I may depend on you









夢を見た。

綺麗な顔で
綺麗に微笑みながら、室ちんがオレに言うんだ

「アツシ、もう終わりにしようか」

って――――――……










〜I may depend on you〜













「お前ら何かあったか?」


何の脈絡もない福井の言葉にシュート練習をしていた氷室の動きがピタッと止まる。

脈絡はないが、質問の意図は理解できた。
なぜなら氷室自身も違和感に気付いていたからだ。



「…いえ…というか今日は部活で初めて顔合わせましたし。」
「ふーん。てっきりお前絡みだと思ったけど、悪ぃ。」



そう言って自主練に戻る福井の背中を見て、氷室はフゥ、と溜め息を吐いた。

(…なんだろうな。)


機嫌が悪いとも違う
体調が優れないとも違う

練習にはいつものように参加しているし、その姿勢は意外にも真面目だということにも変わりはない

だけど、
声をかけられない
「お菓子ちょうだい」の決まり文句とともに触れてくることもない
何より、ただの一度も目が合わない

その、違和感。
そう、今日の紫原はどこかおかしかった。



福井が気付いたそれを氷室自身が気付かない訳はなく、また他のメンバーが気付かない訳もなかった。

けれど物に当たる訳もなく、人に当たる訳もなく、ただ氷室を避けているように見えるだけの紫原に何と声をかけたら良いかも解らない。
避けられているように感じる氷室も首を捻るしかない。




(うーん…何かしたかな…?)

(なんかやりにくいな…)
(なんかやりにくいアル…)
(なんか…変な感じじゃの…)



各々違和感を纏ったまま、結局その日の練習は終わった。

練習後に声をかける機会を伺っていた氷室は紫原が着替え終わりロッカーをパタンと閉じる瞬間を狙っていた。

いつもは「疲れた」だの「お腹すいた」だのうるさく言うくせに、今日は終始無言の紫原の様子に氷室以外のメンバーは「さわらぬ神に祟りナシ!!アツシのことはお前に任せた!宜しく!」と視線で伝え、さっさと出ていってしまった為、部室には二人きりだ。





「アツシ、一緒に帰ろう?」
「………。」




あくまで普段通りの対応を心掛けた氷室に、ようやく今日初めて紫の瞳と視線が合わさった。
だけど無言。
かといって頷くようなジェスチャーもない。
そんな紫原の態度に氷室の胸がチリリと痛む。が、すぐにいつもの微笑みを浮かべて紫原の背中を押した。



「…さ、行こう?」




そう言ったその瞬間、まるで触るな、とでもいうように紫原が氷室から距離をとる。
このあからさまな避けように、ショックを軽く通り過ぎ、氷室の蟀谷がピキリと引き攣った。





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