もわかる。けれど、阿佐美がそういうやつではないと知っている。
 しかし、阿佐美がしてないとしても、他の人間は?
 そう考えると手に持ったグラスに口を付けることを躊躇わずにはいられなくて。

「……ゆうき君」

 悲しそうな阿佐美の声に胸が痛くなったが、芳川会長と一緒にいたからか。異物が混入されてる可能性を指摘されれば、簡単に口にすることは出来なかった。

「……わかった、なら俺が毒見するよ」
「その必要はないよ。俺が齋藤のためにご飯、用意してあげるから。阿佐美はそれ持って帰ってくれる?」
「ちょ……志摩……っ」
「ああ、齋藤。そのグラスにも口付けちゃ駄目だよ」

「喉乾いたなら後で俺があげるから」と薄く笑う志摩に阿佐美の表情が強張る。
 せめて、他にも言い方があるだろうに。
 阿佐美が阿賀松側の人間である以上、フォローするにも出来なくて。

「……」
「し、詩織……」

 無言でトレーを手にする阿佐美に、なんだかもう申し訳なさで口籠っていると、目があった阿佐美は笑う。

「いや、気にしなくていいよ。……疑われるのも無理はないからね」

 そう阿佐美は笑うが、確かにその横顔はショックを受けていて。
 掛ける言葉が見当たらないまま、結局最後まで俺は阿佐美の顔を見ることができなかった。

「志摩っ」
「なに?」
「なに?じゃないだろ……!さっきのは、流石に言いすぎだってば……っ」

 阿佐美がいなくなった病室内、再度二人きりになったのを確認し、俺は志摩を見上げた。
 当の志摩はというと何故そんなに俺が怒ってるのか分からないといった表情で。

「言い過ぎも何も……事実じゃんか」
「確かにそうかもしれないけど、だからって阿佐美にあんなこと……」
「あのね、齋藤。阿賀松を潰すってことは阿佐美も潰すってことなんだよ」

 唐突に出てきた阿賀松の名前に「え?」と目を見張る。

「どうして、阿佐美が……関係ないだろ」
「あるね、大いに。阿佐美と阿賀松が血が繋がってるってことは知ってる?」
「……知ってる」
「じゃあ、双子だってことは?」
「知って……えっ?!」

 頷きかけて、志摩の口から出てきた予期せぬ単語に思わず声を上げてしまった。

「ちょ、ちょっと待って……兄弟だろ?」
「ああ、やっぱり知らないんだ。あの二人双子だよ」
「いや、いやいやいや、だって、阿佐美二年で阿賀松三年だし……」
「そういう設定なんだって。実際は同い年だよ、あの二人」

 頭がこんがらがってきた。
 考えれば考えるほど脳味噌が掻き混ぜられるように思考が儘ならなくて。だって、阿佐美はいつも俺と一緒にいたし、クラスだって同じで……。

「もっというなら、阿佐美詩織なんて生徒、存在しないしね」
「…………」
「あれ?齋藤?どうしたの?」
「からかってる、わけじゃないよね」
「うん」
「じゃあ、証拠は?どうしてそんなことをする必要があるんだ?……どうして志摩がそんなこと知ってるんだよ」
「はは、すごい質問攻めだね」

 笑って茶化そうとするやつに、「志摩」と咎めるようにその名前を呼べば、「わかってるよ」と志摩は肩を竦めた。

「俺は聞いたんだよ。本当かどうかは知らないけどね」
「聞いたって?」
「兄貴」
「……っ!」

 何気なく出たその固有名詞に、全身が緊張する。
 志摩の、お兄さん。元生徒会長で、芳川会長に嵌められ意識不明になっていたという、そのお兄さんが。

「阿賀松が風紀委員やってる時かな、あいつら兄弟とうちの兄貴は仲が良かったんだよ。俺が中三の時かな、長期休暇の度にうちんちに来てさ本当邪魔だった」
「ふ、風紀……?」
「阿賀松がああいう性格だから風紀なんてやるわけ無いじゃん?だからその代わりに阿賀松のフリした阿佐美がよく働いてたみたいだね。あいつ、そういうのは真面目だから兄貴に気に入られててさ、『お前生徒会長に向いてるぞ』なんて言ってるもんだから案の定、生徒会長狙ってた芳川の琴線に触れたんだろうね」
「っ、まさか」
「そうだね。それで、阿佐美は大怪我したよ。詳しくは知らないけど、定期的に病院に行ってるみたいだし完治してないんじゃない?」
「……ッ!……ッ!」

 言葉が、出なかった。阿佐美が自分よりも年上だということとかそんなことよりも、既に当事者であることに。一言もそんなことを言わなかったから。
 だけど、言われみれば阿佐美はたまに忽然と姿を消していた。もしかして、それが志摩の言う通院だとしたら。

「以前よりも無理な運動が出来なくなった阿佐美でも利用したかったんだろうね、阿賀松はわざわざ自分の下に阿佐美詩織という架空の特待生枠を用意したんだから」
「……自分が卒業した後も、会長を見張るために?」
「どうだろう?俺は阿賀松じゃないから知らないけどね」
「…………」

 頭の中が、まだぐるぐると回っている。
 俄信じられるようなものではないが、クラスメートたちは、登校してきた阿佐美を初めて見たと言っていた。
 その時は嘘だろうと思っていたが、今となればその理由もわかる。阿佐美が頑なに顔を隠そうとした理由も。
 思ってた以上に根が深い。全ての元凶に芳川会長が存在していて、そのことが酷く悲しくなると同時に、会長という人が一層遠く感じて。

「阿賀松と阿佐美は二人で一人だ。阿賀松単体でも質が悪いのは事実だけど、それを裏で手繰っているのは阿佐美だからね。齋藤も気をつけた方がいい。というかそうしてもらわないと困るんだけどね」
「……わかった」

 どこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからない。
 ただ、やはり俺には情報が少なすぎる。そのことだけは身に沁みて理解することは出来たが、知ってしまえばしまうほどその深淵に体が深くのめり込んでいくのが自分でもわかった。
 後戻りは出来ない。
 逃げ道も、ない。

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