おまけ
とまぁ…昨日散々な目に遭ったオレだけど、それでも翌日の朝練に真面目に参加するところを誰か褒めたたえてくれ。
氷室には文句の一つでも言ってやんねーと気が済まねーし、…………劉とは…正直顔合わすの躊躇われるトコロだけど、そうもいってらんねー訳で。
昨日はロクに礼とか謝罪とか出来てなくて、なんかもう、最後フラフラだったオレをおぶって保健室に連れてってくれて。
(だいぶ日も暮れてたから校舎に誰も残ってなかったのが不幸中の幸いだった…)
『動けるまでそこで寝とけアル。部室の片付けは私がやっとくアルよ。』
『…う、で、でも、』
『いいから言う通りにしろアル。』
ベッドから起き上がろうと何とか身体を起こそうとしたオレの額にビシッと人差し指を突き付けて、そう言ったあと、劉は一人で部室に戻って行った。
……もろもろの後始末のために、だ…。
だから…体調?状態?がまともになってから顔を合わすのは今日が初めてというわけで、なんとなく入りづらくて部室のドアノブを回せないでいるオレ。
でも氷室にはぶっ飛ばされてもいいから一撃くらいは入れてやりたい…。
などと葛藤していたら、中から話し声が聞こえてきた。
「…全く酷い目に遭ったもんアル…」
「そう言う割にはあまり怒ってないようだけど?劉?」
「………お前もあんまり反省してないみてーアルな。氷室?」
「だって俺の制止を振り切って食べたのは福井さんだからさ。」
「…その言い分、福井には通用しないと思うケドな。」
おー……劉、その通りだ。
ピキリと蟀谷が引き攣る。
ドア一枚隔ててはいるものの中の会話は丸聞こえで、悪びれた様子には感じられない氷室の言葉にオレの怒りメーターは上昇するばかり。
だけど、昨日のことを話しているとなると…やはり入りづらい。
「っていうか劉…目の下それ何だ?クマ?」
「…昨日寝れなかったアル。」
「Why?普通に寮まで帰ってきてたよな?」
「…、……だから…夜、思い出して寝れなかったアル…。」
「Wow…、なかなかの変態だね劉…」
「お前にだけは言われたくねーアル!……昨日の福井は可愛いすぎたアルよ…脳裏に焼き付いて消えねーアル…」
「えっ、ちょっと詳しく聞かせてくれないか!」
……………えーと…
………どうすっかなー…
こいつらマジ聞きたくねー会話ばっかり繰り広げやがんだけど。
今すぐ「ふざけんな!」っつって殴り込みたい勢いなんだけど。
拳の準備万端なんだけど。
……なんだけど…っ…
「…あれ〜、福ちんど〜したの?入んないの?」
「っ!!!!」
未だドア前で突っ立てたオレの背後上空から聞こえてきた気の抜けた声に振り返ると、サクサクサクという効果音と共にオレを見下ろすアツシがいた。
いつからいたのか、さっきの部室内のあいつらの会話はアツシにも聞こえていたのか、聞くべきか聞かざるべきか。
そんなこんな思いあぐねていると、アツシが首を傾げて逆に聞いてきやがった。
「福ちん熱でもあんの?顔スゲー赤いけど。」
……なんだと。
顔スゲー赤いだと?
かおすげーあかいだと?
顔赤い……って、
いや、だって、だってだってだって…だってなぁっ…!!!
(………………………………………………………だって、劉がっ…、)
『福井、またイきそうアルか?』
『…っ、ふっ、う、…劉、っ…ごめ、ん、な…っ』
『……謝らなくていいアル。好きな相手に頼られて迷惑な訳ねーアルよ。』
『はっ、ん、んンッ…』
『なかなかの変態だね。』
『…、昨日の福井は可愛いすぎたアル…』
昨日の言葉と、今さっきの言葉…
………改めて実感しちまったんだから仕方ねーじゃねーか…!!!
何つーか…
……あいつ…ほんとに、オレのこと…好きなんだな、って…
「?福ちん?」
「!」
「やっぱ具合悪い?なんかますます顔赤いけど…。」
「っ…、べ、別になんでもねーよ!」
「そう?…まーなんでもいいけど。」
「アツシてめ…。」
「入ろ?」
そう言ってアツシの長い腕が、ドアノブに伸びた。
ガチャ、と開けた先に見えたのは、劉の衿元に手をかけて詰め寄っている氷室と、その氷室から逃げるように口元を手で覆い隠した劉がいた。
その劉の顔は少し赤くなっていて、
オレは劉のそんな面を見るのは初めてだった。
「…うわっ、福井?!」
「………よ、よぉ。」
視線を合わせたオレと劉の顔は、他人が見て気付く程度には、赤く染まっていた。
…と、思う。
〜END〜
(あっ、アツシ。)
(…ちょっと何やってんのアンタら。)
(ん?どうした?何だかご機嫌ナナメだな?)
(……はぁ〜…、…いいから早く離れて。)
(?OK。)
((……なんで劉ちんと室ちんてこんな仲良いんだろね…))
キョトンとする氷室の隣で紫原は溜め息交じりにがくりと肩を落とした。
*********
劉の福井さんへの想いはまったく揺るぎない!!
そんな劉に健介さんも知らずに惚れるといい(・∀・)
ほだされるといい。
そして室ちんはひたすら紫原くんに愛されててほしい。
陽泉さいこう(結論。)
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