ホワイトデー小説






『ホワイトデーは期待していてくれ』

そんな、女の子なら誰でもときめくであろう台詞に、男のオレがときめいてしまったのが約1ヶ月前のこと。

そして今日、3月14日ホワイトデーに事件は起こった。

……事件??
うん、やっぱ"事件"であってる。

だって。







「やぁ、光樹。」






誠凛高校の校門前で。
優雅に微笑む人物が、オレに向かってそう言って。
近付いてくる人物の綺麗な顔と圧倒されるオーラに、隣にいた河原と福田はすでに後退り始めていた。

……いるはずのない赤司が、ここにいる、それはもう、

大事件だよね…
















〜ホワイトデー小説:赤降〜











「あ、赤司?」
「…ふふ、驚いてるって顔だね。」
「そっ…そりゃ、驚くよっ…、て、本物…?」
「偽物に見える?」



ふわりと微笑む人間離れした綺麗な顔が"本物"だと証明している。

びっくりだ。
メールも何もなかった。
もはや『ドッキリ大成功!』レベルだ。

いきなりいるはずのない赤司の姿を見ると、思うように身体が動かなくなるもんなんだな…、なんて思いながら、ふと両サイドの違和感に気付く。


……あれ?
河原と福田がいない?!!!


さっきまでオレの隣にいた2人がいない。
慌ててぐりんっと辺りを見回すと、遥か遠くの方に「なんか知らねーけど、とりあえず俺らは帰る!また明日な…!!」とジェスチャーで訴えている2人の姿が目に入った。
すでにあんなに遠く離れたところにいるという事が、赤司を発見するなり早々に逃げ出していたということを物語っていた。

まだあの二人にとって、『赤司征十郎』は恐怖に近い存在なのだ。

…でも、
でも、オレにとっては……



会いたくてもなかなか会えない。
会いたい、って言うのも遠慮してしまう。
でもずっと、会いたいって思ってる。
だから……、


オレの目の前に立つ赤司に、今度はオレから近付いた。
周りからは見えないように配慮しながら、赤司の腕……というか袖のところに手を伸ばす。
そのまま、ぎゅっと握ってみた。




「―――…光…樹?」
「………びっくりしたよ…もう。」
「…。(いや…僕が今まさに驚いているんだが…)」
「……、…………でも、…………………会えて、嬉しい。」





もうずっと、すっごく会いたかったからなのかな。
自分でも驚いてしまうくらい普通に、素直に、そう言っちゃってた。

ここが学校じゃなかったら…もしかして抱き着いちゃってたかもしれない。

赤司は知らないけど、
会えない時間が長すぎるとオレだって不安になったりするし、
……なにより、……好きって気持ちは、どんどん募る一方なんだからな。

告白してくれたのは赤司の方だけど(これ絶対誰も信じてくれないだろうけどさ)…今だと絶対、オレの方が赤司のこと好きになってると思う…。

綺麗でかっこよくて、
頭よくて何でもこなせて、
……なにより、バスケが上手くて、バスケをしている赤司は本当に…なんていうか、そう、『素敵』なんだ。

その『素敵な赤司』をちらりと見つめると、綺麗な顔は困惑一色になっていた。




「…あっ…!ご、ごめん…!!」
「…いや…構わないが…」




困惑一色の顔には少しだけ赤みも帯びていて、オレはその様子に赤司以上に顔面を真っ赤にさせてしまった。
(は、恥ずかしいこと、言ってしまったし…やってしまった…)

そんなもどかしい雰囲気をごまかすようにオレの口は動いた。




「でも…ほんと突然どうしたの…?」
「バレンタインのお返しをしにきたんだよ。」
「……!!!」
「渡したい物もあるし…何処か二人きりになれる所があるといいんだが…」
「あ、えっと、じゃあ…、とりあえずウチ来る…??」





そんなに遠くないよ?と提案してみると、赤司は何故か驚き顔になってしまった。

ちょうど今日は両親が親戚の結婚式で出掛けてて、夜遅くまでは帰ってこないから遠慮なんかいらないよって付け加えたら(まぁ天下の赤司征十郎が遠慮するような家じゃないんだけどね…)



「じゃあ…お言葉に甘えてもいいかな…」



と、赤司らしくない謙虚な言葉で返されてしまった。






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