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脇道に入った瞬間、オレの背中はコンクリートの壁面にドンッとぶつかっていた。
顔のすぐ横には赤司の手。
そして、間近に赤司の綺麗なオッドアイ。

優しく見つめるいつもの瞳とは違う。
まるで、全てを射抜くような鋭い瞳。




「あ、赤司、?ごめっ、ごめん、怒ったの?!」
「…そうだね。」
「………、…ご…ごめん……オレ…舞い上がって…」
「光樹、」
「…き、気持ち悪い思いさせて…ごめ――っン…?!!」




ゴンッと頭が後ろの壁にぶつかる。
手首が赤司に押さえつけられている。

あと、
オレの唇に、赤司の唇が、ぶつかって………




「ん、ンっ…?!!」
「……、」



あれ??!!
これ…なに!??
唇、赤司の唇、が、オレのに…
柔らかくて、あったかくて、
(でもっ…くるしっ…)




「…っん、ふ、ふっ…は、」
「……光樹。」
「はっ…は…、赤司…くるしい…」
「…ふふ。キスするときに息を止めるからだよ?」
「…、……、…きす…、」




いつものように綺麗に微笑む赤司を見て、安心したからだろうか。
オレは無意識に赤司の言葉を繰り返すように呟いていた。

呟いて、数秒。
ぼかんっ!!!!!!と顔面が爆発した。


キス……
キスされた…!!!
っていうかキスした?!
オレと赤司が!!?
っていうかあの赤司がオレと?!!!



「光樹、っ…わ?!」
「な、なんで、」
「え?」
「…お、怒ったら…キスするの?赤司は…」


ずるりと膝を崩したオレを抱き上げてくれた赤司に恐る恐る問い掛けていた。
だって…こうなった流れがわからない。
全然わからない。

本気でわからないから聞いたのに、赤司は本当に困った顔をして珍しくオレの目の前で溜め息を吐いた。



「…怒っているよ。」
「うっ、うう、」
「……あんな街中で僕を煽った事に、ね。」
「…ごめ……、えっ?」
「…そのせいで止められなかった。合意無しでキスするつもりはなかったのに。すまない。」



赤司が頭を下げている。
あの赤司が…頭を…

驚きで固まるしかできない。
声がでない。
人間本当に驚くと、なんのリアクションもとれないんだな。
…なんて、悠長なこと思ってる場合じゃないんだけど…





「…赤司、チョコレート…びっくりしたんじゃ…ないの?」
「びっくりしたよ。」
「……引いたんじゃないの?」
「まさか。嬉しいに決まってる。」
「そ、そう……、そっか、…………よかったぁ…」
「光樹。」




じわりと目の前が歪むと同時に、強い口調で名前を呼ばれて、反射的に視線を合わせてしまった。
赤司の顔が、すごく、ものすごく近い。




「…あ、赤司…?」
「さっきも言っただろう?僕は少し怒っていると。」
「う、うん、赤司…、ち、近い…」
「…本当に君は…可愛いくて困る。」
「へっっ?!?!」




可愛くないし!!と言い返そうにも言い返せない。
だって赤司の唇が本当にすぐ近くにあるんだもん。
ちょっとでもどちらかが動くと、触れそうなくらい近い。

顔がもう、これ以上はないくらいに熱い。
絶対オレ今、タコ顔負けの真っ赤具合だと思う。

唯一の救いは、涙のおかげで赤司の顔がぼやけて見えることだろうか。
もしクリアに見えていたら、この距離だ。オレの心臓は120%止まっていただろう。




「あ、ぁあ、あの、赤司っ…」
「僕をこれ以上煽らないでくれ。本当に我慢出来ない。」
「が、我慢…?」
「…。(…光樹の上目遣いは僕の理性を容易く砕いてしまうっ…)」
「赤司?」
「……今日のお礼は必ずするよ。ホワイトデーは期待していてくれ。」




赤司のあまりにも男前な台詞にオレはどこの乙女だよ!って自分でツッコミたくなるくらい、赤面してしまった。

そんなオレを見て赤司はまた小さく笑って、そして綺麗な指がオレの髪にそっと触れて、

まるで、引き寄せられるようにお互いの唇が近付いて、

今度は合意有りのキスをしたのだった。





















(……え?それマジ?赤ちん…)
(ああ、本当に可愛いかったよ。バレンタインというイベントも悪くないね。)
(………う〜…あ〜……)
(敦??)
(……………頼むからキス以上進展してね赤ちん…、超祈ってるから…)
(?敦がそんなに応援してくれるとはね。まぁ気長に頑張るよ。)
((気長じゃダメだし…っっ!!!))




降旗と赤司がいい感じに進展した一方で、紫原敦は『氷室と日が暮れるまで1on1百回券』の危機に身震いしていた。







〜END〜




******


降旗くんも赤司さまもお互い振り回されている感じが好き。
初々しい(´∀`)

実際赤司さまのほうがグワングワン振り回されているけど。

っていうか今時の高校生は男の子でもチョコ買うとか普通だったらどうしよう(・∀・)





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