Ｘ’ｍａｓ小説（＋劉福）
「…出来た…！！！」
「一時はどうなるかと思ったアルが…なんとか間に合ったアル…」
「よし劉、用意しよう！」
「……片付けは後回しアルな。」
言いながら今しがた出来上がったＸ’ｍａｓケーキをそれぞれラッピングボックスに入れて、準備万端とお互いの健闘を讃え合う氷室と劉。
彼らの後ろのキッチンは見るに耐えない惨劇と化していたが、二人はあえて今だけは目を瞑ることにした。
なぜなら時間がない。
１２月２４日、pm２３：３０。
「あと３０分しかないアル！」
「ちょっ、劉！その紫のリボンはこっち！俺の！」
「アイヤー！私のリボンどこいったアル！…って氷室、お前のケツの下！！」
「ああっすまない！So sorry！！」
バタバタと忙しなく最後のラッピング、お互いの想い人のイメージカラーのリボンを結び、今度こそ完璧だと顔を見合わせどちらともなく親指を立てた。
「じゃあ私先に行くアル。」
「くれぐれも先生に見つかるなよ！お前目立つんだから！」
「…氷室にだけは言われたくねー台詞アル。」
眉を寄せて最後にそう残し部屋を出た劉に続いて、氷室も立ち上がった。
腕の中の紙袋を大事に抱えて、一年寮へと急ぐ。
(…まだ起きてるかな…)
道すがら何度もそう思った。
〜Ｘ’ｍａｓ小説〜
Case:2…紫氷
「Merry Christmas！」
って、すんげー発音良く言われたオレはドアの前で寝ぼけた頭を思っきりクリアにさせられたような気持ちになっていた。
けっこー驚いてるんだけどあんま顔には出てないみたいで、目の前の綺麗なサンタクロースは困ったように苦笑して、言った。
「あれ？Surprise失敗かな…？」
「……室ちん、どーしたの。てか何やってんの。」
「すまない、寝てたのか？」
「もー起きたし。…これ見つかったらヤバイんじゃないの？」
「まぁね。」
「早く入って。」
とりあえず手を引いて迎え入れる。
まぁね、なんて笑ってる場合なのかな。
消灯時間過ぎてからの外出は厳しく罰せられるってのに。
（まぁ室ちんの無茶なトコロは知ってるけどさ）
それにしてもこんな夜中に部屋訪ねてくるって…しかもメリークリスマスって。全くもう何なのそれ。
「…かわいーんだけど。」
「え？」
「……何もねーし。」
「？？」
思わず声に出てしまった。
首を傾げる室ちんに適当に返事して、コーヒーでも飲む？と聞くと「アツシ」と呼び止められる。
振り返ったらズイッと紙袋を押し付けられた。
「…なーに？」
「どうしても渡したくて。」
「？プレゼント？くれんの？」
「ああ。」
実はさっきから気になってたんだよね。なんかいい匂いしてるんだもん。
絶対お菓子だ、って逸る気持ちを抑えて受け取った。
開けてみるとチョコレートの切り株ケーキ。クリスマス定番のアレ。
「ブッシュドノエルだー」
「好き？」
「めっちゃ好き。すげー美味そう。」
「ふふ、そう、よかった。」
ありがとう、って言う前なのに、室ちんはすごく満足そうに微笑んだ。
オレが喜ぶことがそんなに嬉しいのかな。
なんか複雑なキモチになるんだけど。
オレの為じゃなくて、一度くらい自分の為にそういう風に笑えばいいのに、って思っちゃうんだよね。
全くどこまで幸薄いんだか。
…まぁでも、その分もオレが室ちん幸せにしてあげたらいっか。
「ありがと室ちん。ねー今食べていい？」
「夜中に食べて太っても知らないぞ。」
「うっせーし。それにオレ太んねーし。」
「そっか。じゃあ食べてもらおうかな。」
くすくす笑う声を背中に受けて、オレは常備してある自作のミニキッチン（ポットと、コップ，スプーン，フォーク，お皿とかしかないけど）へ向かった。室ちんの分の飲み物も用意して準備は万端だ。
「はい室ちん、コーヒーね。」
「Thank you。」
「ケーキはオレのだから。」
「え、全部食べるのか？今全部か？」
「余裕だし。」
「Unbelievable…」
アンビリーバボーじゃないっつーの。
マジ顔で驚くのやめて。
つーか「何を今更」。
室ちんがわざわざクリスマスジャストに届けてくれたケーキなんだから、今ぜんぶ食べないでいつ食べるんだっつー話だし。
思いながらスプーンでケーキをダイレクトに掬った。中にはイチゴ切ったやつも入ってる。
