実際のところ、お互いさま
室ちんは負けず嫌いで頑固。
そんでもってバスケが大好き。
三度の飯よりバスケ、っていうくらいのバスケ馬鹿。
いっぱい練習したんだろうなって思うくらいの上手さはあるけど、それでもオレに勝てる程じゃない。
なのに。
「アツシ!1on1やろう!」
……まーたその台詞…。
右手にバスケットボールを持った室ちんをオレはげんなりと見下ろした。
なんで休みの日に、しかもさっき(その休みの日にわざわざ出た)練習終わったばっかなんだけど。
早く部屋戻ってお菓子食べたいんだけど。
「やんねーし。」
「Why?やろうよ、な?」
爽やかな笑顔やめろし。
騙されないから。
室ちんはいつもこうだ。
無駄に爽やかさ振り撒いて綺麗に笑う。
でもオレはそーゆー笑顔はあんま好きくない。
1on1をやるのは別にいい。
でもその後がイヤ。
ってゆーかめんどくさい。
…やっぱりオレも負けるのはキライだからそこは譲れなくてさ。
そしたら今までのオレと室ちんの勝負の結果は、オレの全戦全勝なワケで。
負けず嫌いの室ちんは、毎回毎回「もう1回だ」ってしつこいし(多分オレがイヤって言わなきゃ日が暮れるまで付き合わさせると思う。だからイヤっていうけど。)
でもそれより何より…
「あのさ室ちん、」
「なに?」
「どーせオレが勝つよ?」
「…言ってくれるじゃないか。」
ほら怒った。
でもね、怒る室ちんは別にキライじゃねーの。
(まぁちょっとめんどいけど)
オレがイヤなのはさ、負けたとき、室ちんが心のずっと深い所で何か重ーいコトを考えてしまうところ。
そう、誠凛戦のときにぶちまけた感情。
それいっつも独りでず〜っと抱え込んでるじゃん。
オレに負けたときもさー…その場では、ただ「くそっ」て悔しがるだけだけどさ、
「……室ちん泣かせたくねーし」
「え?なに?」
「…別に。」
「とにかく、5分だけ!やろうアツシ!」
「も〜…しつこいなぁ…」
…オレ知ってんだけど。
勝負して負けた日、室ちん寝てるとき泣いてるでしょ?
綴じた目から涙が頬っぺた伝うところ、……もう何回も見てきた。
どんな夢見てるのか、想像するのはそれほど難しくない。
でもオレにはどーしてあげたらいいのか分からない。オレがしてあげられることが何にもないから。
才能とか体格とか、室ちんが羨ましいって思うもの全部、分けてあげられるのならそうしたい。
室ちんが欲しいって思うもの全部、あげたいって思う。
アンタにならいいよって。
だけどできない。
ただ見てるだけしかできない。
ねー室ちん。
負けるたびに悔しくなるんでしょ?
虚しくなるんでしょ?
オレらのこと、羨ましく思っちゃうんでしょ?
そんで、そんな自分に嫌気がさして、また一人で勝手に傷付いちゃうんでしょ?
だから、
だからオレは、
「やだって言ってんのに〜…」
「アツシ!そんなこと言わずに!一回だけ!3分だけ!Please!!」
「……どんだけバスケ好きなのアンタ。」
帰ろうとする俺の腕をぎゅうっと掴んで引き止めながら必死でお願いしてくる室ちんは、バスケ馬鹿というよりもう、バスケ厨なのかもしれない。
ちょっと本気で呆れた声が漏れちゃったんだけど。
負けるってわかってて勝負を挑むなんてオレにはめんどくさすぎて真似できないし、理解もできない。
だけど、室ちんのそういう馬鹿なところ…キライになれないから困る。
「…も〜…3分だけだからねー。」
「Thank you!!」
室ちんはよくオレに「仕方ないなぁアツシは」って言うけど。
それに福ちんや劉ちんは「氷室はアツシに甘すぎる(アル)」って言うけどさ。
「じゃあ俺がオフェンスな!アツシ、Are you ready?!」
「…はーい。」
オレもけっこう思ってんだけどなぁ。
仕方ないなー室ちんは、
……ってさ。
〜END〜
*******
たまに紫原くんが大人に見えるときある。頭いいからかしら。
で、氷室兄さんはバスケ絡むとちょっと残念なイケメソになる気がする。
バスケ馬鹿だからかしら。
そんな妄想にとりつかれた結果出来上がった産物(・ω・)
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