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ーーーーーうわぁ……。
…め、目立つ…。

普通に立ってるはずなのに、ものすごく普通じゃないオーラなんだけど…。

あれ?オレ時間間違えた?!
まだ19時なんだけど…!

小柄なのにロングコートがよく似合う…っていうか似合いすぎる。
赤い髪と黒の高そうなコート、革の靴が似合いすぎる。

…同じ高校生とは思えない。
(オレおんなじ服着たら絶対爆笑される自信あるんだけど。)


しばらくそんな風に少し遠目から観察してたオレに、さすがは赤司と言うべきだろうか。
気付いてフワリと微笑んでくれて。
そしてそのままオレの方まで歩いてきてくれた。





「光樹、久しぶり。」
「あっ、うんっ、そっそうだねっ久しぶり!あははっ…!」



眩しすぎる。
笑顔綺麗すぎる。
格好よすぎる。

ちょっ、どうしよう、意味なくぎこちない笑いが漏れてしまうくらいなんだけどーっ!




「予定より早く用事が済んだから来てみたんだけど、光樹も早いね。」
「そ、そうだね、なんか…楽しみで…足が勝手に…、あ、赤司はパーティーか何かだったの?」



その格好似合うね、って言おうとして気付いた。
なんか赤司が困ったような顔してる。
(な、なんか変なこと言っちゃったかな…??)



「あ、あの、赤司?」
「……すまない。」
「えっ??」
「…あんまり可愛い事を言うから。」
「えっ?!!可愛っ…?!!」
「……ああ、でも…うん。僕も同じかな。早く済んだ、じゃなくて早く済ませた、が正しい。光樹に早く会いたかったから。」



なんて、どこの外国紳士ですか!ってくらいに歯が浮きそうになる台詞を、面と向かって言われて、ぼふんっと頭から湯気が出そうになってしまった。

これ以上赤司のペースに持っていかれると、心臓がいくつあってももたない!!

そう思ったオレは「えいっ」と手にしていた紙袋を赤司の胸元へと押し付けた。




「?光樹?」
「あ、あげるっ、」
「僕に?何?」




不思議そうに首を傾げる赤司を見て、オレは恐ろしいことに気付いてしまった。
だってあの赤司が「僕に?何?」ってキョトンとしている。


気付いてしまった恐ろしいこととは。
めちゃくちゃ今更なんだけど、今更気付いしまったんだから仕方ない…、

それはつまり………………………………………やっぱりいくらバレンタインだからといって、男が男にチョコレートを渡すなんてオカシイことなんじゃないのか…?!!!!!!!


だから赤司がキョトン顔なんだよ!!
いつもの赤司だったら「ありがとう」だもん。
……さすがの赤司も…予想してなかったんだ…。
いくら付き合ってるからといって、男が男にチョコレート渡すってシチュエーションは…

あの赤司が予想不可能なことをオレは今、今まさに…してしまったんだ。


………………うわうわっ…、
(恥ずかしい!!!!!)

有り得ないくらい恥ずかしい!!!




「ご、ごめんっ…やっぱナシ!!」
「おっと…、」




奪い返そうと飛び付いたオレを赤司はひらりと躱して、驚いたように目を丸くした。

ああ無理だーー!!!
あの赤司から奪い返せるわけないしっ…オレの馬鹿!!!
オレの間抜け!!
オレのっ…オレの…………
(ううっ…だめだ、なんか泣けてきたよ〜…)



「………う、引かないで、赤司…」
「えっ?引く?僕が?」
「…、それ、」
「これ?」
「………………バレンタイン…の、チョコレート………なのだよ…です…」
「えっ?(光樹、語尾が真太郎化しているぞ…!!)」




赤司がオレと紙袋を交互に見て目をパチパチと開閉する。あの赤司が少し動揺している。
さすがに男からチョコレート…なんて、そりゃ動揺もするよね…
っていうか何でオレ、それに気付かなかったんだろう…
(それも今更だけど…そんでオレも動揺しまくりだよもう…)




「…ひ、引かないで、謝るから。」




動揺も恥ずかしさもピークだ。
嫌われたくない、と思った瞬間ぼろりと涙が零れた。
ダメだ、こんなの余計に引かれる、と頭では分かっているのに涙が止まらない。

神様、どうか数時間前、ゴ●ィバのレジに並んでいたときまで時間を巻き戻してください…なんて本気で思ったところで何もかも遅い。

ああなるほど、これが『時すでに遅し』ってヤツかぁ……


なんて今思わなくてもいいようなことを思っていたオレの腕を、赤司は無言で引っ張った。
どこにそんな力があるんだろうかと思うくらいの強い力は相変わらずだ。

オレはただ引きずられるようにして後に続くしかなかった。






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