バレンタイン小説







2月14日。
登校するなり学校中が異様な雰囲気に包まれているのが分かった。

教室、廊下、運動場、体育館裏、屋上。
至る所で小さな紙袋を持った女子が、お目当ての男子の前で顔を赤らめている。
(鷹の眼って……こういうときにも機能しちゃうわけなんだよねー。)


まぁオレも毎年それなりに貰ってきたし、今年もほれ、このとーり。
高尾ちゃんてばけっこうモテるわけなんですよ?と手に持つチョコレートたちを見て思ってみたり。

チラリと隣で歩く真ちゃんに視線を送ってみるものの、真ちゃんてば「何なのだよ?」って顔をするばかり。

妬いてもくれねーし、「鬱陶しいのだよ」的なツッコミもしてくれねーし………あれかな、真ちゃん超絶鈍感野郎だからバレンタインもスルーしちゃってんのかな。

つーか真ちゃん、黙ってたらかなりイケメンなのに。バスケしてる時は更にイケメンなのに。
……チョコ貰ってねーのかな?
(…鷹の眼を持ってしても見当たらねーんだけど。)









「うわっ!高尾てめっ、見せつけんな轢くぞこのリア充小僧!!!」
「宮地先ぱい、悪口詰め込むのやめてくれませんか(笑)」
「くっそ…こんなチャラい男がモテるとか意味わかんねー!!」
「全くだ。高尾、外周50。」
「大坪さんまでひでぇ(笑)」





部活に参加するなり先輩たちからの手痛い洗礼を喰らったオレ。

真ちゃんてばそれもキレーにスルーして、さっそく大好きな3Pの練習しちゃってるんだからこの薄情モノ!!!マイペース朴念仁!!!ってオレが心の中で思っちゃっても無理ねーよな。

はー…って思わず溜め息が漏れてしまった。

そんなタイミングで宮地先輩と木村先輩がガシッとオレの肩を抱いてくる。
耳元でコソコソと何を聞いてくるのかと思えば、だ。




「…なぁ高尾、緑間ってチョコ貰ってねーの?」
「…見てないっスね〜。」
「あいつモテるくせに一つも貰ってねーのか??!」
「妙っスよね〜」





そんなのオレが一番聞きたいんですけどね、と思いながら先輩たちの質問に交互に答える。

綺麗なフォームでもう何連続目かのスリーを決める真ちゃんを見ながら、オレたち3人はうーむ、と首を傾げた。


その後も練習中、ずっと考えてた。
真ちゃんてばもしかして、おしるこは好きなくせに甘いモノが苦手だったりするのだろうか、とか
それかチョコレートそのものが苦手なのかな、とか

………その場合…
オレの用意したチョコレートも受け取ってもらえなさそーだなぁ、とか。








『高尾…痛くないか?』
『っん、…ッ、ヘー、キっ…』
『…馬鹿かお前は…こんな時に無理などしなくていいのだよ…』
『あ、ぁっ、真ちゃっ、』
『ゆっくりなら大丈夫か?』
『はっ…、あ、ぁっ、あッ、真ちゃん…』






……女役やってるってことはやっぱ、こーいうイベントにも参加したほうがいいのかね???

なんて思って…
鞄の中に用意したチョコレート。
オレが初めて、だれかにあげるために用意した本命チョコだ。

まぁ…苦手ならソレはソレでしゃーないか、とりあえず気持ちだけ受け取ってもらえたらいっかー



……なんて、ほんっと相変わらずオレの頭ん中は真ちゃんのことだらけで参っちゃう。
そんな自分に苦笑していると、ボコッと頭に衝撃を受けた。




「いてっ」
「…高尾、真面目にやるのだよ。」
「へーいよっ」



まったく誰のせいだよ、誰の。
って恨めしげな視線を送ってみるものの真ちゃんは「?」と怪訝そうにオレを見下ろすばかりだった。






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