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―――――で。



結局部活後はいつも通りチャリ引かされて、先に真ちゃんを送りとどけているオレ。
ほんとこれじゃあどっちが彼氏か分かんねーっつーの。

まぁ真ちゃんがクリスマスとかバレンタインとか、そーゆーのに興味薄い人間ってのは知ってるけど。
(でも、渡さないのも何だし…)


そう思って鞄の中に潜めていた真ちゃんへのチョコをゴソゴソ探すオレ。
緑間家の玄関先で渡すハメになるとは思わなかったわ―、って心ん中で苦笑しつつ、真ちゃんを呼び止めた。




「真ちゃん、これ。」
「…何なのだよ?」
「何なのだよじゃないっしょ〜…、バレンタインのチョコだよ。」
「……バレンタイン、…そうだったな。」




さも今気付きましたって顔してる…ような感じにも見えるけど…なんか違和感あるな。

オレの緑間真太郎センサーがなんか妙だと告げている。
けど何が妙なのかまで分からない。




「…甘いのキライ?」
「いや。」
「じゃあ、はい。」
「……ありがとう。」




差し出したチョコを真ちゃんは普通に受け取った。
しかも素直にお礼まで言われちゃったよ。

っていうか、すんなり受け取ってくれんじゃん…あれ??
なんで???
真ちゃんやっぱチョコが嫌いなわけじゃねーんじゃん。
普通に女の子にモテねーの?
(変人ってことバレちゃったのかな…)

なんだろ。
なんか違和感まみれなんだけど。



「高尾?どうかしたのか?」




むむ、と眉間にシワ寄せて難しい顔したオレを真ちゃんが怪訝そうに見下ろしている。
とりあえずごまかすようにヘラッと笑ってみた。



「よかったね〜真ちゃん!つーかオレがあげなきゃ今年チョコ0個だったんじゃねーの?」
「…そうかもな。」
「でもまぁ1個でもさ、それはちゃーんと本命チョコだからさ!」



だから落ち込まないでー、ってわざと茶化して言ってみた。
絶対「うるさいのだよ」とか「喧嘩売っているのかお前は」とか、そういうお決まりの台詞が返ってくると思っていたのに。





「…本当に欲しい物さえ手に入ればそれでいいのだよ。」





………って…。

なに、それ。
なにその台詞。
なにその満足そうな顔。

なにその、オレの心臓を鷲掴みしちゃう微笑み。


何秒くらいだろうか。
目ぇ丸くして、目の前の真ちゃんを凝視していたのは。

気付いたら真ちゃん、もう家ん中入っちゃってて、オレとチャリアカーだけ残されてた。

そういえばさっき「何だその阿呆面は…じゃあ、また明日なのだよ」的な言葉をかけられた気もするけど…



いや、
いやいやいや…、
ちょっと待ってよ真ちゃん…

………あ、あんな顔、反則でしょーが!!!



顔が熱い、
本当に熱い。
今真ちゃんいたら、抱き着いてしまいたいくらい。
(っていうか抱き着いてギュウってして、胸元でぐりぐりーってしたいくらい顔熱い…!!)

茶化しても意味ねーし
イヤミも伝わんねーし
そんな超鈍感人間のくせに

…………いとも簡単に、オレの心臓をぐらぐら揺らしやがるもんだからタチ悪ぃ…。

好きで、大好きで、ほんとどうしようって再認識させられるばかりだ。




「…、…ちっくしょー……まだ心臓ドキドキしてやがる…」




こんなんまるで恋する乙女そのものじゃんかよ!って無性に悔しくなる。

熱くなるばかりの顔面を少しでも冷ましたくて、軽くなったチャリで冬の坂道を全力疾走した。
















そして、翌日。
オレは昨日の比ではないくらい、赤面することになる。
その原因は、猛スピードで駆け巡る女子たちの噂話だった。






(聞いた?結局緑間くん、誰からのチョコも受け取らなかったんだって〜!)
(あれでしょ?渡したコたちみんな「受け取りたい相手は一人だけなのだよ。申し訳ない。」って言われたってやつ!!)
(誰よその相手!!)
(それが分かんないのよ!!)
(ショックだけどそんな台詞もカッコイイ!!)
(言われてみたーい!!)






きゃあ〜ん、という黄色い声と共に、宙に飛びまくるハートが無数に見える。


…そっか。
あの時感じた違和感はこれだったんだ。
真ちゃん、昨日バレンタインってちゃんと知ってたんだ。
なにが「バレンタイン…そうだったな」だよ。
なにが今年はチョコ0個、だよ。

……断ってたんじゃん。
全部、受け取らなかったんじゃん。

「受け取りたい相手は一人だけ」って…なんだよそれ。
どこまでクソ真面目なんだよ。
どこまで融通きかねーんだよ。
どこまで不器用で、真っ直ぐなんだよ…。


………ああもう、
真ちゃんは、ほんと、オレをどうしたいんだよ…

殺される。
幸せで、嬉しくて、心臓が止まる。
(………もう、マジ、嬉しくて死にそうなんだけどっ…)



本気でそう思ったタイミングで背中に降りかかった声。
びくりと肩が震えてしまった。






「高尾、何してるのだよ。」
「……………、……………………………お、おはよ…真ちゃん…」
「?熱でもあるのか??顔が赤ーー、」
「も〜っっじゅうっぶん分かってるから言わないでクダサイっっ!!」





ヤケクソでそう言い放つと「は?何なのだよお前は?」って普段通りの真顔で首を捻る真ちゃん。
そのトナリで、オレは、どうしたって緩む口元を必死で隠すことしかできないのだった。








〜END〜







********


もう結婚すればいい(・∀・)

緑間サンは高尾がいないと生きていけないとかだと良いな。
(普通に生活面的にも)

というか私が書く緑高は、高尾が真ちゃん大好きすぎる。
緑間サンも高尾を大切にしている…んだけど、なんだか鈍い。





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