教えてあげる







本当に意外なことに、アツシは頭がいい。
得意科目は?と聞くと「え〜…物理?かなー」ときたもんだ。
…物理って。
体育でもなければ家庭科でもなくて。
よりによって物理って。
物理や数学が得意科目だと答える人種は大概頭がいいと決まっている。

お菓子サクサク食べてばかりのアツシが、勉強を必死にしたこともないであろうアツシが、(多分)英語以外は俺よりも出来る、そんなことって。

見た目もいい、
(事実アツシは整ったfaceをしている)
頭もいい、
その上、身体能力は天才級だなんて。
(…神様はどこまで不公平なんだろうか。)


俺はというと、国語系が全般に苦手だ。
物心ついたときにはアメリカにいたものだから日本の文化や歴史、文法に弱い。
つまり通常使用の日本語以外は苦手だったりする。

そのため、




『…ねー室ちん。』
『なに?アツシ?』
『室ちんさ、姫はじめって知ってる?』
『ヒメハジメ??』




聞き慣れない単語は、より苦手だったりする。
全くその言葉の意味を理解出来ず首を傾げると、アツシが珍しくニヤリと口角を上げて笑った。
馬鹿にして笑われたのだと思った。
だから俺はムキになってしまったんだと思う。




『へー…知らないんだー』
『教えてくれないのか?』
『どーしよっかなー』
『…今日のアツシは意地悪なんだな。』
『アララ〜…室ちん怒った?』



怒ったというよりは「面白くない」って思った、というのが正しいかもしれない。
だから俺の顔を覗き込もうとしたアツシからプイッと身体を反らせて避けた。

そうしたら頭上で小さく笑う声が聞こえて、「教えてあげるから怒んなしー」っていつもののんびりした声がした。

そうだ。
結局何だかんだ言ってもアツシは優しいんだ。


………なんて思って振り返った瞬間。
トン、と肩を押されて。
俺の視界はぐるりと回転していた。

天井と、俺を見下ろすアツシが見える。
アツシが、ぺろりと舌なめずりをするのが。





『…………、アツ、シ?』
『じゃあさっそく…ヒメハジメ、しよーね、室ちん?』





悪戯っぽく微笑んで、Sexyな口調で俺の名前を呼ぶアツシ。
『そういう時』は、決まっている。
多分、俺の予感は的中している筈だ。

ヒメハジメ。
ヒメハジメ、とは。





『ま、待て、アツシ、待て…!』
『オレが教えてあげるー。』
『い、いや、その…』




もう大丈夫!(多分、だいたい、99.9%)解ったから!
…っていう俺の言葉がアツシに届くことはなかった。

なぜならもう、
俺の唇はアツシによって塞がれていたのだから。






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