赤降メモリアル(+α)









僕は誰だ。
僕は赤司征十郎。
全てに勝つ僕は全て正しい。

全て正しい、はずなのに。
何を誤ったのだろうか。
こんな事は初めてで、恐らく僕は今、困惑という感情を抱えているのだと思う。




『…っ、…ごめ、んっ…!!!』




解らない。
僕の予測では『ごめん』ではなく『赤司大好き』もしくは『…嬉しい』などの可愛らしい言葉と共に頬を赤らめる光樹がそこに居るはずだった。

なのに今、僕の隣には誰もいない。
なぜなら『ごめん』と小さく告げた光樹は驚くべきスピードで僕の目の前から走り去ってしまったのだから。


……何がいけなかったのだろう。


タイミング的にも間違えてはいないと思う。
会話が途切れて、視線が重なって。
見つめると途端に真っ赤に染まった頬と耳。
「よし、今だ」と全てに正しい僕の脳がそう告げた。

唇を近付けると光樹はぎゅっと瞳を綴じた。
ああなんて可愛いんだろうと思いながら、あと1cm。

だがしかし、唇が重なるその瞬間、僕の身体は「ドンッ」という衝撃を受けていた。


唇に柔らかい感覚などはなく、むしろ何かに触れる感覚さえなかった。

理解するのに数秒。
僕は突き飛ばされていた。
目の前には身体をぷるぷると震わせて、相変わらず真っ赤な顔の光樹が立ち上がっていて、

そうして一言…『ごめん』と言い残し、走り去ってしまった。

何もかもが驚きだ。
予測が外れたことも、突き飛ばされたことも、逃げ去られたことも初めてだ。


………ふむ。


僕はスマートフォンを取り出していた。こういう時は、その専に詳しい人物に聞くのが1番だ。







「……、ああもしもし?敦、今いいかい?」
『んー?なに赤ちん…またフリハタかんけい?』
「流石だな、敦。少し御教示願いたくてね。」






そう、敦はああ見えて頭が良い。
頭が良いというだけなら真太郎もそうだが、アレは駄目だ。世の中の常識とは遠く掛け離れている。
その点敦は頭も良ければ常識的だ。
そして男同士の恋愛云々にも詳しい……というか聡い。






「…という訳なんだが、僕は何か間違えたのだろうか?」
『……ん〜…別に心配しなくていいんじゃない?』
「どうしてだい?」
『だってそれさー、フリハタ照れてるだけじゃん?』
「…え。」
『まぁ分かる気もするけど〜。赤ちんみたいな綺麗な顔、耐性ないヤツには大変だと思うし。』






…成る程。
確かに光樹は僕の顔を正面からしっかり見据えてくれたことはなかった。
だが目を逸らしたり、びくびくした挙動不審な動作さえも堪らなく可愛いくて…、……だからあまり気にしていなかったな…。


そうか。
照れているだけ…か。


……ああ、そうだったのか。
それに加えて、光樹はキスにも抵抗があって、恥ずかしくて、より照れてしまっただけだったのか。
その場に居ることも躊躇われる程に照れてしまって、その結果走り去ったということか。
(……どうしよう…可愛いすぎるんだが。)






「ありがとう敦。僕は今すぐ光樹を追うことにするよ。」
『はーい…、あ〜そうだ、ねー赤ちん。』
「何だ?」
『何でもいーから三ヶ月以内にキス以上までいってねー』
「…?何だそれは?」
『別に〜、…って、うわぁ!ちょっ、室ちん!それオレのチョコだし!何勝手に食べて…はぁ?!!別にズルしてねーし!!!』
「……………。」






人と関わる事を面倒臭がる敦だが…相変わらず傍には氷室辰也がいるようだ。

それにしても最後の言葉の意味が良く解らなかったのだが…。
いや、これ以上他人の痴話喧嘩を聞いている場合じゃない。
僕は静かに電源をオフにした。

そしてすぐに光樹のアドレスをタップした。





「……。」
『……………、…も、もしもし…』
「光樹、今どこだい?」
『…ぁ、赤司…おれ、ごめん…』
「気にしてないよ。」
『う、うん…、あの、あのね、』
「何だい?」






敦の言う通りだった。
光樹は電話越しにとても可愛い声で、言ったのだ。

『あ、赤司の…顔が、…近付いてきて…死ぬほどドキドキして、つっ…つつつつ突き飛ばしちゃって……しかも逃げちゃって、…ご、ごめんなさい…』と。




あまりの可愛いさに僕は天を仰いだ。
神様は存在するのかもしれないと本気で思った。
こんなことも初めてだ。

全てに勝つ僕は全て正しい。
だが、光樹の可愛いさにはこの僕も歯が立たないのかもしれない。

故に、光樹と勝負することはこの先絶対に避けなければいけないと、

流れる雲を見ながら
そう思った。









〜END〜









(ちょっ、全部食うとか有り得ねーし!)
(アツシがズルするから悪い。)
(だからしてねーし。)
(じゃあ赤司くんと電話で話したことを今すぐ全部吐け。)
(……室ちんマジしつけーんだけど。)







********


赤降のデート話が書きたくて…アンケリクエストで甘い、デート話、ほのぼの、降くんビクビク…などありましたのでMIXしてみました。
…デートしてねーし(・∀・)


赤降の行方は、紫氷の行方もしくは劉福の行方に直結しているのです(・∀・)
(※『赤降の今後について陽泉が本気で考えてみた』を見てください(笑))





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