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追い出されて数分経った。中から特に何か聞こえてきたりはしない。というか静かだ。
寝てしまったとか…?

とりあえずコンコンとノックしてみる。




「アツシ、入れてくれ、な??」
「……。」
「アツシ。」
「…なんか今顔見たくないからイヤ。」




あ、起きてた。
ドア一枚隔てて、そこにアツシがいるのが分かる。
だけど顔見たくないっていうのはあんまりじゃないか?



「俺はアツシの顔が見たい。ちゃんと言いたい。」
「オレは見たくないし。何も聞きたくねーし。」




そのままドア越しに会話してみるものの、埒が明かない。
埒が明かないどころか…一方的にシャットダウンされたような感じがして…

少し…
ほんの少し…
Just a little bit…
(…イラッとしてしまった。)




「アツシ、いい加減にしろ!」
「…何で室ちんがキレてんの。訳わかんねーんだけど。」
「だからちゃんと話そうって言ってんだろ!」
「やだ。」




………プチッ。

あれ?
なんか切れる音がしたような?
気のせいかな、うん。
気のせいだよな、うん。

……気のせ…、
………気の…

………この…っ
(………くそガキ…!!)





バンッッッ!!!!!!!




知ってる?アツシ?
寮のドアってさ、意外と薄いんだよ?
ほら、アメリカと違って日本は平和だから?刑務所でもない限り分厚くする必要がないからだとは思うんだけどね。
だからさ、俺が本気の廻し蹴りを放った場合、結構簡単だったりするみたい。

…ブチ壊すの。





「…し、信じらんねー…」




部屋の中に倒れこんだドア一枚をアツシは2歩ほど下がって避けていた。デカイくせに反射神経が良いところは本当、さすがだと思う。

俺は驚きで目を丸くして突っ立ったままのアツシに、タックルをかました。
普通だったらアツシはびくともしない。だから、ありったけの力をこめた。

さすがのアツシも「うっ」と唸って後ろのベッドにそのまま倒れ込んで、俺はその上に跨がってその顔を見下ろしてやった。


「…痛いんだけど。」
「It serves you right」
「……室ちん、キレてんの?」
「…、アツシ、」
「なに…、っ!!」


アツシの目がまた丸くなる。
ちょっと可笑しいと思いながら唇を塞いだ。
唇を重ねるのもキスだけど、舌を絡めるのもキスだ。
アツシは抵抗しなかった。
ただ、唇を離してから視線を合わせてみれば、まだ目を丸くしていた。



「……こういうキスは、お前としかしたことないよ。」
「…、…。」
「タイガとは違う。…それじゃ駄目なのか?」
「―――…、室ちん、」
「アツ、…わっ?!!!!…んンッッ…!!!」




あっという間だった。
アツシの唇が俺の名前を呼んだかと思ったら、その瞬間に視界がぐるっと180度回転していて。
目の前いっぱいにアツシの顔があって。
そして今度は俺が目を丸くしていた。
だって、さっき以上に深いキスをしている。





「ん、ふ…ぁ、アツっ、…んンっ」
「…、……は、」
「ぁ…、…っ、…コラ、いきなりは狡いぞ。」
「いきなりじゃねーし。そっちが先にしたんじゃん?」
「…ああ…そうだったな…」



ふっと口角を上げるアツシにつられて俺も笑ってしまった。
アツシは俺を組み敷いたまま、今度は触れるだけのキスを落とした。



「なんか納得いかねー気もするけど…まー、もういいや。」
「…なぁアツシ、それってヤキモチだよな?」
「…は?…違ーし。」
「なんだ、違うのか。」
「でも火神はいつか捻り潰す。」
「はは、困ったな…」
「…、…ねー…室ちん、」
「っ、あ、ちょっ、こら、アツシ…!」
「抵抗すんなしー」
「!っ…馬鹿、本当に駄目だ!!」






必死に拒否する俺に、アツシはムッとした表情で「どーして?」と首を傾げた。そんなアツシに俺は右腕を伸ばして指をさした。
その指先をアツシの視線が追う。

そう、無惨に壊れたドア、だ。


『扉が壊れて部屋の中が丸見えだから』

口にださずとも伝わった理由に、アツシは再度俺を見下ろし、これでもかという程げんなりした顔をして言った。



「…やっぱありえねーし。」
「はは、Sorry…」
「どーしてくれんの。」
「うーん、とりあえず…」




一緒に怒られに行ってあげる、と笑って言ってやったら、またしてもイガっと顔を歪められて、今度はガブリと鼻筋を噛まれてしまった。













〜END〜







(お前らいい加減にしろ!何かある度に上から怒鳴られる私の気にもなれ!)
(え〜でもオレ悪くねーし。室ちんだしー。)
(………監督、すみません。)
(うおっ、氷室…お前その鼻どうした!…じ、自慢の顔が台なしだな…っ…)
(あ、まさこちんがウケてるー)
(…アツシ後でいてこます。)






********


バイオレンスかっぷる。
究極のバイオレンスは氷室兄さん。

でもまさこちんもバイオレンスだった。
隠れヤンキーと元ヤンキーが揃う陽泉ハンパない(・∀・)

氷室と火神の師匠はアレックスさんだからさ、挨拶のキスとかしててもおかしくないよね。
(おかしいよ。)


※It serves you right…ざまあみろ






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