あーん、と口に運ぶ時に室ちんが「相変わらず一口がデカイな」ってツッコミ入れてきたけど無視して口いっぱいに味わう。
…………これ…は…
「…おいしい？」
「……あのさ、コレもしかして手作りだった…？」
「え、えっと…、まずかったか？」
「ねぇ、手作りなの？」
「……う、うん。ごめん、そういえば俺…慌てていたから…味見してなかった…」
「慌ててたの？なんで？」
「だって、…」
「だって何？」
畳みかけるように言いながらオレは追加の一口を口に入れた。室ちんがオレから視線を外してボソリと呟く。
「アツシとChristmasを祝いたかっ―――…ッ？！！！」
最後まで聞いてあげられる余裕なんかないし。
あーもー……、無自覚なのか何なのか分かんないけどさ、かわいーことをかわいー顔して言わないで欲しい。
煽ってんのかなー。
我慢できなくなりそうなんだけど。
（…って、既にキスしながら思うことじゃないか。）
急にキスすると目丸くしてびっくりする顔が好き。
その顔見ながら舌絡めると見ないでくれ、って言うみたいな表情して目綴じちゃうとこも好き。
「う、んっ…、ふ、」
ねー室ちん、ケーキさぁ
めっちゃくちゃ美味しいよ。
このあたりのケーキ屋は食べ尽くしてたんだけど、どの店の味とも違うからさ、だから聞いたの。
まさかって思うじゃん？
室ちんてば格好ばっかりで（オリーブオイル高い位置からかけるの何なのあれ。）中身そこまで伴ってないからさ、こんなに本格的で美味しいケーキ作ってくれるなんて思ってなかった。
だから、味見してないなら今味見しなよ。
……ほら、
美味しいでしょ？
「ん、ふ、っん、ン…！！」
「……。」
「ンっ…は、はぁっ…、は…、あ、っ…あ、あまっ…」
「…ね、美味しいでしょ？」
「あ、アツシッ！！！」
唇についたチョコレートクリームをペろりと舐め取りながら顔を離したら、間髪入れず真っ赤な顔した室ちんに怒鳴られてしまった。
でも全然怖くないし。
（むしろかわいーとしか思えない。）
けど室ちん本気で怒るとそこそこ怖い（っていうかだいぶ面倒臭い）から、今度はスプーンに掬ったヤツを、やたら色っぽい唇へと押し付けてみた。
「もう一口どーぞ？」
「…っ、…全部一人で食べるんじゃなかったのか。」
「だってこんなに美味しいんだから室ちんにもおすそ分けしなきゃでしょー？」
「……アツシ…お前…」
「それともさっきみたいに食べさせて欲しい？」
にやりと笑ってそう言ってみたら、室ちんはボンッて頭から湯気だしたみたいにまた真っ赤になって「ＮＯ ＴＨＡＮＫ ＹＯＵ！！」ってオレが思わずのけ反ってしまうくらいの大きな声を上げて、差し出していたケーキをバクンと食べた。
結局室ちんが食べたのはそれが最後で、後はもちろん、オレが全部キレイに食べきったんだけど、でも。
「なんか食べ足りない。」
「ええっ？！お前の胃袋はどうなっているんだ？！」
「……そーじゃなくて、」
オレ、目の前にあるケーキより美味しーいものが欲しいんだけど。
っていう意味をこめて無防備だった室ちんの頬っぺたにキスをすると、ようやく言葉の意味に気付いたのか本日（っていうか今夜）何回目なの？っていう赤面した顔で、焦って待ったをかける室ちんに
クリスマスだからいいじゃん？
そう囁いてみたら、ちょっと考えた後に「…仕方ないな」と意外とすんなり受け入れてもらえて。
「…一回…だけだぞ。朝には戻って点呼に応えなきゃならないんだからな。」
「はーい。」
「……、アツシ、」
「んー？」
「…Merry Christmas。」
「うん。メリークリスマス、室ちん。」
上目遣いで綺麗に微笑む室ちんを見てオレもそう言い返したけど、心ん中では別のこと考えてた。
そう、
一回で終われるわけねーじゃん、って。
（まぁ、もちろん、終わらせるつもりなんかないんだけどね。）
〜END〜
＊＊＊＊＊＊＊＊＊
メリークリスマス！紫氷！
メリークリスマス！劉福！
メリークリスマス！陽泉！
みんなだいすき(*^ω^*)
ちなみに
case:1…劉福は「その他ＣＰ」にてＵＰしております。
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